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アリスティア編
午前0時のシンデレラ
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母の名前はアデライト・クロムウェル。
この歴史ある由緒正しき公爵家の嫡子として生まれ、何不自由なく暮らしていた。
彼女は社交界では『美しき深紅の薔薇』と呼ばれ、男女共に人気が高かった。加えて王妃様とは仲が良く、私も時々母に連れられて、お茶会に出席したこともある。その際、男装していたので、王子達からは当時男だと思われていたが、実は女だったと知られて驚かれた。
第一王子ミシェラン殿下とは10才違い、第二殿下ゼブラン殿下とは8才違いでよくお茶会の合間、騎士団や図書室に連れて行かれたものだ。
私が生まれた時から父は、殆ど公爵家に居付かず、平民の愛人と暮らしていた。そこに私と同じ年の女の子がいる事は知っていた。
口さがない使用人らが話しているのを小耳に挟んだから。
そんなおかしな夫婦関係であるにも拘らず、母は頑なに離婚しなかった。幼い頃は良かった。でも母が狂い始めたのは私が5才位から。
段々顔つきが父に似て来た私を母は常に傍に置きたがった。まともな時の母は優しかったし、温かかった。そして公爵家を担うものとして厳しかった。
私が愛されていると感じていた時期はその5才から8才までの頃までで、10才頃になると大人の女性へと体が変化していった。
この頃には、母は私に何の興味も示さなくなり、自室に籠りきりになっていく。自分の世界に浸って行き、公爵家の管理は祖父が寄越した管財人が代行していた。
この管財人は私にもとても厳しい人だった。私は彼から公爵家の内務等を手解きされた。
勿論家令のセバスと一緒に、その上社交界にデビューの為の教育もされていた為、1日のスケジュールは秒読みの様な過密なものになっていた。そのお蔭で今の私がある。
だが、私の一番の悩みは母の呪いの言葉だ。
彼女にあの長い爪で顔の輪郭をなぞられながら、呟く呪文。まるで私を否定されているように感じる。
--ああ、貴女はなんて夫に似ているの。その赤い髪とエメラルドの瞳が無ければ生き写しなのに残念ねーーー
その呪いの言葉は私の心を抉っていく。
この国のデビュタントは14才からで、私は祖父が用意した親類筋の男性にエスコートされ、会場に入場した。
でも、自分の容姿にコンプレックスを感じている私は地味なドレスと髪を染め眼鏡をかけて極力、人目に付かない様にしていた。
王族への挨拶が終わり、ファーストダンスが始まると私は壁際に移動して、気配を消している。誰にも関わりたくないのだ。
そんな私を見つけた王子殿下らに連れられて、用意された別室で着替えさせられた。
「ねえ、アリス何でそんな地味な格好をしているの?折角の美人が台無しだよ。ほら、母上が君の為に用意したドレスを着てみてよ。きっと母上も喜ぶからさ」
第二王子ゼブラン殿下に言いくるめられるように、侍女達が忙しなく私の支度を手伝ってくれている。
「殿下、ご覧ください。私の最高傑作ですわ。腕によりをかけて仕上げましたので、ご満足いただけるかと」
「うわーっ、別人みたいだね。こんな君を見たら求婚者が殺到するよ。まるで君の母上のようにね」
殿下が大きな鏡の前で、着替えた私を見せた。そこにいるのは私であって私でない別人のような人物。
赤い髪は結い上げ、蝶の髪飾りを付けている。まるで深紅の薔薇に蝶が止まっているかのように。ドレスは銀色というより光の加減で色が変わるもので、所々にレースを使っている。
少女が着るというより、大人の女性が着る様なドレスだった。
化粧も可愛らしさを強調したもので、アクセサリーも小ぶりなもを使用していた。
全体のバランスを考えて、これこそ社交界デビューの服装だった。
仕上がった私を見て、殿下は
「小さな淑女、お手をどうぞ」
と手を差し出した。私は殿下にエスコートされて、再び会場に戻った。
会場に入るとざわめきが起こり、壇上に座っている王妃様がにっこりと微笑まれた。
ああ、全く血の繋がっていない方の方が私を気遣ってくれている。
肉親よりも私にさり気無い、心配りをして下さる王族の方々に感謝した。
私はこの日、王子殿下達と踊った後、午前0時に退出したことから社交界では
『午前0時のシンデレラ』
そう呼ばれたのは、長い回廊に王妃様から貸し出された靴を片方置いてきてしまったからだった。
その後、王子殿下達は、私の素性を多くの貴族から聞かれ、困ったらしい。
私は一夜限りの素敵な夢を見たのだと忘れる事にした。
そんな私を探している人がいるとも知らないで、学園で地味女生活を満喫していた。
この歴史ある由緒正しき公爵家の嫡子として生まれ、何不自由なく暮らしていた。
彼女は社交界では『美しき深紅の薔薇』と呼ばれ、男女共に人気が高かった。加えて王妃様とは仲が良く、私も時々母に連れられて、お茶会に出席したこともある。その際、男装していたので、王子達からは当時男だと思われていたが、実は女だったと知られて驚かれた。
第一王子ミシェラン殿下とは10才違い、第二殿下ゼブラン殿下とは8才違いでよくお茶会の合間、騎士団や図書室に連れて行かれたものだ。
私が生まれた時から父は、殆ど公爵家に居付かず、平民の愛人と暮らしていた。そこに私と同じ年の女の子がいる事は知っていた。
口さがない使用人らが話しているのを小耳に挟んだから。
そんなおかしな夫婦関係であるにも拘らず、母は頑なに離婚しなかった。幼い頃は良かった。でも母が狂い始めたのは私が5才位から。
段々顔つきが父に似て来た私を母は常に傍に置きたがった。まともな時の母は優しかったし、温かかった。そして公爵家を担うものとして厳しかった。
私が愛されていると感じていた時期はその5才から8才までの頃までで、10才頃になると大人の女性へと体が変化していった。
この頃には、母は私に何の興味も示さなくなり、自室に籠りきりになっていく。自分の世界に浸って行き、公爵家の管理は祖父が寄越した管財人が代行していた。
この管財人は私にもとても厳しい人だった。私は彼から公爵家の内務等を手解きされた。
勿論家令のセバスと一緒に、その上社交界にデビューの為の教育もされていた為、1日のスケジュールは秒読みの様な過密なものになっていた。そのお蔭で今の私がある。
だが、私の一番の悩みは母の呪いの言葉だ。
彼女にあの長い爪で顔の輪郭をなぞられながら、呟く呪文。まるで私を否定されているように感じる。
--ああ、貴女はなんて夫に似ているの。その赤い髪とエメラルドの瞳が無ければ生き写しなのに残念ねーーー
その呪いの言葉は私の心を抉っていく。
この国のデビュタントは14才からで、私は祖父が用意した親類筋の男性にエスコートされ、会場に入場した。
でも、自分の容姿にコンプレックスを感じている私は地味なドレスと髪を染め眼鏡をかけて極力、人目に付かない様にしていた。
王族への挨拶が終わり、ファーストダンスが始まると私は壁際に移動して、気配を消している。誰にも関わりたくないのだ。
そんな私を見つけた王子殿下らに連れられて、用意された別室で着替えさせられた。
「ねえ、アリス何でそんな地味な格好をしているの?折角の美人が台無しだよ。ほら、母上が君の為に用意したドレスを着てみてよ。きっと母上も喜ぶからさ」
第二王子ゼブラン殿下に言いくるめられるように、侍女達が忙しなく私の支度を手伝ってくれている。
「殿下、ご覧ください。私の最高傑作ですわ。腕によりをかけて仕上げましたので、ご満足いただけるかと」
「うわーっ、別人みたいだね。こんな君を見たら求婚者が殺到するよ。まるで君の母上のようにね」
殿下が大きな鏡の前で、着替えた私を見せた。そこにいるのは私であって私でない別人のような人物。
赤い髪は結い上げ、蝶の髪飾りを付けている。まるで深紅の薔薇に蝶が止まっているかのように。ドレスは銀色というより光の加減で色が変わるもので、所々にレースを使っている。
少女が着るというより、大人の女性が着る様なドレスだった。
化粧も可愛らしさを強調したもので、アクセサリーも小ぶりなもを使用していた。
全体のバランスを考えて、これこそ社交界デビューの服装だった。
仕上がった私を見て、殿下は
「小さな淑女、お手をどうぞ」
と手を差し出した。私は殿下にエスコートされて、再び会場に戻った。
会場に入るとざわめきが起こり、壇上に座っている王妃様がにっこりと微笑まれた。
ああ、全く血の繋がっていない方の方が私を気遣ってくれている。
肉親よりも私にさり気無い、心配りをして下さる王族の方々に感謝した。
私はこの日、王子殿下達と踊った後、午前0時に退出したことから社交界では
『午前0時のシンデレラ』
そう呼ばれたのは、長い回廊に王妃様から貸し出された靴を片方置いてきてしまったからだった。
その後、王子殿下達は、私の素性を多くの貴族から聞かれ、困ったらしい。
私は一夜限りの素敵な夢を見たのだと忘れる事にした。
そんな私を探している人がいるとも知らないで、学園で地味女生活を満喫していた。
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