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しおりを挟む装飾品に彩られた部屋の中央に、置かれた豪奢なソファー。そこから立ち上がった明臣の姿に、春信は言葉を失う。
「春信!」
明臣が脇目も振らずに、春信に近づく。
「どういうことなんだよ! お前は俺を置いて行くつもりだったのか?」
明臣は怒りを滲ませ、春信に詰め寄る。
「落ち着きたまえ。あんまり騒ぐようなら追い出さざるを得なくなるよ」
清次が間に入り、明臣は不服そうに引き下がる。
「とりあえず、二人共座りたまえ。話はそれからだ」
すでに卓上には珈琲カップが三つ並んでいた。明臣が苛立ったように、ソファーに腰を下ろす。向かいに清次と春信が静かに腰をかける。
居た堪れなさから、春信は明臣の顔を見れずに珈琲が揺れる表面を伏し目がちに見つめる。
「まずは春信君。明臣君を呼んだのは紛れもなくボクだ」
春信は珈琲カップに視線を落としたまま、「どうして」と顔を歪める。これでは清次としても、面倒な事でしかないはずだ。
「君の話を聞いて熟考した。本来であれば、君を縛ってでもここに留めておくのが、ボクにとっての最善でもある。だが、君はそうまでしたってきっと、どうにかして逃げ出そうとするはずだからね」
それに――と清次が明臣に視線を流す。
「明臣君はこの家に一度来ている。火をつけてでも、春信君を連れ出されては困るからね」
「どうして、それを?」
春信は驚いて、やっと顔を上げる。清次は複雑な面持ちで、春信の方を見ていた。
「倉田さんが教えてくれたんだ。不審な郵便配達員がうちの玄関にいたとね。ただ道を聞くなら、玄関の中まで入ってはこないはずだと」
反論の余地もなく、春信は口を閉ざす。
「そうなると次にボクが打つ手は、明臣君に本当のことを話し、手を引いてもらうことだ」
「そんな事出来るわけねーだろ」
明臣が卓上を叩き、身を乗り出す。ビクッと肩を跳ね上げる春信に対し、清次は「ご覧の通りだよ」と冷静に肩を竦める。
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