俺がモテない理由

秋元智也

文字の大きさ
32 / 61

第三十二話 魔王と勇者の同盟

しおりを挟む
平和に過ごしていた魔族達の元へ、勇者誠治から
の伝言が届いた。

「魔王様、今年も豊作でございますよ。人間達の
 技術もあながち軽視できませんなぁ~」
「食料はちゃんと行き届いておるのならいい。そ
 れと……ちと問題が起きたようだ」
「問題ですか?人間達の事、我らには関係ないと
 突っぱねればよろしいかと」

魔王の側近の従者は呆れたように返事を返した。
魔族の事ならまだしも、人間達の問題に魔族が手
伝う謂れはないと。

「その問題だがな~、あの末端にいたアゾビエン
 テを覚えておるか?」
「あぁ、バンパイアの王だと名乗っておった臆病
 者ですかな?魔王様を差し置いて一番先に逃げ
 た魔族の恥晒しが何かありましたかな?」
「それが、人間達の方で暴れておるようだな」
「あのような小物、何ができましょう」
「確かにな……そう思うのだがな……」

魔王はため息を吐き出すと、問題を指摘した。
まず、バンパイアが作れる眷属は自分より魔力の
弱い者に限られる事。

すなわち、魔族領では眷属を調達できず素の戦闘
力だけで順位が決められていた。

だが、強い人間を眷属に出来れば、侮れないほど
強い戦士を手に入れれるのだ。

だが、その条件は魔力が弱い者、もしく人間達の
作った薬などで完全に意識がない事が必要だ。

眷属を作っている時が、一番無防備になるからだ。

そして、奴の防御力の弱さにあった。
とにかく、弱い。
蝙蝠に変身していても、心臓を持つ蝙蝠を倒され
ればすぐに死んでしまうのだ。

だから、いつもは眷属に自分の心臓を預けて戦う
のだ。

あの時、勇者が来た時。
眷属が全滅して、心臓を自分に戻すと一目散に
逃げたのだ。

それが、今は人間達を使って暴れているという事
はなんらかの安全な場所に心臓を写したという事
だろう。

それを見つけるのを手伝って欲しいというのだ。

「なんとも面倒な……確か前はこちらに寝返った
 人間の領主に持たせたはずでは?」
「いや、その息子だ。寝返った事がバレて勇者に
 攻め込まれた際、息子だけは逃すだろうと企ん
 だのだ。そして、息子だけが逃げ延びて奴は無
 傷で逃げおおせたのだ」
「おぉ、なんとも嘆かわしや。魔族ともあろう者
 がそんな卑怯な真似を……」

魔王が全面的に戦うと言えば、この従者は全力を
もって戦っていただろう。

だが、魔王はそれを良しとはしなかった。

『せっかく魔族領のみんなが飢えずに済むように
 なってきたというのに、今更戦争などしてどう
 するのだ?対話では治められぬのか?』

これが勇者が来た時の第一声だった。

唖然とする勇者一行だったが、すぐに話し合いの
場を設ける事で同意した。

そもそも、勇者は異世界から来た人間で、この世
界の戦いに巻き込まれただけなのだ。

それを、契約一個交わす程度で終われるならと、
簡単に同意してくれたのだった。

問題はそれまでに、勇者達に反発して死んで行っ
た部下達や、その一族が猛反対した事だった。


「あの時は大変でしたな~」
「だが、勇者と戦えるなど、あれほど心強い事は
 なかったぞ?」
「それは……また……魔王様の言葉としては聞き
 たくはございませんでしたな」

従者は、やっぱり人間の領土を侵略しそびれた事
を言っているのだろうか?

残念そうにしていた。

だが、魔王は後悔などない。
平和が一番。
他者を侵略すれば、こちらもそれ相応の被害がでる。

それを回避出来るなら、その方がいい。
そう考えているのだ。

それには勇者も同意してくれて、人間の国を説得し
てくれると約束して戻って行った。

そして、勇者の侵略は止まった。
魔族領でも平和が訪れたのだった。

それと同時に人間達の国で使われている作物の育成
方法や、家畜、魔道具などが販売されるようになっ
て交易船も行き来するようになった。

これも、魔王と勇者の恩恵と言えた。

「まぁ、人間達の技術は侮れないところもあります
 からな。いい刺激になっていいですな」
「だろう?平和が続けば、もっとみんなが幸せにな
 れるだろう。それを脅かす事は断じて許さん。こ
 の魔王が生きている限り、人間との交易は続けね
 ばならない。だからじゃ。人を勇者送れ。アゾビ
 エンテを捕まえて連れてこいとな。もし、暴れる
 ようなら……殺しても構わん」
「はっ、魔王様のお言葉、肝に命じております。で
 は早速配下者を向かわせましょう」

従者が消えると、城内に伝令が走る。

逆賊、バンパイアの王アゾビエンテを捕らえよ。
生死は問わぬ。
魔王様の御命令だと、声が伝わると、我先にと動き
出したのだった。

もう、魔族の地位が変わる事はない。
戦いのない平和な世で、自分の地位を上げる方法は
たった一つ。
魔王様の命令をどれだけ忠実にこなすかだ。

今、出された命令は魔族領に住む、魔族全員を震撼
させたのだった。

「あの、逃げたバンパイアを捕まえれば、幹部へ昇
 格できるのか?」
「まじか、なら人間達に化けて、潜入しないとな」
「奴を捕まえれば、幹部の座が……やらねーわけに
 はいかないな」
「おいおい、お前ら、人間達に被害が出たらこっち
 の首が飛ぶってわかって言ってるよな?暴れるよ
 うならここで大人しくしておれ!俺が行くからな」

誰もが、魔王様の幹部になるべく旅立っていくのだ
った。

そこに一人の魔族女性が噂を聞きつけて人間達の領
土へと来ていた。

サキュバスには、強い戦闘能力はない。
だが、魅了という邪眼で、全ての異性を操る事が
出来る。

もちろん勇者には効かなかったが、それでも周りに
いる人間達には効果があるのだ。

力こそ全ての魔王領で幹部になる事は、難しいのだ。

だが、今回の命令なら、まだ勝ち目があった。
倒さなくても、捕まえればいい。

これは、魅了の邪眼を持つサキュバスにとって、好
都合と言えたのだった。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

ヒメ様が賊にさらわれました!

はやしかわともえ
BL
BLです。 11月のBL大賞用の作品です。 10/31に全話公開予定です。 宜しくお願いします。

新生活始まりました

たかさき
BL
コンビニで出会った金髪不良にいきなり家に押しかけられた平凡の話。

唇を隠して,それでも君に恋したい。

初恋
BL
同性で親友の敦に恋をする主人公は,性別だけでなく,生まれながらの特殊な体質にも悩まされ,けれどその恋心はなくならない。 大きな弊害に様々な苦難を強いられながらも,たった1人に恋し続ける男の子のお話。

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

劣等生の俺を、未来から来た学院一の優等生が「婚約者だ」と宣言し溺愛してくる

水凪しおん
BL
魔力制御ができず、常に暴発させては「劣等生」と蔑まれるアキト。彼の唯一の取り柄は、自分でも気づいていない規格外の魔力量だけだった。孤独と無力感に苛まれる日々のなか、彼の前に一人の男が現れる。学院一の秀才にして、全生徒の憧れの的であるカイだ。カイは衆目の前でアキトを「婚約者」だと宣言し、強引な同居生活を始める。 「君のすべては、俺が管理する」 戸惑いながらも、カイによる徹底的な管理生活の中で、アキトは自身の力が正しく使われる喜びと、誰かに必要とされる温かさを知っていく。しかし、なぜカイは自分にそこまで尽くすのか。彼の過保護な愛情の裏には、未来の世界の崩壊と、アキトを救えなかったという、痛切な後悔が隠されていた。 これは、絶望の運命に抗うため、未来から来た青年と、彼に愛されることで真の力に目覚める少年の、時を超えた愛と再生の物語。

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

処理中です...