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第十八話 昔の思い出
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朝になっても、ギルドから紹介されたアウラが勇者
パーティーに合流することはなかった。
「アウラちゃん、遅いな~」
「時間も守れないような奴はやめとけ」
「そうだよ。きっといい男でも出来てついていった
んじゃないかな?」
「おいおい、俺に彼女が出来そうだからって、悔し
がるなって」
俺はその日、アウラを一日中待っていた。
しかし、一向に現れる事はなかったのだった。
そして教会にも彼女の姿を見た者は居ないと言われ
たのだった。
時を同じくして聖女レイネがこの街へと来たのだっ
た。
「ご無沙汰しておりますわ。勇者様、そして陸」
「おいおい、なんで俺だけ呼び捨てなんだ?」
「聖女様がどうしてここに?」
「勇者様、レイネとお呼びください。教皇猊下より
此度の魔王討伐の旅に同行せよと伺っております」
そういうと、王印が押された手紙を持って来たのだ
った。
♦︎
昔を思い出しながら暇そうに欠伸をした。
「陸、どうしたの?」
「あぁ、ちょっとモンドとレイネと出会った時の事
を思い出してさぁ~」
「あぁ、モンドは最初苦戦したからね~」
「でも、誠治のが強かったじゃん?」
俺が誠治の髪を撫でると、少し驚くと嬉しそうに微
笑んだのだった。
「だって…陸が応援してくれていたからね…負けら
れる訳ないでしょ?」
誠治は平気でこういうキザな言葉を言って来るのだ。
本当に人タラシなのだ。
「はいはい。そうだな………さっきの受けた依頼。
行くとしますか!」
「そうだね。久しぶりに二人っきりのデートかな」
「違うだろう?ただの魔物討伐だ!」
俺は誠治の言葉を訂正しながら起き上がると、屋敷
を出た。
さっき掃除したばかりで、埃一つない綺麗な部屋。
前は誰が住んでいたかは知らないが、貰ったものは
もう、俺たちの物だった。
魔王を無力化した勇者として、名声を上げた誠治
はどこに行っても、注目の的だった。
街の出入りを管理する門番からも尊敬の眼差しで
見られていた。
「勇者様、お勤めご苦労様です。よかったら娘に
サインが欲しい強請られてしまって…はははっ」
「すまない。僕はただ勇者として当然の事をした
までだよ。では、門番ご苦労様」
「お気をつけて~」
大きな手をブンブン振って見送ってくる。
「あんなおっさんまでたぶらかして……」
「なに?妬いてる?」
「なわけねーだろ?誰が妬くんだよっ」
俺は一瞥すると、黙々と歩みを進めた。
街を出てすぐの場所には川が流れており、その付近
は一面畑になっている。
水を引くのに便利な地形を考えて作られたらしい集
落だが、最近そこの畑を荒らしている魔物がいると
いうのだ。
「まずは、現場を見ないとな…」
「そうだね。村長さんを探さないと……あそこの人
に聞いてみようか」
誠治が目についた村民に手を振ると、かけていく。
「ギルドから来たのですが、農村を荒らす魔物退治
の事についていいですか?」
「あぁ、それならついてきなさい」
老婆は、村長の家まで案内してくれたのだった。
村長は事のあらましを話てくれた。
最近になって、森の奥から現れる魔物の事。
夜になると、畑を荒らし作物を掘り起こし一口齧る
とまた別の作物を齧っていく事。
その被害は段々広がっていて、何を作っても被害に
合うという。
「なんでかじるだけなんだ?」
「そうだね。魔物だったら、全部食べるんじゃない
かな?腹を満たす為じゃないとか?」
だが、その魔物を見た者はいまだに誰も居ないとい
う不思議な事が起きていたのだ。
「人に被害は出ているんですか?」
「あぁ、それなら数人男どもが怪我を負ってなぁ~」
「怪我ですか……重症ですか?」
「いや、そうではないじゃが……」
なにか言いにくいのか歯切れが悪い。
「なんでも言って下さい。状況がわからないと対処
が出来ないので」
「それが、わしらにもわからんのじゃ…怪我はそう
酷くはなかったんじゃが…数日後には消えてしま
ったんじゃ」
「消えた……ですか?」
「あぁ、それも忽然と消えてしまったんじゃ」
夜中に聞こえる魔物の叫び声。
怪我を負うと数日のうちに居なくなる村人。
村人の死体は出てきていない事。
作物は、全部一口づつ齧られている。
どうにも繋がるものがないのだった。
「まずは夜にならないと、動けないかな」
「そうだね。それまで村の周りを見に行こうか、陸」
「ん~~~、そうだな……」
俺たちは、見回りがてら村の周囲にも警戒をしなが
ら散策を続けたのだった。
パーティーに合流することはなかった。
「アウラちゃん、遅いな~」
「時間も守れないような奴はやめとけ」
「そうだよ。きっといい男でも出来てついていった
んじゃないかな?」
「おいおい、俺に彼女が出来そうだからって、悔し
がるなって」
俺はその日、アウラを一日中待っていた。
しかし、一向に現れる事はなかったのだった。
そして教会にも彼女の姿を見た者は居ないと言われ
たのだった。
時を同じくして聖女レイネがこの街へと来たのだっ
た。
「ご無沙汰しておりますわ。勇者様、そして陸」
「おいおい、なんで俺だけ呼び捨てなんだ?」
「聖女様がどうしてここに?」
「勇者様、レイネとお呼びください。教皇猊下より
此度の魔王討伐の旅に同行せよと伺っております」
そういうと、王印が押された手紙を持って来たのだ
った。
♦︎
昔を思い出しながら暇そうに欠伸をした。
「陸、どうしたの?」
「あぁ、ちょっとモンドとレイネと出会った時の事
を思い出してさぁ~」
「あぁ、モンドは最初苦戦したからね~」
「でも、誠治のが強かったじゃん?」
俺が誠治の髪を撫でると、少し驚くと嬉しそうに微
笑んだのだった。
「だって…陸が応援してくれていたからね…負けら
れる訳ないでしょ?」
誠治は平気でこういうキザな言葉を言って来るのだ。
本当に人タラシなのだ。
「はいはい。そうだな………さっきの受けた依頼。
行くとしますか!」
「そうだね。久しぶりに二人っきりのデートかな」
「違うだろう?ただの魔物討伐だ!」
俺は誠治の言葉を訂正しながら起き上がると、屋敷
を出た。
さっき掃除したばかりで、埃一つない綺麗な部屋。
前は誰が住んでいたかは知らないが、貰ったものは
もう、俺たちの物だった。
魔王を無力化した勇者として、名声を上げた誠治
はどこに行っても、注目の的だった。
街の出入りを管理する門番からも尊敬の眼差しで
見られていた。
「勇者様、お勤めご苦労様です。よかったら娘に
サインが欲しい強請られてしまって…はははっ」
「すまない。僕はただ勇者として当然の事をした
までだよ。では、門番ご苦労様」
「お気をつけて~」
大きな手をブンブン振って見送ってくる。
「あんなおっさんまでたぶらかして……」
「なに?妬いてる?」
「なわけねーだろ?誰が妬くんだよっ」
俺は一瞥すると、黙々と歩みを進めた。
街を出てすぐの場所には川が流れており、その付近
は一面畑になっている。
水を引くのに便利な地形を考えて作られたらしい集
落だが、最近そこの畑を荒らしている魔物がいると
いうのだ。
「まずは、現場を見ないとな…」
「そうだね。村長さんを探さないと……あそこの人
に聞いてみようか」
誠治が目についた村民に手を振ると、かけていく。
「ギルドから来たのですが、農村を荒らす魔物退治
の事についていいですか?」
「あぁ、それならついてきなさい」
老婆は、村長の家まで案内してくれたのだった。
村長は事のあらましを話てくれた。
最近になって、森の奥から現れる魔物の事。
夜になると、畑を荒らし作物を掘り起こし一口齧る
とまた別の作物を齧っていく事。
その被害は段々広がっていて、何を作っても被害に
合うという。
「なんでかじるだけなんだ?」
「そうだね。魔物だったら、全部食べるんじゃない
かな?腹を満たす為じゃないとか?」
だが、その魔物を見た者はいまだに誰も居ないとい
う不思議な事が起きていたのだ。
「人に被害は出ているんですか?」
「あぁ、それなら数人男どもが怪我を負ってなぁ~」
「怪我ですか……重症ですか?」
「いや、そうではないじゃが……」
なにか言いにくいのか歯切れが悪い。
「なんでも言って下さい。状況がわからないと対処
が出来ないので」
「それが、わしらにもわからんのじゃ…怪我はそう
酷くはなかったんじゃが…数日後には消えてしま
ったんじゃ」
「消えた……ですか?」
「あぁ、それも忽然と消えてしまったんじゃ」
夜中に聞こえる魔物の叫び声。
怪我を負うと数日のうちに居なくなる村人。
村人の死体は出てきていない事。
作物は、全部一口づつ齧られている。
どうにも繋がるものがないのだった。
「まずは夜にならないと、動けないかな」
「そうだね。それまで村の周りを見に行こうか、陸」
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ら散策を続けたのだった。
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