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アリスティア編
家令
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中庭にある東屋で先生とある客人を招いてお茶をしている。
祖父の執務室で話し合いをした時に用事を済ませた先生が公爵家を訪れた。
そう言えば、先生から婚約の承諾を貰えていない事に、今更ながら焦っている。
どうしよう。勝手に祖父に言ってしまった。彼の気持ちはどうなのだろう?
聞きたい反面「面倒な君は御免だ。お互いに政略なのだから適度な距離を…」等と言われるとかなりショックかもしれない。
昨日までは父とその家族を放逐しようと考えていたけれど、母のあの手紙の内容を見て、メッシ―博士の言葉が頭の中を駆け巡っている。
だが、私は知らなければならない。母と父たちの関係を。きっと答えはこの目の前にいる人物が持っている。
先生が連れてきた客人は、
一人は別邸の家令を務めていたトーマス・ダグラス。
彼は、私が別邸を訪れた数年後、年齢を理由に屋敷を去ったのだが、本当は父に諫言したのが原因だ。辞める際に母の元を訪れて、本当の理由を話していた。母は長年、仕えてくれた老家令に労いの言葉と老後の生活の保障を約束した。私が知っているのはそれだけだ。
彼が帰った後、母がこっそり泣いていたのは知っている。
もう一人は、母の乳母ベラ・マドール男爵夫人。元々、祖母の親しい友人だった彼女を雇う事になったのは、夫に先立たれ爵位を返上しなければならない程、困窮していた男爵家の為の救済措置。
乳母として母に尽くしてくれていた彼女ならより多くの事が聞けるだろう。
私は次期公爵となる身だ。一方的な言い分だけで判断し処罰すれば取り返しのつかない事になる。
「アリスティア、今日は体調は?」
「はい、いつもより頭の中がすっきりして、靄がとれたような感じです」
「そうか、それなら良かった。彼らの話を聞いても大丈夫そうだな」
「はい、先生」
「私達は何れ夫婦になるんだ。もう先生呼ばわりも殿下と呼ぶのも止めて欲しい。できれば名前を呼んでほしいのだが」
「では、レイラン様」
「ああ、それでいい」
レイラン様に見つめられて、胸が高鳴っているのがわかる。
「えー、コホン。お二人が仲睦まじいのは公爵家にとって喜ばしいことです。しかし、人前での節度は守って頂きたい」
生暖かい目で見られていた事に気付いて恥ずかしくなってきた。
「では、お二人に聞きたいのは母と父の関係です。知っている限りのことを聞かせて下さい」
「分かりました。お嬢様」
私とレイモン殿下の前で語る元家令と乳母の話の内容は、母とオーウェンは恋人同士で親の目を盗んで密会を重ねる程の関係だった。
子供の頃に、祖父を訪ねて伯爵と来て以来、母とローフェルとオーウェンは幼馴染のような関係で、母は見かけの派手な容姿を気にしていた。いつも傍で慰め支えていたのはオーウェンだった。
それとは反対にローフェルの方は、特に母に関心があった素振りもなく、二人が親密になって行くのを応援しているようだと語ってくれた。
ならばメッシ―博士の言った「君の実父はお母さんを好きだった」という言葉に矛盾が出る。
一体、実父は何がしたかったのだろう。それとも二人から見た母達の関係が本当なら好意で私という人間を生み出す為の関係だったのだろうか?そこに愛情はなかったのか?
それと同時にあることに納得がいったのだ。
魔女が持っていた赤い髪の意味が……。
オーウェンが母を愛していたなら合点がいく。
魔女はあの髪を被って誘惑したのだオーウェンを。
別邸ではっきりと喋っていたのを思い出す。
『失恋の痛手を慰めてあげると近寄って誘惑した』
そう魔女は言っていたのだ。
祖父の執務室で話し合いをした時に用事を済ませた先生が公爵家を訪れた。
そう言えば、先生から婚約の承諾を貰えていない事に、今更ながら焦っている。
どうしよう。勝手に祖父に言ってしまった。彼の気持ちはどうなのだろう?
聞きたい反面「面倒な君は御免だ。お互いに政略なのだから適度な距離を…」等と言われるとかなりショックかもしれない。
昨日までは父とその家族を放逐しようと考えていたけれど、母のあの手紙の内容を見て、メッシ―博士の言葉が頭の中を駆け巡っている。
だが、私は知らなければならない。母と父たちの関係を。きっと答えはこの目の前にいる人物が持っている。
先生が連れてきた客人は、
一人は別邸の家令を務めていたトーマス・ダグラス。
彼は、私が別邸を訪れた数年後、年齢を理由に屋敷を去ったのだが、本当は父に諫言したのが原因だ。辞める際に母の元を訪れて、本当の理由を話していた。母は長年、仕えてくれた老家令に労いの言葉と老後の生活の保障を約束した。私が知っているのはそれだけだ。
彼が帰った後、母がこっそり泣いていたのは知っている。
もう一人は、母の乳母ベラ・マドール男爵夫人。元々、祖母の親しい友人だった彼女を雇う事になったのは、夫に先立たれ爵位を返上しなければならない程、困窮していた男爵家の為の救済措置。
乳母として母に尽くしてくれていた彼女ならより多くの事が聞けるだろう。
私は次期公爵となる身だ。一方的な言い分だけで判断し処罰すれば取り返しのつかない事になる。
「アリスティア、今日は体調は?」
「はい、いつもより頭の中がすっきりして、靄がとれたような感じです」
「そうか、それなら良かった。彼らの話を聞いても大丈夫そうだな」
「はい、先生」
「私達は何れ夫婦になるんだ。もう先生呼ばわりも殿下と呼ぶのも止めて欲しい。できれば名前を呼んでほしいのだが」
「では、レイラン様」
「ああ、それでいい」
レイラン様に見つめられて、胸が高鳴っているのがわかる。
「えー、コホン。お二人が仲睦まじいのは公爵家にとって喜ばしいことです。しかし、人前での節度は守って頂きたい」
生暖かい目で見られていた事に気付いて恥ずかしくなってきた。
「では、お二人に聞きたいのは母と父の関係です。知っている限りのことを聞かせて下さい」
「分かりました。お嬢様」
私とレイモン殿下の前で語る元家令と乳母の話の内容は、母とオーウェンは恋人同士で親の目を盗んで密会を重ねる程の関係だった。
子供の頃に、祖父を訪ねて伯爵と来て以来、母とローフェルとオーウェンは幼馴染のような関係で、母は見かけの派手な容姿を気にしていた。いつも傍で慰め支えていたのはオーウェンだった。
それとは反対にローフェルの方は、特に母に関心があった素振りもなく、二人が親密になって行くのを応援しているようだと語ってくれた。
ならばメッシ―博士の言った「君の実父はお母さんを好きだった」という言葉に矛盾が出る。
一体、実父は何がしたかったのだろう。それとも二人から見た母達の関係が本当なら好意で私という人間を生み出す為の関係だったのだろうか?そこに愛情はなかったのか?
それと同時にあることに納得がいったのだ。
魔女が持っていた赤い髪の意味が……。
オーウェンが母を愛していたなら合点がいく。
魔女はあの髪を被って誘惑したのだオーウェンを。
別邸ではっきりと喋っていたのを思い出す。
『失恋の痛手を慰めてあげると近寄って誘惑した』
そう魔女は言っていたのだ。
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