俺がモテない理由

秋元智也

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第三十二話 魔王と勇者の同盟

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平和に過ごしていた魔族達の元へ、勇者誠治から
の伝言が届いた。

「魔王様、今年も豊作でございますよ。人間達の
 技術もあながち軽視できませんなぁ~」
「食料はちゃんと行き届いておるのならいい。そ
 れと……ちと問題が起きたようだ」
「問題ですか?人間達の事、我らには関係ないと
 突っぱねればよろしいかと」

魔王の側近の従者は呆れたように返事を返した。
魔族の事ならまだしも、人間達の問題に魔族が手
伝う謂れはないと。

「その問題だがな~、あの末端にいたアゾビエン
 テを覚えておるか?」
「あぁ、バンパイアの王だと名乗っておった臆病
 者ですかな?魔王様を差し置いて一番先に逃げ
 た魔族の恥晒しが何かありましたかな?」
「それが、人間達の方で暴れておるようだな」
「あのような小物、何ができましょう」
「確かにな……そう思うのだがな……」

魔王はため息を吐き出すと、問題を指摘した。
まず、バンパイアが作れる眷属は自分より魔力の
弱い者に限られる事。

すなわち、魔族領では眷属を調達できず素の戦闘
力だけで順位が決められていた。

だが、強い人間を眷属に出来れば、侮れないほど
強い戦士を手に入れれるのだ。

だが、その条件は魔力が弱い者、もしく人間達の
作った薬などで完全に意識がない事が必要だ。

眷属を作っている時が、一番無防備になるからだ。

そして、奴の防御力の弱さにあった。
とにかく、弱い。
蝙蝠に変身していても、心臓を持つ蝙蝠を倒され
ればすぐに死んでしまうのだ。

だから、いつもは眷属に自分の心臓を預けて戦う
のだ。

あの時、勇者が来た時。
眷属が全滅して、心臓を自分に戻すと一目散に
逃げたのだ。

それが、今は人間達を使って暴れているという事
はなんらかの安全な場所に心臓を写したという事
だろう。

それを見つけるのを手伝って欲しいというのだ。

「なんとも面倒な……確か前はこちらに寝返った
 人間の領主に持たせたはずでは?」
「いや、その息子だ。寝返った事がバレて勇者に
 攻め込まれた際、息子だけは逃すだろうと企ん
 だのだ。そして、息子だけが逃げ延びて奴は無
 傷で逃げおおせたのだ」
「おぉ、なんとも嘆かわしや。魔族ともあろう者
 がそんな卑怯な真似を……」

魔王が全面的に戦うと言えば、この従者は全力を
もって戦っていただろう。

だが、魔王はそれを良しとはしなかった。

『せっかく魔族領のみんなが飢えずに済むように
 なってきたというのに、今更戦争などしてどう
 するのだ?対話では治められぬのか?』

これが勇者が来た時の第一声だった。

唖然とする勇者一行だったが、すぐに話し合いの
場を設ける事で同意した。

そもそも、勇者は異世界から来た人間で、この世
界の戦いに巻き込まれただけなのだ。

それを、契約一個交わす程度で終われるならと、
簡単に同意してくれたのだった。

問題はそれまでに、勇者達に反発して死んで行っ
た部下達や、その一族が猛反対した事だった。


「あの時は大変でしたな~」
「だが、勇者と戦えるなど、あれほど心強い事は
 なかったぞ?」
「それは……また……魔王様の言葉としては聞き
 たくはございませんでしたな」

従者は、やっぱり人間の領土を侵略しそびれた事
を言っているのだろうか?

残念そうにしていた。

だが、魔王は後悔などない。
平和が一番。
他者を侵略すれば、こちらもそれ相応の被害がでる。

それを回避出来るなら、その方がいい。
そう考えているのだ。

それには勇者も同意してくれて、人間の国を説得し
てくれると約束して戻って行った。

そして、勇者の侵略は止まった。
魔族領でも平和が訪れたのだった。

それと同時に人間達の国で使われている作物の育成
方法や、家畜、魔道具などが販売されるようになっ
て交易船も行き来するようになった。

これも、魔王と勇者の恩恵と言えた。

「まぁ、人間達の技術は侮れないところもあります
 からな。いい刺激になっていいですな」
「だろう?平和が続けば、もっとみんなが幸せにな
 れるだろう。それを脅かす事は断じて許さん。こ
 の魔王が生きている限り、人間との交易は続けね
 ばならない。だからじゃ。人を勇者送れ。アゾビ
 エンテを捕まえて連れてこいとな。もし、暴れる
 ようなら……殺しても構わん」
「はっ、魔王様のお言葉、肝に命じております。で
 は早速配下者を向かわせましょう」

従者が消えると、城内に伝令が走る。

逆賊、バンパイアの王アゾビエンテを捕らえよ。
生死は問わぬ。
魔王様の御命令だと、声が伝わると、我先にと動き
出したのだった。

もう、魔族の地位が変わる事はない。
戦いのない平和な世で、自分の地位を上げる方法は
たった一つ。
魔王様の命令をどれだけ忠実にこなすかだ。

今、出された命令は魔族領に住む、魔族全員を震撼
させたのだった。

「あの、逃げたバンパイアを捕まえれば、幹部へ昇
 格できるのか?」
「まじか、なら人間達に化けて、潜入しないとな」
「奴を捕まえれば、幹部の座が……やらねーわけに
 はいかないな」
「おいおい、お前ら、人間達に被害が出たらこっち
 の首が飛ぶってわかって言ってるよな?暴れるよ
 うならここで大人しくしておれ!俺が行くからな」

誰もが、魔王様の幹部になるべく旅立っていくのだ
った。

そこに一人の魔族女性が噂を聞きつけて人間達の領
土へと来ていた。

サキュバスには、強い戦闘能力はない。
だが、魅了という邪眼で、全ての異性を操る事が
出来る。

もちろん勇者には効かなかったが、それでも周りに
いる人間達には効果があるのだ。

力こそ全ての魔王領で幹部になる事は、難しいのだ。

だが、今回の命令なら、まだ勝ち目があった。
倒さなくても、捕まえればいい。

これは、魅了の邪眼を持つサキュバスにとって、好
都合と言えたのだった。







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