(仮)婚約中!!

佐野三葉

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何時からが早寝早起きだろう?  その②~楓side~

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フンフ フンフ フーン♪
歩いているうちに鼻歌が自然とこぼれてきた。今日は風もなく日差しも温かくて過ごしやすい。新兄さんたちの所まで、バスを降りて歩いているうちに体が温まってきた。

新兄さんたちが住んでいるマンションに着くと、いつものように楓は、部屋番号を押してチャイム(?)を鳴らした。

ピピピピ。ピンポーン!

「はい。」
「奈央子さん。楓でーす。」
「どうぞー。」

ウィーンと住居者用の扉が開いた。

エレベーターで、3階に上がる。

「プリン喜んでくれるといいな。」
楓は、手に持っていた袋の中のプリンを見て呟いた。

ピンポーン!

トタトタトタ・・・

ガチャリ


「かえでちゃー、いらっしゃーい。」
甥っ子の陽太(ひなた)君が、お出迎えしてくれた。お気に入りの怪獣のイラストの着いた長袖トレーナーに黒の半ズボンだ。


「陽太くん、おはよう!」
楓は、陽太の目線に合わせてしゃがみ込み、にっこり挨拶をした。

陽太君(4歳)の名前は、新兄さんが、決めた。
「ひなた、あらた、最後の音が同じだと、何か血の繋がりを感じさせるだろう?俺に似た所もあって欲しいけど、自分の世界も持って欲しいんだ。」
陽太君の名前の意味を聞いた時、新兄さんが少し照れながらそう話してくれた。

新兄さんとも奈央子さんとも違うタイプだけれど、陽太君も明るくて優しい。【陽太】という名前がぴったりな甥っ子だ。顔は新兄さんに今のところ似ている。
楓にもこうして懐いてくれるので、叔母さんとしてはもう幸せな限りだ。

「陽太君、お出迎えありがとう♪」
楓は荷物を玄関に置くと、陽太を抱きしめた。

「へへ。ぼくねえ。おかあしゃんのお手伝いしたんだよ。」
陽太は照れつつ、自分の頑張りをアピールした。

「そうなの。おかあさん、大助かりだね。」
楓は陽太の頭を優しくポンポンとした。

「うん!おとうしゃんのいない時は、ぼくがおかあしゃんをたすけるの。」
ーうわあ。かわいいわあ。新兄さん仕事で忙しいから、陽太君と男同士の約束でもしたのかな。

「そっかあ。たのもしいなあ。お土産にプリンを持ってきたから、みんなで食べようか?」

「プリン!ぼくねえプリンだっいすき♪」
陽太君が顔を輝かせて元気よく言った。

「ふふ。そう言ってもらえると嬉しいなあ。」

「楓ちゃん、いらっしゃーい♪遠慮せずに上がって上がって。」
なかなか戻って来ない陽太を心配したのだろう。奈央子さんがひょっこり顔をだし、玄関まで来ると楓を中に入れてくれた。奈央子さんは、厚手のグレーのポケットの可愛いタイプのルームウェアに深緑と紺のチェック柄のレギンスを着ている。

「おじゃましまーす。」
置いてあるスリッパに履き替える。

「おかあしゃん!かえでちゃーがプリンもってきてくれたの!」

「え!ごめんねえ。手ぶらでよかったんだよ。」

「いえいえ。気にしないでください。私ももちろん一緒に食べるんで。」

「じゃあ、早速食べようか?」

「やったあ!」

カチャリと扉の開く音がした。

「3人とも廊下でずっと話してると体が冷えるわよ。部屋に入ってから話した方がいいわ。」

朱音が、諭すようにそう言った。今日は、オフホワイトのセーターにシャツとジーパンのカジュアルスタイルだ。

「「はーい」」
朱音の言葉に、楓と奈央子の返事が重なった。2人は顔を見合わせてクスリと笑った。

「ぼく、てーあらってくる。ぼくがいくまでプリンたべるのまっててね。」
陽太は、プリンが待ちきれないようで急いで洗面所に向かった。

陽太のその言葉で何だか可笑しさが込み上げてきた。

「あはははは!」
ー何だろう。この感じ。楽しい。この1週間辛かったわけじゃないけど、知らない間に課題で緊張してたんだなあ。


「ふふふふふ♪朱音さん、楓ちゃんがプリンを持って来てくれたんです。私たちも手を洗って食べましょう。」

「楓ちゃんありがとう。」

「えーと、皆で食べましょう。」

楓は、ちょっと照れてそう答えた。

そうやって3人も洗面所へ手を洗いに行った。

1番乗りで手を洗った陽太君は、こたつの所で子ども用の木製の椅子に座って、怪獣柄の食事用エプロンを着けてお行儀よく待っている。新兄さんの希望でこたつは、大きい6人用サイズだ。

ー可愛いなあ。

楓は陽太君の様子を見て心がほっこり温まるのを感じた。

奈央子さんが、お盆の上にお皿とスプーンを並べてくれている。楓も袋の中からプリンを取り出して並べた。

「えーと、あとこれが新兄さんので、こっちが聡兄さんと樹梨(じゅり)ちゃんのです。冷蔵庫に入れてもらってもいいですか?」

「わあ。ありがとう。新君喜ぶわ。」
奈央子さんが嬉しそうに言った。

「楓ちゃん、樹梨の分までありがとうね。これ、もしかして手作り?」
朱音さんが、プリンのカップを持ち上げて尋ねた。

「はい。」

「え!電話したの22時くらいだったよね?」
奈央子がびっくりした表情をした。

「えーと、電話の後で急に作りたくなっちゃって・・・。食べてもらえたら嬉しいです。」
楓は、少し目を泳がせながら照れてそう言った。

「もちろん大歓迎よ!」

「食べる食べる!」

3人で盛り上がっていると、陽太君が待ちきれず声をかけてきた。

「おかあしゃん。かえでちゃー。あかねちゃー。ぼくね、いい子にしてまってるよ。」
陽太君が、キリっとした表情をしてそう言った。

「ふふふふ!ごめんごめん。今すぐ持っていくね。ーーーはいどうぞ。」

奈央子さんが陽太くんに謝って、プリンを陽太君の前に置いた。

「おかあしゃー、ぼく、もう食べていい?」

奈央子が頷いた。

「いっただきまーす。----おいしいー!」
陽太君は、味わうように少しずつプリンを食べていく。もうプリンに夢中だ。






「陽太くんのあの表情かわいいわあ。写メを取りたいなあ。」

「小さいのに大人みたいな表情で、【ぼくね、いい子にして待ってるよ】ってコメントが可愛い過ぎますよねえ。」

「キリっとしてたわねえ。ふふふ。」

「そうなんですよー。あの、キリっが可愛いかったですよね。」

朱音と楓は、台所のテーブルの方から奈央子と陽太とのやり取りを見ながらそんな会話をしていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あー美味しかった。」
奈央子がにっこりと言った。

「なめらかプリンはツボにはまるわあ。」
朱音さんらしからぬ言葉に、楓は「やった」と思った。なかなか動じない朱音さんからのこういうコメントは、貴重だ。

「かえでちゃー、ぼく、また食べたいな。」
陽太君のお願いが叔母さんは嬉しい。

「うんうん。また作ってくるね。」
ー皆に好評でよかったな。

「やったあ。」

「陽太、そろそろ歯磨きしようっか。」

「はーい。」
陽太君は素直に返事をして、奈央子さんと一緒に洗面所に向かった。

「歯磨きをすぐにしてくれるって助かるのよねえ。」
2人が出て行った後で、朱音がしみじみした感じで言った。

「そうなんですか?」

「樹梨は、陽太君くらいの時は嫌がってね。大変だったわあ。」

「なるほどー。そう言えば、家に来た時に歯磨きが嫌で追いかけっこしたことがありましたね。」
樹梨ちゃんは、最初は歯磨きを嫌がって逃げていたのだけれど、途中から追いかけっこが楽しくなったらしく、家中を逃げ回って楽しんでいた。あの時は、結局お母さんが樹梨ちゃんを言い聞かせて歯磨きを終わらせたんだったなあ。

「ああ、そんなこともあったわねえ。今、思えば楽しい思い出だけど、あの頃は必死だったわあ。」
朱音さんが、昔を振り返りながらそう答えた。

カチャリ

奈央子が陽太をだっこして、部屋に入って来た。

ーどうしたんだろう。さっきまであんなに元気だったのに。

「大丈夫ですか?」
楓は思わずかけよって尋ねた。陽太君の顔色は悪くないように見える。スースーと寝息を立てて眠っている。

「大丈夫よ。眠っているだけだから。ベッドに寝かせてくるね。」
奈央子さんは小さい声でそう答えると、部屋を出て行った。

「大丈夫でしょうか?」
楓は心配でたまらず、朱音に尋ねた。

「うーん。ああ、大丈夫と思うわ。たぶん、クリスタルを使って陽太君に眠ってもらったのだと思うから。」
朱音が心辺りがあるらしく説明してくれた。

「そんなことも出来るんですか?」
楓は思わず目を見開いた。

「ああ。そっか。楓ちゃんはまだお義母さんから習ってないんだったわね。瀬戸家の秘密を話す時だけ、子どもたちを眠らせられるようになっているのよ。秘密って知っちゃうと話たくなるし、小さい時から知ってるとのびのび成長できないだろうからってことらしいわ。」

「そうなんですね。プリンを食べて具合が悪くなったわけじゃないんですね。ほっとしました。」
ー病気じゃなくてよかったあ。卵アレルギーになったのかと思った。


カチャリ

奈央子が部屋に戻ってきた。

「ごめんね。待たせちゃって。」

「奈央子ちゃん、クリスタルを使ったのよね?」
朱音が確認してくれた。

「はい。ああ、ごめんね。説明してなかったから心配かけちゃったよね。」
奈央子は楓の方を見て謝った。

「いえ。ちょっとびっくりしましたけど、大丈夫です。」

「ごめんね。不自然じゃないタイミングで魔法をかけないといけないから、説明が後回しになっちゃって。」
奈央子がもう1度すまなそうに謝った。

「あ。本当に大丈夫です。・・・。それにしても催眠の魔法も使えるなんてすごいですね。2人ともよく使うんですか?」
楓は「困ったな」と思ったが、いい言葉は見つからなかった。なので、ふと思った疑問を朱音と奈央子に聞いてみた。

「えーと」
奈央子がぽりぽりと人差し指で頭をかいた。

「そうできたら便利なんだけどね。」
朱音さんも少し目を泳がせてから、次のように言った。

「瀬戸家の秘密を守るためだけに使わないといけないのよ。この催眠魔法は。ちなみに、自分の都合で使うと相手にかからず自分に返ってくるの。」

「そうなんですか?」
ーそうなんだあ。でも、ちょっと面白そう。

「わたしは誘惑には勝てずに1回、陽太に使ったことがあったんですよねえ。念のために新君がお休みで家にいる時に使ってみたんです。そうしたらその瞬間から私のほうが爆睡しちゃって、後で新くんにものすごーく怒られました。」

ー新兄さんが心配するくらいだから本当に何の反応もなく爆睡したんだろうなあ。

「新君も使いそうよね。」

「あ!新君は、瀬戸家に行った時に陽太に使って、新君が爆睡してお義父さんから叱られたそうです。」

「うわあ。」
ー新兄さんは、亭主関白スイッチの入ったお父さんに叱られたに違いない。想像するだけで怖い。私は、使えるようになっても、実家で試さないようにしよう。

「まあ、だから試す時は、誰か傍にいてくれる時の方がいいわ。」
朱音さんがアドバイスをしてくれた。

「なるほど。分かりました。その時は、2人のどちらかに頼むかもしれないのでよろしくお願いします。」
楓は、試すことを前提に2人に頼んだ。

「そうよね。そこに使える魔法があったら、試したくなるのが人ってものよね。」
朱音さんが右手を頬にあててそう言った。

「ちなみに、朱音さんと聡さんはどうしたんですか?」
奈央子さんが質問した。

「やっぱり人だからねえ。皆が通った道を通ったわ。」
奈央子さんが、コタツの上にあったお茶をごくりと飲んだ。ちなみに今日は、朱音さんが持ってきてくれたそば茶だ。

「ですよねえ。」
奈央子さんが嬉しそうに相槌を打った。


ーそっか。聡兄さんも大人に見えて、やっぱり魔法は使ってみたいものなんだなあ。

しばしそれぞれの思いを馳せる3人。



「陽太君が、眠っている時間は1時間くらいだと思うわ。そろそろ本題に入りましょうか。」
朱音がそう話をきりだしてくれた。

楓は、こくりと頷いた。

「さあ、なんでも話してみて。」

「そうですよー。何でも言っちゃって大丈夫ですよ。」

「はい。実は・・・。」

楓は、この1週間について2人に話し始めた。
















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