(仮)婚約中!!

佐野三葉

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何時からが早寝早起きだろう?  その③~楓side~

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「【365日家事をする】が出たのね。最初の課題で」

「1年間まるまる使う課題なんて、私、初めて聞きました。」

「私もよ。」

楓の課題が長期的なことに朱音も奈央子も驚いたようだ。

「いやあ、なんか小学生の夏休みの宿題みたいですよね。早寝早起きとお手伝いなんて・・・。」
楓は耳が熱くなるのを感じながらそう言った。

「そんなことあるけど、大事なことよね?奈央子ちゃん。」

「そうですね。早寝早起きができれば、体調を崩しにくくなるし、家事をマスターしていれば、新婚ブルーにならなくてすみますよね。」

「新婚ブルー?」
そんなの聞いたことがない。楓の友達でまだ結婚した子はいなくて、大学の友達の里実が4か月後の6月に結婚するのが第1号だ。

「えーとね。私の友だちが言ってたんだあ。結婚したら、仕事から帰ると、毎日家事が待っていてブルーになるって。働いた後に、ご飯とお風呂が用意されていた結婚前が懐かしいって。それでそういう症状を私の友達の中で、新婚ブルーって呼ぶようになったんだよね。」


「なるほど・・・。マリッジブルー、マタニティーブルーの間に、新婚家事ブルーってのもあるんですね。」
楓も、結婚してからも仕事を続けることを考えているので、他人事ではない。

「うーん。まあ、人それぞれだろうけど、家事をやり慣れていなかった子とか仕事と家庭の両立を選んだ子とかは、結構悩むみたいよ。」

「2人はどうでした?」

「私は、家事は小さい頃からしてきたから特には、新婚家事ブルーはなかったかな。聡さんも仕事が忙しくない時には手伝ってくれるから結婚前より楽に感じたわ。おかずを節約し過ぎないようにするのには、何か月か悩んだかな。」

朱音さんはお父さんを小学生の頃に亡くしたそうで、「家事はその頃から働き始めたお母さんに代わってしていた」と前に楓が、朱音の家事の手際の良さに驚いた時に話してくれた。節約もその頃からの習慣のようだ。

「私はねえ、うーん。楓ちゃんのお母さんに家事を教えてもらうのは楽しかったし、陽太をすぐに授かってからも楓ちゃんのお母さんに色々助けてもらったから新婚ブルーは、なかったなあ。」

奈央子さんは結婚前の数か月、瀬戸家に一緒に住んで家事を母から教わっていた。2人が楽しそうに家事をしていたので、楓も時間がある時には、一緒に料理したり部屋の模様替えをしたりして、混ぜてもらった。

「そうなんですね。じゃあ、私もこのまま家事スキルを鍛えればいいってことですね。「365日って長すぎるー」って正直思ってたんですよね。でも、新婚家事ブルーを回避できるならいいですね。なんか頑張れそうな気がしてきました。」

楓は、朱音と奈央子の話してみて、自分に家事の課題が出たのは妥当なんだなと感じた。

「で、早寝早起きの課題の方なんですけど。あれ携帯は・・・。すみません玄関に鞄を置きっぱなしにしてました。ちょっと取ってきます。」

楓は、こたつから出ると、足早に玄関に鞄を取りに行った。





「やっぱり楓ちゃんは瀬戸家ですね。」

「そうね。目標がはっきりすると難しい課題でもやる気が出るのは、聡さんと同じよね。」

「新君もそうですよ。」

「じゃあ、楓ちゃんが目標を決められるようにアドバイスする方向でいいかしら?」

「いいと思います。私が言葉に詰まったら、助けてくださいね。」

「うーん。考えておくわあ。」

「え~そこは、【任せて】じゃないんですかあ。」

リビングは南向きの部屋なので日光が入り温かい。


かちゃり

鞄と携帯を持って楓が入ってきた。

「お待たせしました。えーと、ああ。今の達成度合いを見てもらうには、クリスタルを見てもらった方がいいですよね。」

そう言うと楓は、いつものように携帯から外して、携帯ストラップを手に持ちこう言った。

「クリスタルよ。「早寝早起きを身に着ける」の達成度合いを示せ。」

携帯ストラップの三日月のパーツがきらっと輝き、数字が浮かびあがる。
4 0/100


「すごーい!楓ちゃん、もうクリスタルを使いこなしてるんだね。」
奈央子が感嘆の声を上げた。奈央子が浮かび上がった数字を触ってみようとすると、するりと避けて数字が楓の傍に来た。

「わあ!意志がありますね。その数字に。」
奈央子はワクワクした表情でそう言った。

ーへえ。動けるんだ、この数字。気がつかなかった。後で触れるか試してみよう。


「そんな方法があったなんて知らなかったわ。私は毎日、クリスタルを眺めて何となく達成度合いを測ってたから。」
朱音も驚いた表情で、空中の数字を見ている。

「私も朱音さんと同じですよ。時々、課題に早く合格したくて【色よ変われ~】って念を送ったなあ。」


「楓ちゃん、今使った魔法は瀬戸家の直系に伝わるものよね?私たちに見せて大丈夫?」
朱音が楓のことを心配して聞いた。

「?。・・・。何となくやってみたらこれできちゃったんですよね。はは・・・。なので、問題無いと思います。」
ー 一瞬何を聞かれたのか分からなかった。これってそんなに驚くようなことなんだ。

「そうなの?習わずにできるなんてすごいよー。」

「本当にそうだわ。楓ちゃんにはクリスタルを使いこなす才能があるわね。」

「そうですかね。はは。」
楓はなんと言っていいか分からず、とりあえず笑ってごまかして、本題に入ることにした。

「えっとそれでですね。早寝早起きの達成度合いが、40パーセントもしくは40点なんですね。自分では、かなり改善したつもりなんですけど、どこがいけないのかよく分からなくて。何かアドバイスをもらえたらと。」

「そうなのね。」
朱音さんが空中の数字を見ながら少し考え込んだ。

「ちょっと待っててくださいね。」
奈央子は部屋から出ていくと、コピー用紙数枚とペンを持って戻ってきた。

「こういう時は、紙に書きだしてみるのが1番です。」

「そうね。書いた方が頭の中、整理できるわね。」
朱音も奈央子の意見に賛成した。


「じゃあねえ、結婚してからの楓ちゃんの1日のタイムスケジュールを大体でいいからここに書いてみてください。」

「えっ。」
楓は結婚してからの生活を想像したことはあったけれど、タイムスケジュールとして考えたことはまだなかった。

「ああ。イメージしづらいみたいね。じゃあ、まずは今の楓ちゃんのタイムスケジュールを書いてみて。」
朱音が助け船を出してくれた。

「あ、はい。それなら書けます。」

6:00 起床
     手伝い

7:20 朝食
     会社に行く準備

8:20 職場へ出発

19:00 帰宅
      夕食
      夕食の片付け

20:00 お風呂
      自由時間

22:00 匠さんと電話

0:過ぎ 就寝



「働きながら1日2回も家事をしてるのね。偉いわあ。」

「夕食の後片付けをしてもらえるなんていいですねえ。夢のようです。お義母さん、大助かりですね。」

「へへ。そうですかね。」
楓は2人から褒められて照れた。

「家事の課題は今のところ大丈夫なのよね?」

楓は頷いた。

「じゃあ、睡眠時間はどうやってこの時間に決めたのか話してもらっていいかしら?」

「えーと、早起きって言ったら何となく6時かなって思って。6時間は眠りたいので、ベッドに入る時間は0時くらいに決めました。」
楓はこの1週間を振り返って自分の気持ちを思い出した。

「楓ちゃん、睡眠時間を変えて体調に変化はありましたか?」
奈央子さんが今度は質問してきた。

「ああ。それはですね・・・。やっぱりよくなりました。それまでは、匠さんとの電話に合わせて夜更かししてたので、休日に寝貯め(ねだめ)して乗り切ってたので。前よりも朝起きるのが辛くないですし、疲れにくくなりました。」
匠さんとの長電話は楽しかった。でも、課題が出て生活を変えてみて自分が無理してたことに楓は気づかされた。仕事の効率も上がって、前より15~20分早く帰れるようになった。

「体調はよくなったんだね。じゃあ、方向性は合ってますねえ。」

「そうね。だとすると、もう少し結婚してからの生活を想像しながら、それに合うように睡眠時間を決めた方がいいということなのかもしれないわ。」

「ああ。それかもしれませんね。楓ちゃんもう少しの工夫できっと課題を合格できるよ。」
朱音の意見を聞いて奈央子がそう言った。

「それってどういうことですか?」
課題の合格と結婚生活とどう関係があるのだろうか。

「楓ちゃんは今の睡眠時間は、早寝早起きはこのくらいかなあで決めたのよね。」

「はい。」

「その頑張りは無駄じゃないわ。だってこうやってクリスタルが40パーセントって評価してるんだもの。その経験を活かして、今度は結婚した時のタイムスケジュールを立てて、そのスケジュールに合った睡眠時間を決めるといいんじゃないかと思うの。」

「え・・・。このクリスタルってそこまで細かく課題を評価するんですか?」

楓は朱音の言ってくれた「その頑張りは無駄じゃないわ。」という言葉が嬉しかった。けれど、その後のアドバイスの【結婚後のタイムスケジュールを立てる】というのにはびっくりしてしまった。そこまで考えながら、課題はこなさいといけないのか・・・。ハードルが高い。すごく高い。

「そうね。かなり分析してくるわね。」
朱音がしみじみと答えた。

「そうなんだよ~。私の時もね【こっちの事を全部知ってるんじゃないか】と思わせるくらい詳しく評価されたんだよ~。」
奈央子も当時を思い出し力説した。


「ーーーそうなんですか。じゃあ、この課題をクリアする為には、かなり早く寝なきゃだめってことですよね。」

ーそんなに分析してくるんだ。だとすると、私は子供が出来ても仕事を続けたいから、キャリアウーマンママのお手本のような人の生活を真似した方がいいってことかな。前に本屋で立ち読みした雑誌で、キャリアウーマンママの1日のスケジュールを読んだことがある。あのママさんは、確か4時起きだった。4時起きなんてできるだろうか。あのママさんは何時に寝ていたっけ・・・。

楓がそうやって考え始めた時に、奈央子が意外なことを言った。

「えーと、それがメインじゃないと思うんだ。結果的には眠る時間は早くなるんだと思うけど。なんて言うか、楓ちゃんの気持ちがメインと言うか。朱音さん、わたしの言いたいこと分かりますか?」

「奈央子ちゃんが言いたいのは、早寝早起きをすることで、匠さんの結婚生活が楽しくなるように準備するってことだと思うの。例えば、結婚してもたくさん話したいから匠さんよりも早く起きて家事をするとか結婚してもデートしたいから休日も元気でいられるようにするとか、楓ちゃんにとっての幸せをゲットするために睡眠時間を決めるといいんじゃないかっていうことだと思うの。」

「はい!そんな感じです。楓ちゃんの幸せのために課題を活用するんだよ。」

「私の気持ちを入れて大丈夫なんですか?」

「むしろ、気持ちが入ってないと課題は合格できないのよ。」

「そうなんですね。知りませんでした。」

「そういうの伝えるために、私たち相談役がいるからがっかりしなくて大丈夫だよ。」

「結婚してからの2人の生活に活かせるように、後でもう1度睡眠時間を考えてみてね。」

「はい。」
ーそっか。課題をこなすのが目的なんじゃなくて、私の理想の新婚生活を手に入れる準備のために、課題があると思っていいんだな。

相変わらずハードルの高い課題だけど、誰かのためにあるんじゃなくて自分の為にあると教えてもらえたことで、楓の気持ちはだいぶ楽になった。


かちゃり

「おかあしゃー、のどかわいたよー。」
目をこすりながら陽太君が部屋に入って来た。

「じゃあ、話はここまでで、何かあったら連絡してね。」

「遠慮しないでね。」

朱音と奈央子が自分のことを思ってくれているのが伝わってきて、ほっこり温かい気持ちになった。

「はい。ありがとうございます。」
楓はペコリとお辞儀をした。















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