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第三十九話 酔っ払い
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今度こそ、真の平和が訪れたはずだった。
勇者の誠治が何もしなければの話だが………。
結局、帝国に戻って来た誠治は孤児院にした自宅へ
と帰宅したのだった。
別に行く当てがあるわけでもないし、やる事がある
わけでもなかった。
もし、陸がいたのなら変わっていたのかもしれない
が、残念ながら今の誠治は一人だった。
毎朝店に入り浸りになると酒を飲んではただ呆然と
何も考えない日々が続いた。
夜までずっと酒を飲んでも、勇者のスキル状態異常
抵抗が高いせいで酔えないのだ。
食事もそこそこにずっと酒を煽った。
「おい、いい加減にしろよ」
横に座った男が声をかけて来た。
モンドだった。
自分の仕事を終えて今、来たのだろう。
誠治が最近、ギルドの依頼すらこなして居ない事を
知って、忠告に来たのだ。
ギルドの依頼は、全く受けなければ除名になってし
まう。
しかも、一度除名された人間は半年間はギルドへは
入れないのだ。
「なぁ、勇者ってのはこんな事をする為にあるんじ
ゃねーだろ?いい加減に目を覚ませよ?」
「目を覚ます?陸が居ないのに?こんな世界で僕は
どうやって生きていけばいいんだ?……もう、ど
うでもいい……どうでも……いいんだ」
やる気など全くなくなってしまった無気力状態の
今の誠治には何を言っても響かなかった。
するとそんな時、店に人相の悪い集団が入ってきた
のだった。
店員を呼びつけると、大声で怒鳴っていた。
「おい、酒だ!酒をもってこい。あとは美味い飯も
もってこい。まずかったら容赦しねーぞ?」
「おいおい、兄貴に下手な料理出してみろよ、この
店なんか一瞬で潰れる事になるぜ?」
「ちげーねー」
取り巻き達は口々に言った。
誠治はその光景を見えているし、聞こえてもいる。
だが……止める事はしなかった。
他人のいざこざに首を突っ込む義理はないとでもい
うようにただ酒を飲み続けていた。
「やばいのが来たな……止めないのか?」
「止めてどうするの?僕に何を期待しているのかは
知らないけど、あんなクズが街に溢れかえってい
る国なんだ…どうなろうといいだろう」
確かに、勇者に何を期待したのだろう。
前の誠治だったら、お節介でも仲介をしたり、困っ
た人がいれば助けに入っていた。
それは、桜井陸という人間が側にいたからなのだと
理解した。
彼の前では、常に正しく。
正義を重んじて居たのだ。
本当の勇者は、お節介なんてしない、ただの臆病者
だったのだ。
モンドはため息を吐くと、席を立ち上がった。
男は店員が酒持っていくと、一気に飲み干し机の上
に大きな音を立てておいた。
ゴンッという音がして、周りの視線が集まる。
「おい、この酒……薄いな。薄めて出したな?」
「おいおい、兄貴になんて事しやがるんだ?この店
はよぉ~」
いちゃもんでしかないのだが、これは言ったもん勝
ちとでもいおうか、結局は強く出た者が得をするの
だった。
「おい、これで金を取る気じゃねーだろうな?」
「そうだ、そうだ!この店はぼったくりだぞー」
「こんな店、営業していいってーのか?酒は薄い
し、飯も不味い。なんだ、この味はよぉ~」
わざと、料理を床にこぼすと店員に詰め寄る。
「おい、この残飯を今すぐ食え!そうだな…ここ
に跪いて全部食えよ?口だけで食べろ?」
あきらかに難癖つけているようにしか見えなかった。
モンドは前に出ていくと、店員を店の奥へと匿った。
「これ以上店に迷惑をかけるな!嫌ならさっさと出
ていけ!不味いなら来るな!迷惑なのはお前らの
存在だ」
モンドはいたって平然と言い放ったのだった。
モンドの行動は、正しい判断だったはずだった。
だが、相手が強行手段に出なければの話だった。
男達は立ち上がると、それまで座って居た椅子を持
ちあげると、突然他の客に投げたのだった。
「きゃっーー」
「うおっ、何しやがるっ!」
椅子が飛んできたテーブルで飲んでいた客が怒って
怒鳴り散らす。
体格は大人と子供ほどあったが、やられたままで
納めるほど、大人でもないし、酒が入っているせ
いか気が大きくなっていた。
取っ組み合いの喧嘩になると思われたが、即座に
決着が付いたのだった。
モンドはその光景を見て、殴られた客をすぐに手
当てするように指示した。
「お前も兄貴に逆らうのか?」
「兄貴、こいつもやっちゃいましょう」
「そうですよー。こんな生意気な店ごと潰しまし
ょうよ」
これは大事になってしまったと反省せざるを得な
かった。
これでも誠治は動こうとしなかった。
「おいおい、お前あそこに座ってたよな?って事
はあそこですかして飲んでる奴も仲間か?」
「あぁ、俺の仲間だが……まぁ、過去の仲間さ」
「俺らに逆らった落とし前つけてもらうぞ?」
そういうと、モンドに殴りかかったのだった。
それと同時に兄貴と呼ばれた男はさっきモンドが
座って居たテーブルへときて居た。
そこには、今も酒を飲んでいる誠治がいた。
誠治の前の机を足で蹴り上げると、後ろまで
吹き飛ばしたのだった。
勇者の誠治が何もしなければの話だが………。
結局、帝国に戻って来た誠治は孤児院にした自宅へ
と帰宅したのだった。
別に行く当てがあるわけでもないし、やる事がある
わけでもなかった。
もし、陸がいたのなら変わっていたのかもしれない
が、残念ながら今の誠治は一人だった。
毎朝店に入り浸りになると酒を飲んではただ呆然と
何も考えない日々が続いた。
夜までずっと酒を飲んでも、勇者のスキル状態異常
抵抗が高いせいで酔えないのだ。
食事もそこそこにずっと酒を煽った。
「おい、いい加減にしろよ」
横に座った男が声をかけて来た。
モンドだった。
自分の仕事を終えて今、来たのだろう。
誠治が最近、ギルドの依頼すらこなして居ない事を
知って、忠告に来たのだ。
ギルドの依頼は、全く受けなければ除名になってし
まう。
しかも、一度除名された人間は半年間はギルドへは
入れないのだ。
「なぁ、勇者ってのはこんな事をする為にあるんじ
ゃねーだろ?いい加減に目を覚ませよ?」
「目を覚ます?陸が居ないのに?こんな世界で僕は
どうやって生きていけばいいんだ?……もう、ど
うでもいい……どうでも……いいんだ」
やる気など全くなくなってしまった無気力状態の
今の誠治には何を言っても響かなかった。
するとそんな時、店に人相の悪い集団が入ってきた
のだった。
店員を呼びつけると、大声で怒鳴っていた。
「おい、酒だ!酒をもってこい。あとは美味い飯も
もってこい。まずかったら容赦しねーぞ?」
「おいおい、兄貴に下手な料理出してみろよ、この
店なんか一瞬で潰れる事になるぜ?」
「ちげーねー」
取り巻き達は口々に言った。
誠治はその光景を見えているし、聞こえてもいる。
だが……止める事はしなかった。
他人のいざこざに首を突っ込む義理はないとでもい
うようにただ酒を飲み続けていた。
「やばいのが来たな……止めないのか?」
「止めてどうするの?僕に何を期待しているのかは
知らないけど、あんなクズが街に溢れかえってい
る国なんだ…どうなろうといいだろう」
確かに、勇者に何を期待したのだろう。
前の誠治だったら、お節介でも仲介をしたり、困っ
た人がいれば助けに入っていた。
それは、桜井陸という人間が側にいたからなのだと
理解した。
彼の前では、常に正しく。
正義を重んじて居たのだ。
本当の勇者は、お節介なんてしない、ただの臆病者
だったのだ。
モンドはため息を吐くと、席を立ち上がった。
男は店員が酒持っていくと、一気に飲み干し机の上
に大きな音を立てておいた。
ゴンッという音がして、周りの視線が集まる。
「おい、この酒……薄いな。薄めて出したな?」
「おいおい、兄貴になんて事しやがるんだ?この店
はよぉ~」
いちゃもんでしかないのだが、これは言ったもん勝
ちとでもいおうか、結局は強く出た者が得をするの
だった。
「おい、これで金を取る気じゃねーだろうな?」
「そうだ、そうだ!この店はぼったくりだぞー」
「こんな店、営業していいってーのか?酒は薄い
し、飯も不味い。なんだ、この味はよぉ~」
わざと、料理を床にこぼすと店員に詰め寄る。
「おい、この残飯を今すぐ食え!そうだな…ここ
に跪いて全部食えよ?口だけで食べろ?」
あきらかに難癖つけているようにしか見えなかった。
モンドは前に出ていくと、店員を店の奥へと匿った。
「これ以上店に迷惑をかけるな!嫌ならさっさと出
ていけ!不味いなら来るな!迷惑なのはお前らの
存在だ」
モンドはいたって平然と言い放ったのだった。
モンドの行動は、正しい判断だったはずだった。
だが、相手が強行手段に出なければの話だった。
男達は立ち上がると、それまで座って居た椅子を持
ちあげると、突然他の客に投げたのだった。
「きゃっーー」
「うおっ、何しやがるっ!」
椅子が飛んできたテーブルで飲んでいた客が怒って
怒鳴り散らす。
体格は大人と子供ほどあったが、やられたままで
納めるほど、大人でもないし、酒が入っているせ
いか気が大きくなっていた。
取っ組み合いの喧嘩になると思われたが、即座に
決着が付いたのだった。
モンドはその光景を見て、殴られた客をすぐに手
当てするように指示した。
「お前も兄貴に逆らうのか?」
「兄貴、こいつもやっちゃいましょう」
「そうですよー。こんな生意気な店ごと潰しまし
ょうよ」
これは大事になってしまったと反省せざるを得な
かった。
これでも誠治は動こうとしなかった。
「おいおい、お前あそこに座ってたよな?って事
はあそこですかして飲んでる奴も仲間か?」
「あぁ、俺の仲間だが……まぁ、過去の仲間さ」
「俺らに逆らった落とし前つけてもらうぞ?」
そういうと、モンドに殴りかかったのだった。
それと同時に兄貴と呼ばれた男はさっきモンドが
座って居たテーブルへときて居た。
そこには、今も酒を飲んでいる誠治がいた。
誠治の前の机を足で蹴り上げると、後ろまで
吹き飛ばしたのだった。
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