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二人で対策会議
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服飾サロンへ出向いていたイヴは私よりも先に戻っており、いつものようにエルモを従え湯気の上がる厨房に居た。
「おや?リコはどうしたのだい?」
「えっと、今二階でロデじいにルイージ君の着替えを教えてもらってます」
「ああなるほど」
イヴは成長めざましいリコを従僕にと考えているようだ。気の早い彼はすでにお仕着せまで着用させている。
従僕とは美醜を問われるものだがリコであれば申し分ないだろう。後はその成長を待つばかりだが、彼によれば父親の上背は高いという。あと数年もすれば見栄えの良い青年へと近づくはずだ。
平民位の彼ら兄弟は身の回りのことを自らで行うのは当然のことと考えている。そして使用人の居ないこの屋敷では私もイヴもそれぞれ着替えなどは自ら行っていた。
が…本来高貴なる者は着替えすら自身の手ではしないものだ。アマーディオ殿下やあの公爵子息なども当然そうだろう。
現在いずれは王位につくべきルイージの着替えや湯浴みはロデオが一手に引き受けている。
だがイヴはリコに対して〝ダリオの稽古相手” と言う名目ですでに剣術も覚えさせている。
…その双眸はどれほど先までを見据えているのか。恐らくイヴはリコをルイージの世話係としてだけでなくその身を護る護衛たれ、と考えているのだろう。
「エルモ、それ一口大のボール状にしてトマトソースの中に放り込んでくれる?」
「はいイヴ様」
イヴは調理が得意である。彼は少しばかり収益を得始めた今でもこうして、庶民街で安価なくず肉を買い入れている。そうして貴族層が好む塊肉に負けないほどの美味なる一品を仕上げている。
イヴはそれらを使ったレシピもパニーニ同様、屋台の店主に惜しげなく授けていた。店主はそれにポルペッタと名付け、今ではパニーニと並んでメルカートの名物料理となっている。
「意匠のようにギルドへ登録しないのかい」と聞いたことがある。が、彼は「僕はレイヤーとしての誇りがありますから。ご飯のレシピでは稼ぎません」と主張していた。
「イヴが作っているそちらの器は何だい?」
「アンチョビが手に入ったんでバーニャカウダにしようと思って。野菜スティックのディップですよ」
「いつものことだがイヴの料理は野菜が多いのだね」
「貴族が野菜食べなさすぎるんですって。肉ばっかだと身体が酸化しますよ。美と健康にはビタミンとミネラルが必須です」
病院で覚えるのだろうか?彼はこうして、わたしの耳には馴染みのない医療用語を時折口にすることがある。まさにこの知識によって公爵子息をアスタリアへと追いやったのだから侮れない。
ああ…私はこの時間がとても好きだ。
湯気と食欲をそそる香ばしい匂いの中イヴの笑い声や鼻歌が響く。たわいもない幸福な時間。手を伸ばせば簡単に触れられる手狭な距離…
「そうだイヴ、食事のあと大切な話があるのだが」
「あっフラヴィオ、ご飯のあと話があるんだけど」
「ふふ」
「ハモったね…」テレテレ
私たちもずいぶん肝胆相照らす仲になったものだ。
----------------------
食後の本題。僕とフラヴィオは互いに同じような噂を耳にしていた。
「ええっ!じゃああのトリオ演奏で?」
「そのようだね…」
「僕が聞いたのはコレッティ家の囲い込みだって…」
「ああもちろんそうだろう。私は次兄殿の結婚に横やりが入らねばいいとそう懸念していたのだが…まさか身の上に降りかかるとはね」
「お兄様は幼馴染と十年越しのラブラブで両親もお気に入りの相手らしいのでそんなことしたら逆に恨みを買いますよ」
フラヴィオがマリオ氏から聞いた話では、そのチチなんたらというシステムは、言うてなかなか成立が難しいらしい。
大抵の場合は奥さん側かBL妻側のどちらかに我慢を強いることになるのだとか。ウハウハなのは夫だけ、ってね。趣味人を気取るため受け入れてる風には装うらしいけど。
ところが僕たち三人の場合こうだ。
社交界での扱いが〝危険触るな” になってる僕を何故かカタリーナ様は気に入ってて、尚且つ狂犬イヴァーノもカタリーナ様の前では借りてきたネコで(ゲームのイヴァーノも王家には敬意を払ってたよ)、加えてイヴァーノは美形の夫に骨抜きで、そのうえフラヴィオはイヴァーノを手懐けアマーディオ、パンクラツィオが認めるほどのイケメン人格者だ。
アイコンタクトを交わしながらチームワーク良く奏でる16ビートの国歌…
まさに非の打ち所の無いお手本のような三人夫婦の姿じゃないか。
ガクリ…「んなバカな…。誤解にしたってもっと他にあるでしょーが!」
「怒っても仕方あるまい。イヴ、噂などそんなものだ。はじめは小さな軽口だったのだろうが…」
「時間とともに尾ひれも背びれも付いてホントみたいに言われるわけね」
コワ…
「なんにしても噂の域は出てないんだよね?」
「それは私が君に聞きたいことだ。姫殿下は何と?」
「それらしい影も形もありませんよ」
「それは良かった…」
「良くない。水面下で進んでる、ってことは無いよね?」
「どうだろうか…、王は姫の希望を尊重される意向のようだが…」
「カタリーナ様の意向…」
カタリーナ様がフラヴィオのお嫁さん…など望むだろうか?いいや、それはない。カタリーナ様とフラヴィオに先日のダンス以上の接点はないし、そもそもカタリーナ様からフラヴィオのフの字さえ話題にあがったことは無い。カタリーナ様が好きなのはエヴァとイヴァーノで…
はっ!イヴァーノと家族になりたい!なんてことを考えてたりして…タラリ…
って、イヤイヤ、ゆうてもイヴァーノでしょ?カタリーナ様も王家もそんなこと絶対考えてないって。
だってアマーディオはゲームでもイヴァーノをずっと避けてたのによりにもよって義弟にするかぁ?しないって。
大体パンキーとも親戚になっちゃうじゃん。接近禁止令はどうなんの?無理だって。
「砂上の楼閣ですよ。ふっ、なにしろ相手は狂犬イヴァーノですからね」
自分で言ってて悲しいけど…
「では放っておくと?君は気にならないのだね」
「気にしたらその噂消えますか?消えないでしょ?実害あるなら黙ってないけど…害あります?」
「実害…いやだが…」
「フラヴィオは気になるんですか?」
「そうだね。畏れ多いというか…、いや、それ以上にイヴ、たとえ噂でも私の大切な君を第二夫人などと…彼らの軽口は私にとって承服しかねる」
「フラヴィオ…」ジーン…
ああ!僕ってば愛されてるっ!
ニコニコ「分りました。じゃあその件は僕が対処します」ニコニコ
「君が?」
「はい。近日中に消しますから待っててくださいね」ニッコリ
「そんなことが出来るのだろうか?」
「ちょっと思いついた手があるんで…大丈夫です」
「ではそれを待とう」
「あっ、フラヴィオ…ロデじいに今夜は僕とフラヴィオ最後に入るからって伝えて来て」
「それは…湯浴みのことだね」
「……」テレテレ
「ふふ、伝えてこよう。楽しみだ」
以心伝心。何をするかは想像にお任せします…
「おや?リコはどうしたのだい?」
「えっと、今二階でロデじいにルイージ君の着替えを教えてもらってます」
「ああなるほど」
イヴは成長めざましいリコを従僕にと考えているようだ。気の早い彼はすでにお仕着せまで着用させている。
従僕とは美醜を問われるものだがリコであれば申し分ないだろう。後はその成長を待つばかりだが、彼によれば父親の上背は高いという。あと数年もすれば見栄えの良い青年へと近づくはずだ。
平民位の彼ら兄弟は身の回りのことを自らで行うのは当然のことと考えている。そして使用人の居ないこの屋敷では私もイヴもそれぞれ着替えなどは自ら行っていた。
が…本来高貴なる者は着替えすら自身の手ではしないものだ。アマーディオ殿下やあの公爵子息なども当然そうだろう。
現在いずれは王位につくべきルイージの着替えや湯浴みはロデオが一手に引き受けている。
だがイヴはリコに対して〝ダリオの稽古相手” と言う名目ですでに剣術も覚えさせている。
…その双眸はどれほど先までを見据えているのか。恐らくイヴはリコをルイージの世話係としてだけでなくその身を護る護衛たれ、と考えているのだろう。
「エルモ、それ一口大のボール状にしてトマトソースの中に放り込んでくれる?」
「はいイヴ様」
イヴは調理が得意である。彼は少しばかり収益を得始めた今でもこうして、庶民街で安価なくず肉を買い入れている。そうして貴族層が好む塊肉に負けないほどの美味なる一品を仕上げている。
イヴはそれらを使ったレシピもパニーニ同様、屋台の店主に惜しげなく授けていた。店主はそれにポルペッタと名付け、今ではパニーニと並んでメルカートの名物料理となっている。
「意匠のようにギルドへ登録しないのかい」と聞いたことがある。が、彼は「僕はレイヤーとしての誇りがありますから。ご飯のレシピでは稼ぎません」と主張していた。
「イヴが作っているそちらの器は何だい?」
「アンチョビが手に入ったんでバーニャカウダにしようと思って。野菜スティックのディップですよ」
「いつものことだがイヴの料理は野菜が多いのだね」
「貴族が野菜食べなさすぎるんですって。肉ばっかだと身体が酸化しますよ。美と健康にはビタミンとミネラルが必須です」
病院で覚えるのだろうか?彼はこうして、わたしの耳には馴染みのない医療用語を時折口にすることがある。まさにこの知識によって公爵子息をアスタリアへと追いやったのだから侮れない。
ああ…私はこの時間がとても好きだ。
湯気と食欲をそそる香ばしい匂いの中イヴの笑い声や鼻歌が響く。たわいもない幸福な時間。手を伸ばせば簡単に触れられる手狭な距離…
「そうだイヴ、食事のあと大切な話があるのだが」
「あっフラヴィオ、ご飯のあと話があるんだけど」
「ふふ」
「ハモったね…」テレテレ
私たちもずいぶん肝胆相照らす仲になったものだ。
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食後の本題。僕とフラヴィオは互いに同じような噂を耳にしていた。
「ええっ!じゃああのトリオ演奏で?」
「そのようだね…」
「僕が聞いたのはコレッティ家の囲い込みだって…」
「ああもちろんそうだろう。私は次兄殿の結婚に横やりが入らねばいいとそう懸念していたのだが…まさか身の上に降りかかるとはね」
「お兄様は幼馴染と十年越しのラブラブで両親もお気に入りの相手らしいのでそんなことしたら逆に恨みを買いますよ」
フラヴィオがマリオ氏から聞いた話では、そのチチなんたらというシステムは、言うてなかなか成立が難しいらしい。
大抵の場合は奥さん側かBL妻側のどちらかに我慢を強いることになるのだとか。ウハウハなのは夫だけ、ってね。趣味人を気取るため受け入れてる風には装うらしいけど。
ところが僕たち三人の場合こうだ。
社交界での扱いが〝危険触るな” になってる僕を何故かカタリーナ様は気に入ってて、尚且つ狂犬イヴァーノもカタリーナ様の前では借りてきたネコで(ゲームのイヴァーノも王家には敬意を払ってたよ)、加えてイヴァーノは美形の夫に骨抜きで、そのうえフラヴィオはイヴァーノを手懐けアマーディオ、パンクラツィオが認めるほどのイケメン人格者だ。
アイコンタクトを交わしながらチームワーク良く奏でる16ビートの国歌…
まさに非の打ち所の無いお手本のような三人夫婦の姿じゃないか。
ガクリ…「んなバカな…。誤解にしたってもっと他にあるでしょーが!」
「怒っても仕方あるまい。イヴ、噂などそんなものだ。はじめは小さな軽口だったのだろうが…」
「時間とともに尾ひれも背びれも付いてホントみたいに言われるわけね」
コワ…
「なんにしても噂の域は出てないんだよね?」
「それは私が君に聞きたいことだ。姫殿下は何と?」
「それらしい影も形もありませんよ」
「それは良かった…」
「良くない。水面下で進んでる、ってことは無いよね?」
「どうだろうか…、王は姫の希望を尊重される意向のようだが…」
「カタリーナ様の意向…」
カタリーナ様がフラヴィオのお嫁さん…など望むだろうか?いいや、それはない。カタリーナ様とフラヴィオに先日のダンス以上の接点はないし、そもそもカタリーナ様からフラヴィオのフの字さえ話題にあがったことは無い。カタリーナ様が好きなのはエヴァとイヴァーノで…
はっ!イヴァーノと家族になりたい!なんてことを考えてたりして…タラリ…
って、イヤイヤ、ゆうてもイヴァーノでしょ?カタリーナ様も王家もそんなこと絶対考えてないって。
だってアマーディオはゲームでもイヴァーノをずっと避けてたのによりにもよって義弟にするかぁ?しないって。
大体パンキーとも親戚になっちゃうじゃん。接近禁止令はどうなんの?無理だって。
「砂上の楼閣ですよ。ふっ、なにしろ相手は狂犬イヴァーノですからね」
自分で言ってて悲しいけど…
「では放っておくと?君は気にならないのだね」
「気にしたらその噂消えますか?消えないでしょ?実害あるなら黙ってないけど…害あります?」
「実害…いやだが…」
「フラヴィオは気になるんですか?」
「そうだね。畏れ多いというか…、いや、それ以上にイヴ、たとえ噂でも私の大切な君を第二夫人などと…彼らの軽口は私にとって承服しかねる」
「フラヴィオ…」ジーン…
ああ!僕ってば愛されてるっ!
ニコニコ「分りました。じゃあその件は僕が対処します」ニコニコ
「君が?」
「はい。近日中に消しますから待っててくださいね」ニッコリ
「そんなことが出来るのだろうか?」
「ちょっと思いついた手があるんで…大丈夫です」
「ではそれを待とう」
「あっ、フラヴィオ…ロデじいに今夜は僕とフラヴィオ最後に入るからって伝えて来て」
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「……」テレテレ
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⭐︎⭐︎⭐︎
ご拝読頂きありがとうございます!
コメント、エール、いいねお待ちしております♡
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