ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴

文字の大きさ
75 / 173

75話 ダイちゃん

しおりを挟む
 新しく仲間となった大輝君。
俺たちと同年代ということもあり、呼び名はダイちゃんで固定された。

 うちの配信チャンネルは履修しており、あとは修行の内容というところだけど、料理関係はそれこそ数をこなすのが手っ取り早い。

 その上俺たちなら素材に金がかからないので、修行にはもってこい。
 そんなわけでダンジョンでご一緒しようということになったんだが……

「すいませんが、Aランク以外の同行者はご一緒できない規約なんですよ」

 受付で忠告を受けた。

 どうもダイちゃんはステータスこそAと高いが、探索者ライセンスを取らずに過ごしてきたらしい。

 あの菊池さんが手を焼くわけである。
 あの人も別に探索者というわけではなかったが、貫禄がすごくて堅気に見えないからね。雰囲気で一般人じゃないと見受けられたそうだ。

 でもダイちゃんの場合はいいところのお坊ちゃんのような風貌。
 一眼見てステータスだけ高い一般人だろうと見抜かれていた。

 すると取れる方法は少ない。

 どんな方法を用いるか?
 それはこうするのだ。

「な、なぁポンちゃん。本当に大丈夫なのか?」

「平気だってダイちゃん。戦闘中は実家に戻って、戦闘終わったら呼ぶから」

 答えは菊池さんのお店とうちの屋台にワープポータルを繋いだ、だ。

「いや、そういう心配じゃなくて、法に触れて怒られないかって話で」

「そこは目を瞑ってもらうとして」

「本当に大丈夫なのか? 今から胃がキリキリしてきたぜ」

 メンタルが弱いなぁとは思いつつ、ちゃっかりその恩恵に預かる時点で流されやすいタイプのようだ。

 菊池さんならそれくらいの危ない橋の一つや二つ、余裕で乗り越えてきたんだけど、そいういう教育はしてこなかったらしい。

 これ、安請け合いしちゃったけど相当難儀な依頼じゃないかなぁ?

 そんなわけで一旦家で待機してもらってから連絡。
 そうしたら何故か菊池さんが現れて。

「悪いなぁ、洋一。わざわざ倅の世話を焼いてもらって。そっちの都合も考えずにさ」

「ああ、いえ。これは時間がかかりそうだなと思ったので、直接現場に放り込むのが一番だなって考えったのは俺ですし。それと俺らと同年代でも、事情までは一緒じゃないと思いますので」

「まぁ、確かに。あいつは最近結婚して嫁とそのお腹に第一子もいる。そして今、俺から後を継ぐべく修行中ってわけだ。俺はまだくたばる歳じゃないっていうのに、元気おなうちに教わりたいって必死でさ」

「結婚されてたんですか? そりゃ尚更俺たちと一緒に行動できないじゃないですか!」

 菊池さん曰く、ダイちゃんに現実を見せて諦めてもらう、若しくは菊池さんの完全再現から見方を変えて自分の良さを伸ばしてもらう方向で整えてほしいとのことだ。

 そこは親が教えればいいと思うのだが、普段甘やかしてきたツケが回って完全に舐められてるのだとか。

 普段優しいお父さんを通してたんだろうなぁ。
 今更厳しくできませんでしたというわけか。

「正直、俺たちなんかより、もっと都合のつくお店とかあったでしょうに」

「いや、20軒ツテを回して才能なしのレッテルを貼られて帰ってきて、藁にもすがる気持ちで洋一に頼んでる。どういうことか俺以上に諦めが悪くてさ」

 と、いうことらしい。

 菊池さんと長話を終えたら、入れ替わるようにダイちゃんが現れた。
 どこか申し訳なさそうに、よそよそしく。

「親父、何か言ってた?」

「改めてよろしくってさ」

「そっか、若い才能に任せるって言ってたか」

 言ってないよ? なんだろうか、この人は。
 人の話を聞かないタイプ?

 自分に都合の良いように物事を考えすぎでは?
 なまじ店と繋げたばかりに、途中で来なくなりそう。

 まぁ、その時はその時か。人生相談で菊池さんに相談すればいいし。

 早くもままならない予感を想定しつつも、仕入れたばかりの素材で一品作ってもらう。

 長岡のAランクダンジョンは植物系ダンジョン。
 マンドラゴラとか見つけたので、これは活け〆して富井さんにお土産だ。

 他にもキノコや果物の形をしたモンスターがいて面白い。

 動物系と違って解体が容易で罪悪感もないだろうと思って任せたのだが……

「ワリィ、最初に見本見せてくれるか? 俺に任せるとオリジナリティを発揮する他なくてさ」

「そのオリジナリティを発揮してくれって言ってんだよ、ポンちゃんは。その腕次第で一品任せるつもりだぞ?」

「マジ!?」

 修行という体で引き受けたのもあり、最初は下働き希望かと思ったがそうでもないのかな?

 20軒のお店がどのようにして見込みなしのレッテルを貼ったのかを知るべく、一品作らせた結果。

「ジャジャーン、見てくれ! 世紀の大発見レベルでしょ、これ!」

 それは見事な飾り包丁だった。
 りんごが丸々鶴に化ければそりゃ自慢したくもなるが、食べずらさの極地でもある。

 これをメインに置くセンスは少し俺たちとは違うかもしれない。

「綺麗だけど、食欲をそそるのとは程遠いかな」

「いいから騙されたと思って食ってみろって、飛ぶぞ?」

 ヨッちゃんの忠告をまるっと無視して、食ってみろアピール。

 一口齧ると、中から果汁がジェット噴射で溢れて鶴の首が飛んだ。

 びびって腰を抜かすヨッちゃん。
 それを見ながら腹を抱えて笑うダイちゃん。

 まるで子供がいたずら大成功と喜んでるようにも見える。

 これを各店舗でやったのか。そりゃ追い出されるわ。
 食べ物で遊ぶなってのは飲食店の鉄則なのに。

「とりあえず腕前の程はわかった。ダイちゃんは人が驚く仕掛けをするのが得意なんだね?」

「流石にわかっちゃうか。俺の料理に込めるサプライズを。親父が一品一品に込めるメニューとの巡り合わせを俺でもできないかって考えてここに辿り着いたんだ」

 まさか、菊池さんのメニューとお酒の融合をそう受け取っちゃうか。

 これが料理に今まで触ってこないで育まれた若い感性なのか?

 同年代とは思えないくらいに後先考えてなくて、ちょっと引く。
 俺たちだからいいけど、店だったら素材を台無しにされたって怒られそうだ。

「そうそう、俺は特殊調理系のスキル持ってるからさ、大船に乗った気持ちでいてくれよな。あいにくと、適合食材はまだ見つかんないんだけどさ」

 それを聞いて、ようやく理解した。

 どうして菊池さんがダイちゃんを俺たちに任せたのか。
 しかし生まれながらにA判定の特殊スキル持ち?

 クララちゃんでさえC-だったのに、いきなりAとは?

「俺も詳しくわかんないんだけどさー、実は俺生まれた時に総合ステが低すぎて死にかけだったっぽい。だから両親は未だに過保護でさ。その時に食べた野菜で一命を取り留めたんだけど。高級野菜、知ってる? 八尾青果の野菜。あれのどれかが俺の適合食材だとは思うんだよ。俺を救ってくれた恩人に感謝の言葉を伝えたいんだ」

 なるほど、そういう事か。確かに八尾さんとは知り合いだ。
 けど、八尾さんはダイちゃんをあまり好きにはならなそうだな。

「なるほど。体が弱いのはステータスが低くて耐性が低かったからだと?」

「親父が言うにはな」

「それでAまで育ててもらって今があると?」

「そんな感じ」

 菊池さんが子煩悩になるのもわかるエピソードじゃないか。

 まず最初にご両親に感謝すべきだろうに、ダイちゃんからは親なんだから子供を構って当然みたいに考えてる節がある。

 両親がいない孤児の俺たちに喧嘩売ってるのか?
 口から漏れ出しそうになる恨み節を抑え込みながら、口で言っもて伝わらないなら、料理で黙らせるしかないと俺も一品振る舞った。

「この食材はりんご。だが俺ならこいつがこうなる」

 俺の加工スキルによって、目の前のリンゴがソーセージに変身する。

 そいつを湯の中に入れてボイルした後、網の上で焦げ目をつけてから提供した。
 Sランクの腸だからAランクでも余裕で包まれてくれる。

「これが、ポンちゃんの特殊調理!」

 ダイちゃんは一口食べてから涙を流した。

 美味しくて、じゃない。
 自分と同じ特殊調理系で、どうしてこうも最終系が変わるのか、と言う疑問。
 そして導かれた結論による悔し涙か。

「俺のと決定的に違うな。こんなに不格好なのに、物を言わせぬ旨さが凝縮してやがる」

「ポンちゃんは見た目には拘らないからな。だが、一目見てこれは旨そうだと思わせる技術がある。華々しさとか最初から求めちゃいないんだ。食ってもらうお客さんの笑顔が見たいんだよ。ダイちゃんの場合は見た目の一点特化だろ?」

「確かにそうだ。驚いてもらいたい一心で、味はそっちのけにしちまう。俺の【特殊調理:飾り包丁】はその手の派手なスキルだからな」

「で、オレは思ったわけよ。これ、ポンちゃんの料理の最後の仕上げをダイちゃんが任せればバカウケするんじゃないかって」

「あ!」

 あ、じゃないよ。

 俺の料理を見た目特化で余計に食いづらくしてどうするんだ。
 この時ばかりは、ヨッちゃんは余計なこと言ったなと思った。
しおりを挟む
感想 485

あなたにおすすめの小説

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした

鈴木竜一
ファンタジー
 健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。  しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。  魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ! 【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】  ※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。

処理中です...