【完結】わたしの婚約者には愛する人がいる

春野オカリナ

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アリスティア編

異母妹

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 私が放課後、居残りをするようになると、今度は昼の休憩時間に態々エリーゼが私の所にやって来た。

 齢は同い年だが、エリーゼと私は学年が違う。その上、私のクラスは上位クラスで、王族や公爵家の令嬢と令息が集まる少人数のクラス。

 全員、私が誰なのか知っている。

 しかし、幸い名門公爵家の嫡子に侮蔑や嘲笑するような愚か者はこのクラスにはいなかった。

 だから、私が地味な格好をしていても、皆、私に好意的で、むしろ令嬢等はこの姿のままいて欲しいと思っていた。

 親から聞いているのだろう。本当の私の容姿について…。
 
 婚約者を惑わせるかもしれない女など、存在しない方がいいのだ。

 だが、エリーゼが私の所に来た為、冷たい視線が私に向けられる。出自はともかく見た目は高位貴族の令嬢の誰よりも美しいエリーゼに令嬢らは嫉妬していた。

 どうして、分からないのかしら。私が自分を受け入れられると本気で思っているの?

 正直、拘らないで欲しい。私の平穏な日常を乱さないで欲しい。勝手に自分たちだけで家族ごっこをすればいいのに……。

 私が母と過ごした時間を、彼女はあの男と過ごしていた。公爵家で母と私がどんな風に過ごしていたのか知っているのだろうか。知っていないからこんな事が出来るのだろう。

 私は、長く母の呪縛に囚われていて、自分の容姿が嫌いなのだ。誰かに『お父様に似ていらっしゃるのね』そう言われると、具合が悪くなり、動悸が激しくなる。気を失いかけたこともある程、私にとってはトラウマなのだ。

 だから、他人と距離を保ちながら、学院生活を送っていたのに……。

 静かにひっそりと誰にも関心を持たれず、穏やかに過ごしていた、平穏な学院生活を、彼女は土足で入ってくる。

 その無神経さに腹が立つ。

 「お義姉様、今日のお昼は料理長に二人分作ってもらったので、一緒にカフェテラスで食べませんか?」

 「ありがとう。折角だけど私も自分の物を持ってきているから、それはケロイド様と一緒に食べればいいわ」

 「そんな、私はお義姉様と一緒に過ごしたいのです。早く仲良くなりたいのに」

 そんなやり取りをしていると、婚約者のケロイド様が口を挟んできた。

 「こんなに思いやりのある義妹に、お前はなんて冷たい奴なんだ。お前の様な女が婚約者だなんて、俺はついていない。エリーゼが婚約者なら良かったのに」

 私を睨みながら、至極残念そうにエリーゼを見つめているケロイド様。

 「ダメですわ。ケロイド様はお義姉様の婚約者です。私は将来、義妹になるのですから」

 悲しそうな顔をしながら俯く。

 ケロイド様からすれば、差し詰、私は異母妹を虐める悪女だろう。

 彼の冷たい視線が私に向けられている。

 仕方なく、その日の昼食は一緒に摂ったのだが、それが大きな間違いだと気づかされるのに、時間はかからなかった。

 学院のカフェは学院に通う学生なら誰でも利用出来るため、その日エリーゼは大勢の前で、私が誰なのか言ってしまったのだ。

 私がアリスティア・クロムウェル公爵令嬢だと。

 その結果、エリーゼに向かう筈だった悪意は、何の関係もない私へと向けられた。

 理由は簡単。

 私は誰にも好かれていないから……
 
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