俺がモテない理由

秋元智也

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第四十一話 女神の悪戯

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痛い……熱い……。

俺は……一体どうなったんだ……。

胸を貫いた剣の切先が、肉に食い込むのを感じて
死を覚悟した。

あいつを置いていくのが、悔しい。

一緒に生きて、一緒に年を取っていくつもりだっ
たからだ。

彼女を作って、あいつに自慢してやるんだ。
そして、子供を作って……。

誠治も彼女を作ってご近所さんになるんだ。
そして、お互いの子供に話してやるんだ。

むかし、俺らは別の世界から召喚されて、勇者
と魔術師としてこの世界を救って平和をもたら
したのが、自分達なのだと。
自慢気に話すんだ。

そして、子供から尊敬されて……そんな人生を
送る予定だったのだ。

俺の考えは、悔しくも途中で終わってしまった。

恋愛もせずに、孤独に一人死んだんだ……。

帰りたかった。
毎日勉強しろとうるさかったけど、それでも会い
たい。

母さん……父さん……。
誠治……俺が居なくなって、少しは寂しがってく
れたかな?

俺の事、少しは思い出してくれるかな?

身体があるわけではないせいか、ふよふよと浮い
ている感覚だった。


『あらあら、なんでこんなところにいるのかしら
 貴方はまだここに来るのは早いわ。戻りなさい』

青白い手が差し伸べられると、ふよふよと浮かん
でいた光の元に触れて来た。

顔は見えない。
ただ優しそうな、落ち着く声が聞こえると暖かさ
に包まれたのだった。

そこで、長い夢を見た気がした。
俺が死んで、それからの誠治が荒んでいく夢。

いつも人助けをするのが趣味かと思えるほど親切
で誠実な奴だったのに、困った人がいても無視し
イラついたら、殺す。

殺すことに躊躇いがないかった。

誠治の顔した別人のような姿だった。
モンドは、相変わらず自分の正義を貫いていた。

そして聖女のレイネは……。

俺は、見て居られなかった。

今すぐに側に行って、喝を入れたかった。
酒ばかりを煽る、そんな誠治は見たくなかった。

『ほら、ずっと見ていると、帰れなくなるわよ。
 もう時間もないから、よく聞きなさい。戻った
 ら呪いを解きなさい。大事な事だから、忘れて
 はダメよ?この世界で最初にかけられた呪いを
 解くのよ?』

どうしてそんな必死なのかはわからないが、呪い
関係は聖女か、上位神官だけが解く事ができると
いう。


そして、ゆっくりと暗くなっていく視界の中で
ただ、寂しそうな顔の誠治をずっと眺めていた
のだった。



     ♦︎



視界が開けると、眩しさに目が眩んだ。

「くっ……こ…ここは……」
「おい、陸!何をぼうっとしてんだ!油断する
 なよ?」

モンドの声にハッと周りを見回した。

そこはどこかの城の中のような作りだった。
どこかで見た覚えがある。

だが、一体どこで見たのか?
目の前では、兵士がこちらに武器を持って走
ってきていた。

「なんで人間と戦ってるんだ?」
「何を言ってんだよ。陸、今魔王側についた
 この国の首都に攻め入るって言ったのはお
 前の考えだろう?」
「俺の?……攻め入るって……あっ!」

思い出した。

レイネとモンドをパーティーに入れてから、暫
く旅をして居たら、魔王側についた国の兵士に
追いかけ回さられたのだ。

あまりにしつこく狙われるので、いっそ城ごと
落としたらどうかと提案したのだ。
住民も王の圧政に苦しみ、重税のせいで今年の
冬を越す食糧もないと言って居たのを聞いて、
いっそ、国を落とそうと持ちかけたのだった。

この時は、確か誠治と別行動だったはずだ。

誠治にはレイネが、俺にはモンドがついて居た。
いつもなら誠治は俺と組むのだが、この時ばか
りはレイネと組んだのを思い出す。

「確かこの国って王を討ち取ったせいで他の国に
 吸収されて名前すら無くなるんだよな」
「何を言ってるんだ。早くいくぞ」

この時のモンドは頼りがいがあったのだった。

記憶を辿りながら、モンドについて走り出した。

『呪いを解きなさい』

耳に残る声に、俺はハッとする。
これは現実なのか?
もしかしたら、ただの記憶でしかないのかもしれ
ない。
なぜなら、俺は………。

「おい、待てって。急に飛びすなっ!」

モンドに引き留められ、俺は足を止めた。
曲がった先に人の気配がする。

確かこの先には一つの部屋があって、そこに高位
神官達が閉じ込められて居た。

彼らを解放した事が後の功績に大きく関わって来
るのだった。

「大丈夫だ。この先にいるのは捕虜だったはずだ」
「おい、陸っ!捕虜って、この先がどうなってる
 のか知ってるのか?」
「あぁ、そうだな……聞いたんだ。情報屋からさ」

俺は誤魔化すように情報屋の名前を出す。
情報屋テートンとは、この時はもう懇意にしてい
たはずだった。

誠治と陸がいつも会いに行っているので、モンド
は詳しい事は知らない。

俺は警戒心もなく曲がり角を曲がると、その先の
ドアを開けたのだった。





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