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アデライト編
隣国の男
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王弟レイラン殿下は王家にとって、微妙な立場の王子だった。
その理由は第一王子ミシュラン殿下と同じ年で、先王陛下の晩年に出来たお子。しかも母親は力のない伯爵家の令嬢。後ろ盾のない王子等、とるに足らない存在でしかない。
しかし、王宮の外に出そうにも下手な貴族に婿入りさせる訳にもいかない。彼も王位継承権を持っているからだ。貴族たちの野心を煽るには十分な要素だった。
王家がその婿入り先を、何処にするかに決めかねていた所にアリスティアが生まれた。
王家から婚約者の打診は来ていたが、アリスティアの病気の事とレイラン殿下自身が隣国の医療に関心があり、留学を終えてからという話になっている。
他の貴族からも婚約の申し込みはあるが、父が全て断っていた。
そのレイラン殿下から神殿の薬草園を見学に行った時に、オーウェンとよく似た人物がいると。しかもその人物の目の色は碧で、王家特有の瞳だと知らせてきた。
レイラン殿下はローフェルと直接接触したことがない。
だが、自国の王家の瞳は他国にはないもの。不審に思ったレイラン殿下が父に連絡を入れたのだ。
父は知らせを聞いて、長年手がかりがなかったのは他国にいたからなのではと、急いで隣国に渡った。
父が隣国から帰って直ぐに私を執務室に呼んだ。
帰ってきた父は、何処か青ざめている。
私はよくない知らせを覚悟しながら、父の話を聞いたのだ。
「アデライト、はっきり言えば、ローフェルに間違いない」
「では、連れて帰らなかったのは、何か不都合な事があったのですか?もう別の家庭を持っているか。他に結婚したい女性でもいるのでしょうか?」
「いや、そうではなく。ローフェルは土砂崩れに巻き込まれた時、頭を打っていたようで、記憶が無いのだよ。自分が誰なのか分からないそうだ」
「そ…そんな。アリスティアのことも忘れたんですか?」
「ああ、名前も思い出せない状態だ」
「か…体は…怪我は…」
「怪我の方は完治しているようだが、問題はローフェル自身を証明する物がない。身分を証明できる物でもあれば良かったのだが、土砂で流されている。何も残っていないから隣国の神殿側が引き渡しを拒んでいる」
「では、王家にお願いして力を貸して下さるようにお願いすることは可能なのでは…」
「確かに王家の力を借りれば可能かもしれないが、本人かどうか分からない者の引き渡し要請に隣国が応じてくれるかどうか」
「では、どうすればいいのですか?」
「何か、ローフェルだと言える体の特徴などがあれば、王家に働き掛ける事はできるかもしれん。それでも時間がかかるが、何もしないより良いだろう」
私は、父に言われ、ローフェルだと証明できる物を考えていた。
「そういえば、ローフェルには左肩に花弁のような痣がありました。なんでも幼少の頃にかかった病気の痕だと言っていたような気がします」
「それなら、隣国は医療大国だ。こちらの医療記録を見せれば証明できるかもしれん。それに隣国の方がそういう精神的な医療は進んでいる。薬もな。丁度、アリスティアの為に向こうの医師を秘密裏に招くことを王家に打診していた所だ」
「では、伯爵家の侍医にローフェルの治療記録書を提出させましょう」
私達は事を早急に運んだ。
その理由は、もう私には残された時間がどのくらいあるのか分からない程になっていた。
眩暈や吐き気に襲われる事はしばしばあり、急に意識を失う事もある。
もし、このまま死んでしまったら、アリスティアを守ってくれるものが父公爵だけになる。それには限界があり、公爵家の膨大な事業や領地の維持管理だけでも大変な作業なのに、それに加えてアリスティアの世話までとなると、とてもではないが追いつかない。
最近でこそ、落ち着いて来たがまたいつ記憶が無くなるか分からない娘の良く末に、ローフェルが生きているという可能性は希望の光の様に思えた。
隣国からようやくローフェルの引き渡しが可能になり、レイラン殿下が共に連れて帰ってくれる事になった。
それはアリスティアが12才の春の事だった。
その理由は第一王子ミシュラン殿下と同じ年で、先王陛下の晩年に出来たお子。しかも母親は力のない伯爵家の令嬢。後ろ盾のない王子等、とるに足らない存在でしかない。
しかし、王宮の外に出そうにも下手な貴族に婿入りさせる訳にもいかない。彼も王位継承権を持っているからだ。貴族たちの野心を煽るには十分な要素だった。
王家がその婿入り先を、何処にするかに決めかねていた所にアリスティアが生まれた。
王家から婚約者の打診は来ていたが、アリスティアの病気の事とレイラン殿下自身が隣国の医療に関心があり、留学を終えてからという話になっている。
他の貴族からも婚約の申し込みはあるが、父が全て断っていた。
そのレイラン殿下から神殿の薬草園を見学に行った時に、オーウェンとよく似た人物がいると。しかもその人物の目の色は碧で、王家特有の瞳だと知らせてきた。
レイラン殿下はローフェルと直接接触したことがない。
だが、自国の王家の瞳は他国にはないもの。不審に思ったレイラン殿下が父に連絡を入れたのだ。
父は知らせを聞いて、長年手がかりがなかったのは他国にいたからなのではと、急いで隣国に渡った。
父が隣国から帰って直ぐに私を執務室に呼んだ。
帰ってきた父は、何処か青ざめている。
私はよくない知らせを覚悟しながら、父の話を聞いたのだ。
「アデライト、はっきり言えば、ローフェルに間違いない」
「では、連れて帰らなかったのは、何か不都合な事があったのですか?もう別の家庭を持っているか。他に結婚したい女性でもいるのでしょうか?」
「いや、そうではなく。ローフェルは土砂崩れに巻き込まれた時、頭を打っていたようで、記憶が無いのだよ。自分が誰なのか分からないそうだ」
「そ…そんな。アリスティアのことも忘れたんですか?」
「ああ、名前も思い出せない状態だ」
「か…体は…怪我は…」
「怪我の方は完治しているようだが、問題はローフェル自身を証明する物がない。身分を証明できる物でもあれば良かったのだが、土砂で流されている。何も残っていないから隣国の神殿側が引き渡しを拒んでいる」
「では、王家にお願いして力を貸して下さるようにお願いすることは可能なのでは…」
「確かに王家の力を借りれば可能かもしれないが、本人かどうか分からない者の引き渡し要請に隣国が応じてくれるかどうか」
「では、どうすればいいのですか?」
「何か、ローフェルだと言える体の特徴などがあれば、王家に働き掛ける事はできるかもしれん。それでも時間がかかるが、何もしないより良いだろう」
私は、父に言われ、ローフェルだと証明できる物を考えていた。
「そういえば、ローフェルには左肩に花弁のような痣がありました。なんでも幼少の頃にかかった病気の痕だと言っていたような気がします」
「それなら、隣国は医療大国だ。こちらの医療記録を見せれば証明できるかもしれん。それに隣国の方がそういう精神的な医療は進んでいる。薬もな。丁度、アリスティアの為に向こうの医師を秘密裏に招くことを王家に打診していた所だ」
「では、伯爵家の侍医にローフェルの治療記録書を提出させましょう」
私達は事を早急に運んだ。
その理由は、もう私には残された時間がどのくらいあるのか分からない程になっていた。
眩暈や吐き気に襲われる事はしばしばあり、急に意識を失う事もある。
もし、このまま死んでしまったら、アリスティアを守ってくれるものが父公爵だけになる。それには限界があり、公爵家の膨大な事業や領地の維持管理だけでも大変な作業なのに、それに加えてアリスティアの世話までとなると、とてもではないが追いつかない。
最近でこそ、落ち着いて来たがまたいつ記憶が無くなるか分からない娘の良く末に、ローフェルが生きているという可能性は希望の光の様に思えた。
隣国からようやくローフェルの引き渡しが可能になり、レイラン殿下が共に連れて帰ってくれる事になった。
それはアリスティアが12才の春の事だった。
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