私の存在

戒月冷音

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第158話

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「ミシェル、それは何?家で見たことないわ」
「これはパンプディングと言います。
 パンの耳を、プリンの中に入れたものです」
「プリンの中に?」
「パンの耳って、あの固いところだろ?
 でも今ミシェルが取ったのは、全部がプルプルに見えたけど?」
「着けて、柔らかくしてあるのです}
「あぁ、そう言うことなのね。
 パンの耳に、水分を含ませてふにゃふにゃにしたのが、この
 プリンの中には言っているのね」
「はい。そう言うことです」
「すごいわね。
 あのプルプルで、いくつ食べても大丈夫そうなプリンが、
 しっかりしたお菓子になるのね」
お姉様はそう言うと、パンプディングを取って口に運ぶ。

ぱくっと口に入れ、モグモグと食べると
「何これ。
 プリンと全然違うじゃない。
 これはプリンではなく・・・んー・・・タルト?のような・・・
 良く分からないけど、美味しいから良いわ」
お姉様はそう言うと、食べるのをやめ私に飛び付いた。
「ミシェル。
 こんなに楽しいお茶会にしてくれてありがとう。
 今日のこの会は、ミシェルからの結婚祝いでしょ」
「つっ・・・お姉様、気付いて・・・」
「もちろんよ。貴方が王子妃教育を終えるまでに、私が
 コーエン侯爵家に嫁ぐから・・・」
「お姉様。私は自分の事しか見ていませんでした。
 自分が、転生者だからと前世に引っ張られた時も、お姉様だけは
 私を信じてくれた。
 料理の事も、お姉様が食べてみたいと言ってくれなきゃ、
 作ることもなかった。
 私はお姉様に、ずっと助けられてきたの。
 なのに、私は何も出来なかったから・・・
 だから、どこかでお返ししたいと思って・・・
 でも、私に何が出来るか、分からなくて・・・
 そしたらマルクス様が、ここに呼んでお茶会すればって・・・」
するとお兄様が、
「このお茶会は、マルクスのお陰か・・・」
と言った。

「はい、私がお姉様の輿入れの話を聞いた時、どうしようかと
 迷っていたら・・・」
「進言、してくれたんだな?」
「はい。マルクス様には、たくさん助けていただいてます」
私がそう言うと、お兄様もお姉様もほっとした。
「ミシェル」
「はい。お兄様」
「俺はね。ミシェルの事は疑っていないが、マルクスの事は半信半疑だった。
 けど、今日の事とか考えると、ミシェルとマルクスは、同郷なのだと分かった」
「それは、どういう・・・」
「食べるものは、一番その人のルーツになるものだ。
 私やハリエットが、この国の食べ物しか知らないように、
 口に入れたものが、自分が腹の中に入れてきたものになる」
それは、そうだと思う。
オーギュスト家の人達は、私の影響で日本食を知っているけれど、それ以外の人は、口に入れたこともないものを、食べようとするはずもない。
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