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アリスティア編
家族とは
母が死んで3ヶ月しか経っていないにも関わらず、父は愛人だった女マリエルと娘エリーゼを伴って公爵家に帰って来た。
「今日から義母になるマリエルと異母妹のエリーゼだ。アリスティア挨拶をしなさい」
父はどうやら貴族の仕来たりすら忘れたらしい。私は公爵家の嫡子。相手は婿養子の愛人とその娘。どちらが上なのか誰が見ても明白なのに嫡子の私から頭を下げろと言っている。
「そうですか。私は部屋に戻りますので…」
気にも留めないで、部屋に戻ろうとすると、父が
「挨拶もろくに出来ないのか。アデライトは素晴らしい教育を施したのだな。後で執務室に来い」
嫌味をいい、優しい笑みを愛人と子供に向けている。私には一度も向けられた事のない笑みを、何の力もないただの平民の母娘は当然の様に享受している姿に吐き気がした。
皆、死ねばいいのに…
母は最期までこの男しか見ていなかった。自分を顧みないこの男の一体何処に惹かれる要素があるのか、私は不思議でならなかった。
「私、お姉様がいると聞いて、嬉しくてたまらなかったんです。仲良くしてください」
異母妹といっても同い年のこの少女は私に向かってそう微笑んだ。母親譲りの金色の髪と青い瞳を持った美しい少女の名は「エリーゼ」そう呼ばれていた。
私は彼女の気持ちが分からない。自分の父が長年、本妻と嫡子を放置して愛人と仲良く暮らしているのに、初めて会った本妻の娘に『仲良くしたい』と言える無神経さが憎らしい。
私が応接室を出ると家令のセバスが声をかけて来た。彼は母が幼い時から仕えている。
「お嬢様、いかがいたしますか?」
「あの父が帰って来たからといって何か帰る必要があるのかしら。これまで通りでいいわよ。皆にもそう伝えてね」
父と呼ぶのも悍ましい。私は父を『あの男』と呼んでいた。屋敷の者は全て祖父の息がかかっている者しかいない。女公爵であったのは私の母、アデライトだった。あの男には何の権利もない婿養子。何を勘違いしているのか愛人を連れて帰るなんて、祖父はこの事を知っているはず。何故何も言わないのだろう。
不振に思いながらも私は父のいる執務室にいった。その部屋は私が生まれてから一度も使われていない。
実際の公爵家の舵取りをしているのは祖父で、母は祖父の代行を務めていた。今は私が母の代わりに公爵家の家を取り仕切っている。それは祖父が認めた権利。
執務室に入ると父が私を詰りだした。
「お前は本当にあの女。お前の母親に良く似ているな。どこまで私を縛れば気が済む。お前が生まれたせいで、私の人生は不幸だった。今後、私の家族にあんな態度を取ることは赦さない。目障りな姿も二度と見せるな!さっさと行け!!」
怒鳴り散らしながら、的外れな言葉を投げかける。
『私の家族』その中に私が含まれていない事は十分に分かっている。でも、私も貴方の娘なのに…。
忘れていた心の中に仕舞い込んでいた箱の蓋が開きそうになっている。
母の歪んだ執着からやっと、逃れられたと思ったら、今度は父が私に当たり散らす。私の心はどんどん冷えていく。
私だって愛されたかったし、愛したかった。
私は、行き場のない思いを抱えながら、心が軋む様な痛みを抱えて、自室に向かった。
ダメよ。忘れなさい。私は誰も愛さないし、愛されようとは思わないのだから。
母の事が反面教師となって、私は『愛』というものが怖かった。人を狂わせる『愛』を知りたくなかったのだ。
「今日から義母になるマリエルと異母妹のエリーゼだ。アリスティア挨拶をしなさい」
父はどうやら貴族の仕来たりすら忘れたらしい。私は公爵家の嫡子。相手は婿養子の愛人とその娘。どちらが上なのか誰が見ても明白なのに嫡子の私から頭を下げろと言っている。
「そうですか。私は部屋に戻りますので…」
気にも留めないで、部屋に戻ろうとすると、父が
「挨拶もろくに出来ないのか。アデライトは素晴らしい教育を施したのだな。後で執務室に来い」
嫌味をいい、優しい笑みを愛人と子供に向けている。私には一度も向けられた事のない笑みを、何の力もないただの平民の母娘は当然の様に享受している姿に吐き気がした。
皆、死ねばいいのに…
母は最期までこの男しか見ていなかった。自分を顧みないこの男の一体何処に惹かれる要素があるのか、私は不思議でならなかった。
「私、お姉様がいると聞いて、嬉しくてたまらなかったんです。仲良くしてください」
異母妹といっても同い年のこの少女は私に向かってそう微笑んだ。母親譲りの金色の髪と青い瞳を持った美しい少女の名は「エリーゼ」そう呼ばれていた。
私は彼女の気持ちが分からない。自分の父が長年、本妻と嫡子を放置して愛人と仲良く暮らしているのに、初めて会った本妻の娘に『仲良くしたい』と言える無神経さが憎らしい。
私が応接室を出ると家令のセバスが声をかけて来た。彼は母が幼い時から仕えている。
「お嬢様、いかがいたしますか?」
「あの父が帰って来たからといって何か帰る必要があるのかしら。これまで通りでいいわよ。皆にもそう伝えてね」
父と呼ぶのも悍ましい。私は父を『あの男』と呼んでいた。屋敷の者は全て祖父の息がかかっている者しかいない。女公爵であったのは私の母、アデライトだった。あの男には何の権利もない婿養子。何を勘違いしているのか愛人を連れて帰るなんて、祖父はこの事を知っているはず。何故何も言わないのだろう。
不振に思いながらも私は父のいる執務室にいった。その部屋は私が生まれてから一度も使われていない。
実際の公爵家の舵取りをしているのは祖父で、母は祖父の代行を務めていた。今は私が母の代わりに公爵家の家を取り仕切っている。それは祖父が認めた権利。
執務室に入ると父が私を詰りだした。
「お前は本当にあの女。お前の母親に良く似ているな。どこまで私を縛れば気が済む。お前が生まれたせいで、私の人生は不幸だった。今後、私の家族にあんな態度を取ることは赦さない。目障りな姿も二度と見せるな!さっさと行け!!」
怒鳴り散らしながら、的外れな言葉を投げかける。
『私の家族』その中に私が含まれていない事は十分に分かっている。でも、私も貴方の娘なのに…。
忘れていた心の中に仕舞い込んでいた箱の蓋が開きそうになっている。
母の歪んだ執着からやっと、逃れられたと思ったら、今度は父が私に当たり散らす。私の心はどんどん冷えていく。
私だって愛されたかったし、愛したかった。
私は、行き場のない思いを抱えながら、心が軋む様な痛みを抱えて、自室に向かった。
ダメよ。忘れなさい。私は誰も愛さないし、愛されようとは思わないのだから。
母の事が反面教師となって、私は『愛』というものが怖かった。人を狂わせる『愛』を知りたくなかったのだ。
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