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悪魔に魅入られた夜会
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「いらっしゃいエヴァさぁ~ん、これどうですかぁ?似合う?」
「…わー似合うー(棒)」
「なんかぁ…ごめんねぇ?僕だけ貴族になっちゃってぇ」
「いーえぇ、あれだけ貴族生活は窮屈とか覚えること多くて面倒だとか言ってるの見てたら全然羨ましくないし」
心からの本心である。異世界に来た当初の僕が、社交界を出禁になってる事実にどれ程歓喜したか!
「またまたぁ。だって見てこのブラウス。シルクがふんだんに使われてるの!エヴァさんの安っぽい制服と大違い!」
「制服なんてそんなもんです」
「強がりばっかり。ふふん、いいでしょぉ~」
「別に」
ザブザブ洗えてすぐ乾く!現場の制服に求めるものなどその程度だ。
二コラが着ているのは受け男用の貴族服である。前身ごろが全力でビラビラしたブラウスに淡いピンクのベスト、白のジャケットを羽織っている。
これは以前からあるありきたりな受け服で、コレッティの夜会で僕が着用した、あのゴスロリ風味を隠し味にしたちょっと二次元っぽいオシャレな受け服の足元にも及んでいない。
パンクラツィオが不在の間、事あるごとに、やれマナーが面倒だの貴族の名前と序列が覚えられないだのと、散々泣きついてきた殊勝さなどどこへやら、虎の威を取り戻したニコラはエヴァに対してようやく得られた優越感をひけらかしていた。
「それに聞いてた?みんな僕のことニコラ様、だって。エヴァさんも名前で呼ばせてあげましょうかぁ?ニコラ様、ってぇ」
プク「……」
別にコバエ程度、相手にする気もならないが…だー!鬱陶しいことこのうえない!
やれやれ、ちょっと本気だすか…
僕はトイレに中座すると、用意してきたもう一着のナース服へと静かに手を伸ばした…
ホールの一角に用意された衝立の脇がナースエヴァの待機場である。
「まさかここで会えるなんて思わなかったよ!」
「今日の制服新しいのだね?よく似合うよ!」
「なんでもビッグなゲストが来るんですって。それで呼ばれたの。みんなに会えて嬉しいナ☆」バチコン
「ほわぁぁぁ…」
「え、エヴァちゃん…」
衝立付近で待機するエヴァに気付けばあっという間に人だかりは形成される、その間約三分と言ったところか…
下位貴族のエヴァちゃんファン率は非常に高い。ここにいるのも確率的に当たり前である。
彼らは今まで病院で見たことのない新しいナース服に興奮気味だ。なにしろひざ丈。ひざのチラ見えとか…この世界ではかなり攻め込んだファッションだからね。けどひざ小僧に萌えを感じるのは萌え豚も腐女子も共通である。
そう…これは今までのナース服から更に冒険した進化版だ!
ナースの潔癖さを表した窮屈なつめ襟はバッサリ切り落とし、首元は丸首に角の丸い襟をつけたナースの優しさを強調したデザインになっている。
そしてスカート丈はついにひざ丈へ。そもそも白タイツはいてるんだから別にいいじゃん!
千里の道も一歩から。僕は絶対領域開放までの、こうした小さな努力を怠らない。
紺地になったワンピースには真っ白なエプロンが良く映え、ベレー帽みたいな新しいナースキャップとおさげはエヴァの萌え萌えな可愛さをさらに爆上げしている。
「ご、ご婦人の皆さま!パートナーが他の女に現を抜かしてますよ!いいんですか!」
「ニコラ様の仰る通りよ。あれが噂のエバ…いやだわ膝など見せてはしたない!」
ニコラのご立腹はもっともである。だが甘いな。真のアイドルとは性別問わず人を惹きつけるものなのでアール!見るがいい!
「で、でもなんて可愛らしいの…」
「あのメイク…どうしているのかしら?」
「いい香り…どこで買ったのか聞いてみたいわ」
フラフラと集まる若い女性を!
ここでダメ押し。
「はーい、ちゅうもーく!これからイヴァーノ・モードのヘアリボン配布会を行いまーす!限定二十五名です!」
「何ですって!」
「あのリボンは私のものよ!」
「ちょ、ちょっと!皆さま!」
はい!ご夫人方も入れ食いっと!
ププ…ごめんねニコラ?気が付けばお手渡し会開催のテーブル前には大行列、ホールの中央に人はほとんど残ってない。
だって…仕方ないじゃん?僕は販促チャンスを逃さない男だ。
実は急遽、衣装用カバンの中に入れっぱなしになっていた、コレッティ家の夜会で配った巻き薔薇リボンの余り(チラシ付き)を配ってしまおうと考えたのだ。
「ねぇエヴァちゃん、そのアイラインはどうやって…」
「ちょっとどいて下さらない!あなた、その香水どこのもの?」
「邪魔よ!エヴァちゃん、その帽子とっても可愛いわ!」
「僕はどこへも行きませんからちゃんと並んでくださいね☆」
「はぁーい!」
これだよ。
「う…うぇ…もうメチャクチャ…」
「こ、これは一体…」
「マルティノさまぁ…」
「くっ!なんたることだ!」
「そうですよねぇ?彼女叱ってください!」
「許せない!」
「そうでしょぉ?あんなことして…これは僕の夜会なんだからぁ!」
「お前たち!エヴァさんを呼んだのは私だ!誰が許可も無く勝手に近づいていいと言った!」
「マルティノォ!おまえかぁ!」ドガッ!
「ニ、ニコラっ、やめ」
なんか一角で修羅場発生…
すまんね、恨むなら僕をここへ呼んだマルティノを好きなだけ恨むがいい。
そんなことより早く待機列を捌かないと…
「えぇっと…バラのリボンには限りがあって…女性にお譲りください。その代わり男性には…これあげますね」コロン
ポケットに入ってたのど飴(お手製)である。
「もしかして手作り?食べられないよエヴァちゃ~ん」
「カビるから食べちゃってね。それよりその衣装良くお似合いですよ?イヴァーノ・モードですか?」
「そうだよ~。割引券が届いたから、いやなに、ゴホン、エヴァちゃんに会えるなら新調して来て正解だったよ」
「すっごくダンディ!大人の男って感じ!」ニィィィッコリ
「わ、私の衣装はどうかな?これもイヴァーノ・モードだよ!」
「何を言う!私はさらにそれを家の針子にアレンジさせたのだ。なかなか良いだろう?」
「皆さん素敵です!さすがイヴァーノ・モード!」
これくらいアピっとけばいいかな?
ざっと見渡すに男性客のほぼ全員がダークカラーの装い。
現在社交界の男性ファッションはイヴァーノにより煌びやかなキラキラカラーから黒、紺、グレーを基調とした落ち着きのあるダンディズムへと変貌を見せ始めている。
このサルディーニャダンディズムにおける必須要素は粋であることと後は…そう、大人の色気だ!
そして大人の色気とは…引き算の中にこそある!男も女もね!
従来型の無駄な装飾を取り除き…重視されるのは上質な素材と洗練されたシルエット。
機能美を上乗せしたそれは、僕の提案によってパンタロンと呼ばれる貴族の昼間服を夜間の社交服へと押し上げ始めている。
こうなってくるとかなり現在のスーツに近い。だがスーツと一口に言ってもアルマーニと紳士服の青〇では雲泥の差だ。彼らのスーツがどっちかは…言うまでもないよね?
チリンチリンチリン…
鳴り響くベルの音。これは…?
「タランティーノ公爵家パンクラツィオ様、ご到着でございます!」
高らかに声をあげるカポーネ家の執事。ついにきた再会の時!いざ尋常に勝負!
エヴァだけど…
「…わー似合うー(棒)」
「なんかぁ…ごめんねぇ?僕だけ貴族になっちゃってぇ」
「いーえぇ、あれだけ貴族生活は窮屈とか覚えること多くて面倒だとか言ってるの見てたら全然羨ましくないし」
心からの本心である。異世界に来た当初の僕が、社交界を出禁になってる事実にどれ程歓喜したか!
「またまたぁ。だって見てこのブラウス。シルクがふんだんに使われてるの!エヴァさんの安っぽい制服と大違い!」
「制服なんてそんなもんです」
「強がりばっかり。ふふん、いいでしょぉ~」
「別に」
ザブザブ洗えてすぐ乾く!現場の制服に求めるものなどその程度だ。
二コラが着ているのは受け男用の貴族服である。前身ごろが全力でビラビラしたブラウスに淡いピンクのベスト、白のジャケットを羽織っている。
これは以前からあるありきたりな受け服で、コレッティの夜会で僕が着用した、あのゴスロリ風味を隠し味にしたちょっと二次元っぽいオシャレな受け服の足元にも及んでいない。
パンクラツィオが不在の間、事あるごとに、やれマナーが面倒だの貴族の名前と序列が覚えられないだのと、散々泣きついてきた殊勝さなどどこへやら、虎の威を取り戻したニコラはエヴァに対してようやく得られた優越感をひけらかしていた。
「それに聞いてた?みんな僕のことニコラ様、だって。エヴァさんも名前で呼ばせてあげましょうかぁ?ニコラ様、ってぇ」
プク「……」
別にコバエ程度、相手にする気もならないが…だー!鬱陶しいことこのうえない!
やれやれ、ちょっと本気だすか…
僕はトイレに中座すると、用意してきたもう一着のナース服へと静かに手を伸ばした…
ホールの一角に用意された衝立の脇がナースエヴァの待機場である。
「まさかここで会えるなんて思わなかったよ!」
「今日の制服新しいのだね?よく似合うよ!」
「なんでもビッグなゲストが来るんですって。それで呼ばれたの。みんなに会えて嬉しいナ☆」バチコン
「ほわぁぁぁ…」
「え、エヴァちゃん…」
衝立付近で待機するエヴァに気付けばあっという間に人だかりは形成される、その間約三分と言ったところか…
下位貴族のエヴァちゃんファン率は非常に高い。ここにいるのも確率的に当たり前である。
彼らは今まで病院で見たことのない新しいナース服に興奮気味だ。なにしろひざ丈。ひざのチラ見えとか…この世界ではかなり攻め込んだファッションだからね。けどひざ小僧に萌えを感じるのは萌え豚も腐女子も共通である。
そう…これは今までのナース服から更に冒険した進化版だ!
ナースの潔癖さを表した窮屈なつめ襟はバッサリ切り落とし、首元は丸首に角の丸い襟をつけたナースの優しさを強調したデザインになっている。
そしてスカート丈はついにひざ丈へ。そもそも白タイツはいてるんだから別にいいじゃん!
千里の道も一歩から。僕は絶対領域開放までの、こうした小さな努力を怠らない。
紺地になったワンピースには真っ白なエプロンが良く映え、ベレー帽みたいな新しいナースキャップとおさげはエヴァの萌え萌えな可愛さをさらに爆上げしている。
「ご、ご婦人の皆さま!パートナーが他の女に現を抜かしてますよ!いいんですか!」
「ニコラ様の仰る通りよ。あれが噂のエバ…いやだわ膝など見せてはしたない!」
ニコラのご立腹はもっともである。だが甘いな。真のアイドルとは性別問わず人を惹きつけるものなのでアール!見るがいい!
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「あのメイク…どうしているのかしら?」
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「はーい、ちゅうもーく!これからイヴァーノ・モードのヘアリボン配布会を行いまーす!限定二十五名です!」
「何ですって!」
「あのリボンは私のものよ!」
「ちょ、ちょっと!皆さま!」
はい!ご夫人方も入れ食いっと!
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だって…仕方ないじゃん?僕は販促チャンスを逃さない男だ。
実は急遽、衣装用カバンの中に入れっぱなしになっていた、コレッティ家の夜会で配った巻き薔薇リボンの余り(チラシ付き)を配ってしまおうと考えたのだ。
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「はぁーい!」
これだよ。
「う…うぇ…もうメチャクチャ…」
「こ、これは一体…」
「マルティノさまぁ…」
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「許せない!」
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そして大人の色気とは…引き算の中にこそある!男も女もね!
従来型の無駄な装飾を取り除き…重視されるのは上質な素材と洗練されたシルエット。
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こうなってくるとかなり現在のスーツに近い。だがスーツと一口に言ってもアルマーニと紳士服の青〇では雲泥の差だ。彼らのスーツがどっちかは…言うまでもないよね?
チリンチリンチリン…
鳴り響くベルの音。これは…?
「タランティーノ公爵家パンクラツィオ様、ご到着でございます!」
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エヴァだけど…
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