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【番外編1・前編】公爵邸の愛娘、王様と兄の実母に出会う
作戦会議
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「最悪の場合は興奮状態に陥り、錯乱していたかもしれん……」
「そしたら、どうなるの?」
「人々から恐れられる。安全を脅かされることもあるだろうな」
「だ、駄目だよ……! そんなの! ぜったい、止めなくちゃ!」
被害を最小限に留められてよかったと喜ぶ暇など、今の自分たちにはない。
兄の母親をどうにかしなければ、ジュロドとルティアーナは一生苦しむことになるのだ。
憤慨した様子を見せる愛娘を優しい瞳で見つめ、ジェナロは静かに告げる。
「ああ。そのためには、ハリスドロア公爵家に手を出したらどうなるか……。貴族の奴らにも、徹底的に叩き込まなければならない」
「どうやって?」
「俺にいい案がある」
「ほんと!?」
「ああ。だが、これは2人にとても負担のかかる作戦だ。同意を得られなければ……難しいだろうな」
今回の事件の当事者は、ロルティではなくルティアーナとジュロドだ。
外野であるジェナロと幼子がどれほど作戦を企てたとしても、親子が難色を示すのであれば計画遂行は不可能だった。
(だいぶ顔色はよくなったけど……。もっと、癒やしの力を使わなきゃ駄目かなぁ……?)
聖女は父親とともに、2人の目覚めを待ち続ける。
すると――ようやく、その時がやってきた。
「ロル、ティ……」
「旦那様……」
母親と兄が、同時に目覚めたのだ。
ロルティは満面の笑みを浮かべ、2人に勢いよく飛びつく。
「おかあしゃま! おにいしゃま!」
「心配をかけて、ごめんなさい……」
「体調は? 平気?」
「うん。だいぶ、落ち着いたよ」
母と兄は優しく口元を綻ばせて声を発する。
ロルティが聖なる力を使ったからか、疲弊の色は見られなかった。
(よかった……。おかあしゃまとおにいしゃまが、ちょっとでも元気になれて……)
幼子がほっと胸を撫で下ろせば、家族の姿を静か見つめるジェナロが口を開く。
「さっそくなんだが、2人に聞いてほしいことがある」
「あのね! おとうしゃまが、作戦! 考えてくれたの!」
「殿下のことね……」
「ああ」
先程まで優しい笑みを浮かべていたルティアーナの表情が、不自然に曇る。
(おかあしゃまとおにいしゃまには、いつだって笑っていてほしいのに……)
ロルティは悲しい気持ちになりつつある自分の感情をぐっと押さえつけると、父親とともに2人の説得に奔走した。
「あの女とハリスドロア家はすでに、縁が切れている。しかし、しつこくこのあたりをうろつくのであれば――公衆の面前で、罰を与えなければならん」
「家族みんなで協力したら、悪い奴なんてイチコロだよ!」
幼子の口にした単語は、自分以外の家族には馴染みのない言葉であったようだ。
「ふふ。ロルティは、面白い言葉を発するんだね」
「ええ。本当に……」
難しい表情をしていた2人が、優しく口元を綻ばせる。
狙って行ったわけではないが、これはこれで大成功と言ってもいいだろう。
ロルティは彼らに向かって、こてりと首を傾げて問いかけた。
「少し、元気出た?」
「そうね……」
「うん。妹の笑顔は、僕たちの気分を上昇させる栄養剤みたいなものだから」
「えへへ。よかったー!」
ようやくルティアーナとジュロドにも、微笑みを浮かべる余裕ができたようだ。
(あとはいい返事を聞くだけだね!)
ロルティは期待を込めた視線を2人に向ける。
「父さん。僕、やるよ」
「いいのか」
「うん。今さらあの人と暮らすなんて、考えられない。僕の家族は、ここにいるみんなだけだ」
「ジュロドくん……」
最愛の妹からそんな目で見られたら、長時間悩むなんて兄としてできなかったのかもしれない。
ジュロドは実母との決別をはっきりと宣言すると、迷いを打ち消した。
「ルティアーナ。君はどうする」
「ここまで話が拗れたのは、私のせいですもの。ジュロドくんだけには、任せておけないわ。私も一緒に、立ち向かう」
「無理はするな」
「大丈夫よ。私はそんなに、弱くないもの……」
息子の決心を受け止めた父親は、次に妻を見つめる。
ルティアーナはどこか寂しそうに優しく微笑んだあと、瞳を細めた。
ここには姿の見えぬ、ヘラルラの姿を脳裏に思い描いているのかもしれない。
(おかあしゃまに、声をかけてもいいのかなぁ……?)
ロルティは判断に迷い、視線をさまよわせる。
その様子を目にしたジェナロは胸元で大人しくしている愛娘に問いかけた。
「俺はこれから、あの男と話をつけてくる。2人と一緒に、部屋で休むか」
「うんん! わたしも行く!」
「わかった」
「おにいしゃま! おかあしゃま! 行ってきまーす!」
ロルティは父親の胸元に抱かれたまま、母親と兄がいる部屋をあとにした。
「そしたら、どうなるの?」
「人々から恐れられる。安全を脅かされることもあるだろうな」
「だ、駄目だよ……! そんなの! ぜったい、止めなくちゃ!」
被害を最小限に留められてよかったと喜ぶ暇など、今の自分たちにはない。
兄の母親をどうにかしなければ、ジュロドとルティアーナは一生苦しむことになるのだ。
憤慨した様子を見せる愛娘を優しい瞳で見つめ、ジェナロは静かに告げる。
「ああ。そのためには、ハリスドロア公爵家に手を出したらどうなるか……。貴族の奴らにも、徹底的に叩き込まなければならない」
「どうやって?」
「俺にいい案がある」
「ほんと!?」
「ああ。だが、これは2人にとても負担のかかる作戦だ。同意を得られなければ……難しいだろうな」
今回の事件の当事者は、ロルティではなくルティアーナとジュロドだ。
外野であるジェナロと幼子がどれほど作戦を企てたとしても、親子が難色を示すのであれば計画遂行は不可能だった。
(だいぶ顔色はよくなったけど……。もっと、癒やしの力を使わなきゃ駄目かなぁ……?)
聖女は父親とともに、2人の目覚めを待ち続ける。
すると――ようやく、その時がやってきた。
「ロル、ティ……」
「旦那様……」
母親と兄が、同時に目覚めたのだ。
ロルティは満面の笑みを浮かべ、2人に勢いよく飛びつく。
「おかあしゃま! おにいしゃま!」
「心配をかけて、ごめんなさい……」
「体調は? 平気?」
「うん。だいぶ、落ち着いたよ」
母と兄は優しく口元を綻ばせて声を発する。
ロルティが聖なる力を使ったからか、疲弊の色は見られなかった。
(よかった……。おかあしゃまとおにいしゃまが、ちょっとでも元気になれて……)
幼子がほっと胸を撫で下ろせば、家族の姿を静か見つめるジェナロが口を開く。
「さっそくなんだが、2人に聞いてほしいことがある」
「あのね! おとうしゃまが、作戦! 考えてくれたの!」
「殿下のことね……」
「ああ」
先程まで優しい笑みを浮かべていたルティアーナの表情が、不自然に曇る。
(おかあしゃまとおにいしゃまには、いつだって笑っていてほしいのに……)
ロルティは悲しい気持ちになりつつある自分の感情をぐっと押さえつけると、父親とともに2人の説得に奔走した。
「あの女とハリスドロア家はすでに、縁が切れている。しかし、しつこくこのあたりをうろつくのであれば――公衆の面前で、罰を与えなければならん」
「家族みんなで協力したら、悪い奴なんてイチコロだよ!」
幼子の口にした単語は、自分以外の家族には馴染みのない言葉であったようだ。
「ふふ。ロルティは、面白い言葉を発するんだね」
「ええ。本当に……」
難しい表情をしていた2人が、優しく口元を綻ばせる。
狙って行ったわけではないが、これはこれで大成功と言ってもいいだろう。
ロルティは彼らに向かって、こてりと首を傾げて問いかけた。
「少し、元気出た?」
「そうね……」
「うん。妹の笑顔は、僕たちの気分を上昇させる栄養剤みたいなものだから」
「えへへ。よかったー!」
ようやくルティアーナとジュロドにも、微笑みを浮かべる余裕ができたようだ。
(あとはいい返事を聞くだけだね!)
ロルティは期待を込めた視線を2人に向ける。
「父さん。僕、やるよ」
「いいのか」
「うん。今さらあの人と暮らすなんて、考えられない。僕の家族は、ここにいるみんなだけだ」
「ジュロドくん……」
最愛の妹からそんな目で見られたら、長時間悩むなんて兄としてできなかったのかもしれない。
ジュロドは実母との決別をはっきりと宣言すると、迷いを打ち消した。
「ルティアーナ。君はどうする」
「ここまで話が拗れたのは、私のせいですもの。ジュロドくんだけには、任せておけないわ。私も一緒に、立ち向かう」
「無理はするな」
「大丈夫よ。私はそんなに、弱くないもの……」
息子の決心を受け止めた父親は、次に妻を見つめる。
ルティアーナはどこか寂しそうに優しく微笑んだあと、瞳を細めた。
ここには姿の見えぬ、ヘラルラの姿を脳裏に思い描いているのかもしれない。
(おかあしゃまに、声をかけてもいいのかなぁ……?)
ロルティは判断に迷い、視線をさまよわせる。
その様子を目にしたジェナロは胸元で大人しくしている愛娘に問いかけた。
「俺はこれから、あの男と話をつけてくる。2人と一緒に、部屋で休むか」
「うんん! わたしも行く!」
「わかった」
「おにいしゃま! おかあしゃま! 行ってきまーす!」
ロルティは父親の胸元に抱かれたまま、母親と兄がいる部屋をあとにした。
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