私の存在

戒月冷音

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第147話

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そうして指示を出していると、料理長が帰ってきた。
「お疲れさまでした。マリーさんはどうなりました?」
「本当に失礼いたしました。
 あいつ、マルクス様に憧れていたらしく、羨ましかったそうです。
 この料理作りに参加したのも、自分が覚えて作って差し上げたら、
 靡いてくれるのではないかと思ったようで・・・」
「その考えが、相手を侮辱していることに、気付いていないのですね」
「はい・・・本当に申し訳ない限りです。
 マリーは今後、参加させないことに決めました」
私はそれ以上、その事については何も言わず、昼食の準備の方に気をむける。

「料理長、時間を取られてしまいましたので、大急ぎで
 進めたいと思いますが大丈夫でしょうか?」
「は、はい。私も、直ぐに取りかかります」
「料理長は私と一緒に、生地を作ってください」
「了解しました」
返事をした料理長は一旦手を洗いに行き、腕捲りをしながら帰ってきた。
「それで今日は、何の生地を捏ねればいいんでしょうか?」
「今日は角煮を挟む、お饅頭の生地です」
「おまんじゅう?」
「はい。とろっとろの角煮を、真っ白でふんわりした生地で挟むのです」
「それは美味しそうですね」
「そう言う人が多いから、数作らなきゃいけないの。お手伝いお願いします」
「かしこまりました」
料理長は笑いながら答え、必要な道具を取りに行った。

料理長が戻ってくると同時に、私はシェル粉とジェル粉を取りに行き、互いが一つずつ大きなボールに同量入れ、そこにパウンドケーキでも使ったふくらし粉を入れる。
そして、糖とエンを入れ、水を入れて捏ね始める。
「一纏まりになったら捏ねて、その後少し寝かせましょう」
「分かりました」
私と料理長が生地を捏ね始めたのを見て、回りの料理人達もチャキチャキと動き出す。
ランを大量に茹でて、皮をむく班。
野菜を出来るだけ薄く切る班。
大きな塊のハムを、出来るだけ薄く切っていく班。
角パンやロールパンなどを、焼いていく班。
チーズを細かくしていく班・・・
最初3つだった班は、そこから班長によって細かく分けられて、皆が作業を進める。

「生地が出来たのでまずは、同じ量に切り分け、丸く形を整えた後、それを潰していきます」
「潰すのですか?」
「一度平らにして、折り畳んだ方がいいかなと思いまして」
私はそう言いながら生地をとると、まずは真ん丸にし、その後潰して、丸くて平たい生地を作った。
「う~ん・・・ちょっと楕円にした方が包みやすいかなぁ」
そう言うと、もう一度生地を纏め真ん丸にしてから少し伸ばした後、それを平らにした。
「うん。こんな感じかな。それで、ここに角煮をのせて・・・」
真ん中から少しずらして角煮を置くとその上に、生地を折り曲げてのせる。
「出来た」
そう言って料理長に見せた角煮マンの出来映えは、角煮が白い生地に挟まれたあの形だった。
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