コスプレ令息 王子を養う

kozzy

文字の大きさ
89 / 225

二人の寝不足な朝

しおりを挟む
いやー、参った参った…

フラヴィオのせいで今朝の僕は喉がガラガラだよ…
それでもなんとか最大の危機だけは回避出来たからよしとしよう。

そう。

フラヴィオが望むエッチでエロエロしい、あーんなセリフやこーんなセリフを言わされる…というアダルトビデオみたいな目に遭う危機だけは。

…そのために秘密をゲロってしまったのはご愛敬だが、僕はフラヴィオを信じてる!

え?そっちかって? そりゃそうでしょ。まだDT卒業したての初心者にあれらのセリフは無理だって…



「流石に言葉がない。供も連れず無防備な状態でカタリーナ姫殿下を街につれだすなど…」

結果…こうして朝っぱらから叱られていた。昨夜は二人とも疲れ果ててあのまま寝ちゃったから…、てへ☆

「何も無かったから良かったようなものの…なんと危険極まりない」
「貴族街の中はチンピラなんか居ませんし、それにこの国の人は敬虔だからシスターに狼藉は働きませんよ」
「だからと言って…」

「言っとくけど反省なんてしませんよ。こうでもしないとカタリーナ様は灰色の青春しか知らないままお嫁入りじゃないですか。そんなの可哀想です」

男のアマーディオと違い、女性の、それも輿入れ前のカタリーナ様には何一つ自由がない…。
こちらでもあちらでも、ただただ城の中に飾られるだけのドールで居るしかないなんて…頭のいいカタリーナ様にはあまりにも気の毒だ。
彼女はどこか、前世ならバリキャリを目指しそうな雰囲気があるのに。

「カタリーナ様は来年には輿入れなんですよ!」

それも侍女一人連れて行けないという話しだ…。ぜーんぶ隣国で揃えるんだって。あちらに早く馴染むために。

あちらの国はカタリーナ様のために何もかも最高級品で揃え、万全の状態でお迎えしてくれるらしいけど…それでもサルディーニャのモノを持ち込むことだけは許してくれなかったんだって。ヒドイ話だよ…

「国同士の婚姻とはそういうものだよイヴ。王女とは身一つで赴きその国への恭順を示すものなのだよ」

「マジあり得ないから」

右も左もわからないアウェイな場所で頼れる人が誰も居ないなんて…どれほど心細いだろう。

「それでもカタリーナ様は全て受け入れようとしてる。だからせめて…せめて楽しい想い出くらいたくさん作ってあげたいじゃん!」

「…君は優しい人だ。イヴ、せめて次に何かをするときは私にも事前に知らせてくれると嬉しいよ」

「止めないって約束するならそうします」
「…止めたくとも君は止められないだろう?…いいとも約束しよう」

「フラヴィオ…」キュン

と言うことで、フラヴィオのリクエストにお応えしてネクストイベントを告知することにした。

「ってことでカタリーナ様にルイージ君のお供、以外の勉強時間をプレゼントしようと思ってて。ナイショですよ?」

「どうするのだい?」

「今度はそれほど無理しないです。輿入れ先の文学をより詳しく学ぶ、っていう名目でヴィットーレ先生に参殿してもらって講義内容をこっそり難解なのに変えてもらうだけです」

ヴィットーレは国語の講師だ。学院では主に文学、古典を中心に教えている。が、この国で講師となるには大学に進む必要がある。

ここで言う大学とは、より高度で専門的な学問を身に付けたい勉強好きな人だけが、高いお金をだしてまで進む非常に真面目な教育機関を指している。当然サークル活動もコンパもない。

そこでは文法や修辞と言う言語学や論理学、数学や幾何学、科学全般の他に、より高度な知識を要する医学や法学…といった専門科目を学ぶことができる。

つまりヴィットーレは国語の分野以外も少しくらいなら教授できるということだ。それこそカタリーナ様の望むままに…

「彼は侯爵家の生まれだったね」
「コレッティ家ほどの序列じゃないですけど出仕は十分可能ですよ」
「それならば問題無いだろう。存分力になってやりなさい」

「はーい」

ということで昨日のメモはヴィットーレを夕食に招待するカード代わりだ。二、三日中に返事は来るだろう。
さて…鴨とは言えこれもカタリーナ様のため。何を作ってもてなそうか…




-----------------------




まったくイヴの破天荒ぶりにも困ったものだ。まさか姫殿下を市中へお連れするなど…
幸いセルジオ殿が護衛を引き受けてくれたから良いものの、イヴは安全の確保など考えても居なかったのだろう。
私はイヴのその無邪気さをとても好ましいと思っているが、それにしても無謀が過ぎる…

だが、イヴが姫殿下を可哀想と思う、その気持ちは私にも痛いほど理解できる。

幸いにして私は姫ほど頑なに護られた立場ではなかったが…それでも母と住む第四宮だけが私に許された自由で…望めば何でも手に入るようで、その実〝王家” という楔に囚われ何一つ一人では決められない、それが我々直系王族の重し。
ましてや女性であるカタリーナ姫殿下であれば尚の事だ。

「せめて楽しい思い出くらい…!」

まったくその通りだ。

アスタリアの第四宮でそれなりに楽しく暮らしていたつもりの私でさえ、このサルディーニャで一伯爵ビアジョッティとなってからの暮らしを満ち足りていると、そう感じるのだから。
もっともこの充足はイヴが与えてくれたものだが…、同じようにカタリーナ姫殿下にとってもイヴがひと時の彩りとなることだろう。


その姫殿下の厚意により可能となったのがルイージの統治教育だ。

ここサルディーニャや隣国ブルボンでは女性が多くの、特に政治的な知識をつけることに対し不要と考える向きがある。
これは我がアスタリアと大きく異なる慣習である。

それは同じ王政の国であっても、我がアスタリアには女王の存在した歴史があり、ここサルディーニャやブルボンにはそれがない、というのが大きいのだろう。

そんな中にあり、姫殿下は学への渇望が溢れんばかりだとルイージからは聞き及んでいる。時に殿下方の邪魔をしてはならぬと、講師から制止が入るほどなのだと。

「カタリーナ様はとても知的なお方です。オペラやダンスの話にしか興味のない令嬢方と違いまるで母や姉と居るようで…話していてとても落ち着きます」

「実に惜しいことだね。彼女ならアレクサ様のように、夫と共に意見を交しより良き統治を支える賢夫人になれたものを」

そんな会話が思い出される。

イヴの贈り物となる学びの時間。果たしてそれがブルボン王国で生かされるかどうか…

きっとそうはならぬのだろう。それでも…
それが彼女をどんな苦難からも支える礎になることを、私は願ってやまない。








しおりを挟む
感想 609

あなたにおすすめの小説

[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない? ☆表紙絵 AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?

綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
「エステファニア・サラ・メレンデス――お前との婚約を破棄する」 婚約者であるクラウディオ王太子に、王妃の生誕祝いの夜会で言い渡された私。愛しているわけでもない男に婚約破棄され、断罪されるが……残念ですけど、私と結婚しない王太子殿下に価値はありませんのよ? 何を勘違いしたのか、淫らな恰好の女を伴った元婚約者の暴挙は彼自身へ跳ね返った。 ざまぁ要素あり。溺愛される主人公が無事婚約破棄を乗り越えて幸せを掴むお話。 表紙イラスト:リルドア様(https://coconala.com/users/791723) 【完結】本編63話+外伝11話、2021/01/19 【複数掲載】アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアップ+ 2021/12  異世界恋愛小説コンテスト 一次審査通過 2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過

婚約破棄された婚活オメガの憂鬱な日々

月歌(ツキウタ)
BL
運命の番と巡り合う確率はとても低い。なのに、俺の婚約者のアルファが運命の番と巡り合ってしまった。運命の番が出逢った場合、二人が結ばれる措置として婚約破棄や離婚することが認められている。これは国の法律で、婚約破棄または離婚された人物には一生一人で生きていけるだけの年金が支給される。ただし、運命の番となった二人に関わることは一生禁じられ、破れば投獄されることも。 俺は年金をもらい実家暮らししている。だが、一人で暮らすのは辛いので婚活を始めることにした。

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る

竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。 子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。 ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。 神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。 公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。 それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。 だが、王子は知らない。 アレンにも王位継承権があることを。 従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!? *誤字報告ありがとうございます! *カエサル=プレート 修正しました。

キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中
BL
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。 ボクの名前は、クリストファー。 突然だけど、ボクには前世の記憶がある。 ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て 「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」 と思い出したのだ。 あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。 そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの! そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ! しかも、モブ。 繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ! ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。 どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ! ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。 その理由の第一は、ビジュアル! 夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。 涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!! イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー! ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ! 当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。 ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた! そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。 でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。 ジルベスターは優しい人なんだって。 あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの! なのに誰もそれを理解しようとしなかった。 そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!! ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。 なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。 でも何をしてもジルベスターは断罪された。 ボクはこの世界で大声で叫ぶ。 ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ! ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ! 最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ! ⭐︎⭐︎⭐︎ ご拝読頂きありがとうございます! コメント、エール、いいねお待ちしております♡ 「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中! 連載続いておりますので、そちらもぜひ♡

処理中です...