俺がモテない理由

秋元智也

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第三十一話 失いたくない人

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残された防具や、遺品になりそうな物を持ち帰る
とギルドへ提出したのだった。

神隠しで消えた人の遺品もあったせいか、死んだ
事を認めるしかなかった。

俺は報告もそこそこに誠治に丸投げすると、宿屋
へと戻っていた。

真っ暗な部屋に戻ると窓の外を眺めた。

あの時、あいつが言った言葉が……聞いたはずな
のに。
聞こえたはずなのに、雑音が重なって聞き取れな
かった。

どうしてあぁなったのだろう?

「俺自身が聞くのを拒絶したのか?そんなはずは」

何か大事な事を言っていた気がする。
だが、聞こえなかった。

いや、聞きたくなかったのかもしれない。
でも、なぜ?

頭を掻きむしると、ベッドへと転がった。
あの時の事は、誠治にはまだ、話していない。

誠治はあの時、離れたところで戦っていた。
だからきっと聞こえていなかっただろう。

「俺は……何を聞いたんだ……?」

疲れたのか眠くなってくるといつのまにか眠って
しまっていた。

背中が熱い。
ゆっくりとじわじわと赤く文字が刻まれていく。
誰にも気づかぬうちに、魔法陣が背中に描かれて
いった。

本人も眠ったまま気づく事はない。
魔法陣は本人の知らぬ間に身体の奥へと染み込ん
で馴染んでいく。

ドクンッと波打つように心臓が高鳴った。
横でドクドクと脈打つ心臓の横にもう一つの心臓
が生まれる。

窓からスッと黒い羽音がする。
眠っている陸の上に留まると、ゆっくりした仕草
で何かを呟く。

出来上がった心臓の上に立つと、『ギィ』とひと
鳴きすると再び窓の外へと出て行ってしまった。

陸の知らぬうちに身体の奥へと蝕んでいく。
もし、起きていたのなら抵抗も出来ただろう。

だが、最初に一度刻まれた刻印があるせいか無防
備になってしまっていたのだった。

魔法陣が消えた頃。
心配そうに部屋へ入ってきた人物がいた。

勇者の誠治だった。
帰ってきてから様子のおかしい陸を気遣ってすぐ
に休むという陸を止めなかった。

部屋に来てみると、すでに寝息を立てて眠ってい
たのだった。

だが、なぜか苦しそうに眉間に皺が寄っている。

「陸……?」

声をかけたくらいでは、起きなかった。
いつもなら、寝つきが悪いのか寝返りを打つ度に
目を覚ましていたが、今日はぐっすり眠っていた。

「今日はコレの出番はないようだね……」

甘い香りが部屋に充満する。
陸が好きなホットチョコだった。

甘いものに目はない陸は、お菓子ならなんでも口
にする。
それに何が入っていても気づかない。

誠治は窓際の机の上にコップを置くとベッドの中
に入り込む。

もしかしたら起きてしまうかも?
そう思いながらも、そっと陸の体温を感じながら
肌に触れる。

抱きしめるように後ろから抱きしめると、規則正
しい寝息が耳にかかる。

「今日はちょっと焦っちゃったかな……陸のあん
 な姿見たら、こっちの心臓がもたないよ?お願
 いだから無理しないで、僕を頼ってよ?」

見知らぬ者に押さえつけられるなど、許さないで
あんな姿見せられたら、僕が陸の事閉じ込めてし
まいそうだよ……

と囁いた。

服の上からでも分かるくらい力強く生きている鼓
動がする。

もし、失ってしまったらと思うと誠治には耐えら
れなかった。

暫く、この街に留まると情報を集める事にしたの
だった。

その間に誠治が魔王へと伝令を飛ばした。

魔王との制約がある為、お互い伝えたい事がある
時は、簡単な言葉なら伝える手段があった。

それが、この留守電のような機能だった。

お互いの制約印に触れて言葉を残す。
すると、相手の制約印にマークが浮かび、言葉が
伝わるのだという。

お互いが繋がってしまう為に、大事な約束を交わ
す時にしか使わない禁呪なのだという。

そして、相手が死ぬと印は消えてなくなるのだと
いう。

ただし、相手が死んだ時に、魔力がごっそり半分
になるというデメリットが発生するという。
誠治には魔力は僅かしかない為、困る事はない。
逆に魔王の方が魔力の塊なので、色々困ると思っ
たのだが、彼は戦いが嫌いなせいか、私生活に支
障がないのでいいと、簡単に即決したのだった。






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