私の存在

戒月冷音

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第157話

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「お兄様、お姉様。なんか怖いですよ」
笑っているお二人にそう言うと、2人は私の方を向いてにっこりと微笑む。
「今日は、良い日になったわ」
「本当に、ミシェルとたくさん話せたし、幸せなことも確認出来た」
「そうね。マルクス様が、しっかりとミシェルを
 支えてくださっていることは、分かったわ」

そう言って、私の頭をなでなでする2人。
私の大切な人たちが、安心してくれたのが嬉しい。
「では、デザートを・・・」
「もって参りましたー」
丁度のタイミングで、さっき厨房に走っていった料理人が、料理長とデザートを持って帰ってきた。
「ミシェル様、ジョージから聞きましたぞ」
デザートを持って来てくれた料理人さんは、ジョージさんというのか。
「あの、突然ですみません」
「いやいや。私達は、ミシェル様がいらっしゃるからこうして
 先に教えていただけたのです。
 えっと、オーギュスト公爵家と、コーエン侯爵家ですな」
「はい」
「その家の料理人が大丈夫であれば、出張してお教えすることは
 可能です。ただ・・・」
「「ただ?」」
口ごもった料理長に、反応したのはお兄様とお姉様。

「オーギュスト公爵家は、大丈夫だと思いますが、コーエン侯爵家は
 知らない料理の名を言っても、お分かりになるかどうか・・・」
「あぁー」
「そうですわね。その時は、どうしましょう?」
お姉様は、本気で悩んでしまった。
「でもさぁ、ハリーが話したことを、疑わないだろ?」
「ですが、本物は見たことないわ」
「そうだろうね。
 俺だって最初は、何だその名前?とか思ったもんな」
そうだったんだ・・・
「でも、食べれば分かる。どの料理もデザートもうまい」
「そうですわ。ですから今、ここにある物も美味しいんでしょう」
と並べ始めたデザートを、凝視するお姉様。

「アクイラス様。ハリエット様。
 ここにあるものは全て、美味しかったですよ」
「料理長?私達より先に?」
「私どもは、味見が出来ますので、皆様より先に
 味を知ることが出来ます」
「私も、料理人になろうかしら?」
「ハリーはやめておけ」
「お兄様、どうして?」
「お前は味見で、全て食べてしまう」
「食べないわよ」
そんなやり取りをしている間に、ジョージさんがデザートをセットしてくれた。

「お姉様。お姉様が料理人になってしまったら、
 コーエン家の皆様が、悲しみますから」
「やっぱりそうかしら?」
「お前なぁ、最後にのろけるの、やめろ」
そう言いながらお姉様はプリン、お兄様はラスクを食べ始めた。
私はほっとしながら、パンプディングを取った。
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