私の存在

戒月冷音

文字の大きさ
100 / 168

第107話

しおりを挟む
この世界は、もの作りについては、ある程度技術がないと作れない。
箸を作ってもらった時も、最初は木を細く切り出すことが難しく、何本も折っていた。
しかし慣れてくると、対で2本作るのにそんなに時間はかからず、まっすぐできれいに揃ったものを作れるようになっていた。
そして、デザインをして絵を描いたり、模様をつけたりするようになって、家には何種類か買っていたと思う。

「それじゃあ、私達夫婦の分も込みで、5膳分作ってもらえるか?」
突然聞こえた国王様の言葉に、私はビックリした。
「えっ!?国王様とマルガ様の分も、ですか?」
「駄目か?」
私がぴっくりしたことで、シュンとしてしまった国王陛下。
「あっ、いいえ。そういうことではなく、国王様達も使われるのかと
 思いまして」
「使い方は、先生に聞くが良いか?」
国王様が、マルクス様にそう言った。
「えっ、俺が先生。いいよ、教える」
「こうやって、親子の交流をするのだ。いい理由になるだろう」
「畏まりました。では、箸を5膳分作成します。
 絵柄など、ご希望がございましたら、それに沿う事が出来ますが?」
私がそう言うとマルガ様が
「例えば?」
と聞いてきた。

「えっと、私の箸のようなのでしたら、ウサギの絵をいれてとか、
 幾何学模様がいいとか、あるいは、自分の名前をいれて欲しい・・・
 とかですね」
すると
「私は、犬の絵がいいわ。出来れば、うちにいるマルチーズ」
とカサンドラ様がいい、
「私は、ミシェル様の箸の色違いがいいわ」
とマルガ様からも、絵柄注文が入った。
「えっと色は?」
「ミシェル様の色が、持つところの色が白でウサギが黒だから・・・
 赤地に、白兎かしら」
「承りました」
私がそう答えると、横からじっと見ていたマルクス様が
「なんかミシェルが、営業マンに見える」
と言った。

「マルクス。営業マンとは?」
「こうやって、仕事をとってくる人の事だよ。
 営業は、自分の出来ることを提示して販売する事で、マンは、
 男性と言う意味もあるけど、人の意味合いもある。
 だから、ミシェルのように、こういうことが出来るから買ってくださいと
 仕事をもらう人の事を、営業マンって言うんだ・・・そうだったよね?」
マルクス様は自分で説明したたにも関わらず、私に同意を求めた。
「まぁ、そうなのではないでしょうか。
 私は、箸を売るためにここに来たのではありませんが、
 箸とうどんはセットですから、仕方ないですよね」
私の言葉に、マルクス様はほっとした。

「そう、セットだね」
「セットならやはり、買わねばならぬな。
 ではワシのは、名前をいれてもらおうか。三人分」
「さ、3人ですか?」
「あぁ、マイルズとエリスとマルガだ」
さすが国王様。きちんと、正妃様も入ってる。
「では俺は、ヘンドリックとカサンドラで」
「じゃあ俺のは、マルクスとミシェルで、間にあのマークを」
そういってマルクス様は、パチンとウィンクした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愚かな恋

はるきりょう
恋愛
そして、呪文のように繰り返すのだ。「里美。好きなんだ」と。 私の顔を見て、私のではない名前を呼ぶ。

この別れは、きっと。

はるきりょう
恋愛
瑛士の背中を見ていられることが、どれほど幸せだったのか、きっと瑛士は知らないままだ。 ※小説家になろうサイト様にも掲載しています。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。内容も少し変更しておりますので、あわせてお楽しみください。

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

【完結】あいしていると伝えたくて

ここ
恋愛
シファラは、生まれてからずっと、真っ暗な壁の中にいた。ジメジメした空間には明かり取りの窓すらない。こんなことは起きなかった。公爵の娘であるシファラが、身分の低い娼婦から生まれたのではなければ。 シファラの人生はその部屋で終わるはずだった。だが、想定外のことが起きて。 *恋愛要素は薄めです。これからって感じで終わります。

マジメにやってよ!王子様

猫枕
恋愛
伯爵令嬢ローズ・ターナー(12)はエリック第一王子(12)主宰のお茶会に参加する。 エリックのイタズラで危うく命を落としそうになったローズ。 生死をさまよったローズが意識を取り戻すと、エリックが責任を取る形で両家の間に婚約が成立していた。 その後のエリックとの日々は馬鹿らしくも楽しい毎日ではあったが、お年頃になったローズは周りのご令嬢達のようにステキな恋がしたい。 ふざけてばかりのエリックに不満をもつローズだったが。 「私は王子のサンドバッグ」 のエリックとローズの別世界バージョン。 登場人物の立ち位置は少しずつ違っています。

秋色のおくりもの

藤谷 郁
恋愛
私が恋した透さんは、ご近所のお兄さん。ある日、彼に見合い話が持ち上がって―― ※エブリスタさまにも投稿します

王弟が愛した娘 —音に響く運命—

Aster22
恋愛
村で薬師として過ごしていたセラは、 ハープの音に宿る才を王弟レオに見初められる。 その出会いは、静かな日々を終わらせ、 彼女を王宮の闇と陰謀に引き寄せていく。

処理中です...