私の存在

戒月冷音

文字の大きさ
151 / 168

第158話

しおりを挟む
「ミシェル、それは何?家で見たことないわ」
「これはパンプディングと言います。
 パンの耳を、プリンの中に入れたものです」
「プリンの中に?」
「パンの耳って、あの固いところだろ?
 でも今ミシェルが取ったのは、全部がプルプルに見えたけど?」
「着けて、柔らかくしてあるのです}
「あぁ、そう言うことなのね。
 パンの耳に、水分を含ませてふにゃふにゃにしたのが、この
 プリンの中には言っているのね」
「はい。そう言うことです」
「すごいわね。
 あのプルプルで、いくつ食べても大丈夫そうなプリンが、
 しっかりしたお菓子になるのね」
お姉様はそう言うと、パンプディングを取って口に運ぶ。

ぱくっと口に入れ、モグモグと食べると
「何これ。
 プリンと全然違うじゃない。
 これはプリンではなく・・・んー・・・タルト?のような・・・
 良く分からないけど、美味しいから良いわ」
お姉様はそう言うと、食べるのをやめ私に飛び付いた。
「ミシェル。
 こんなに楽しいお茶会にしてくれてありがとう。
 今日のこの会は、ミシェルからの結婚祝いでしょ」
「つっ・・・お姉様、気付いて・・・」
「もちろんよ。貴方が王子妃教育を終えるまでに、私が
 コーエン侯爵家に嫁ぐから・・・」
「お姉様。私は自分の事しか見ていませんでした。
 自分が、転生者だからと前世に引っ張られた時も、お姉様だけは
 私を信じてくれた。
 料理の事も、お姉様が食べてみたいと言ってくれなきゃ、
 作ることもなかった。
 私はお姉様に、ずっと助けられてきたの。
 なのに、私は何も出来なかったから・・・
 だから、どこかでお返ししたいと思って・・・
 でも、私に何が出来るか、分からなくて・・・
 そしたらマルクス様が、ここに呼んでお茶会すればって・・・」
するとお兄様が、
「このお茶会は、マルクスのお陰か・・・」
と言った。

「はい、私がお姉様の輿入れの話を聞いた時、どうしようかと
 迷っていたら・・・」
「進言、してくれたんだな?」
「はい。マルクス様には、たくさん助けていただいてます」
私がそう言うと、お兄様もお姉様もほっとした。
「ミシェル」
「はい。お兄様」
「俺はね。ミシェルの事は疑っていないが、マルクスの事は半信半疑だった。
 けど、今日の事とか考えると、ミシェルとマルクスは、同郷なのだと分かった」
「それは、どういう・・・」
「食べるものは、一番その人のルーツになるものだ。
 私やハリエットが、この国の食べ物しか知らないように、
 口に入れたものが、自分が腹の中に入れてきたものになる」
それは、そうだと思う。
オーギュスト家の人達は、私の影響で日本食を知っているけれど、それ以外の人は、口に入れたこともないものを、食べようとするはずもない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愚かな恋

はるきりょう
恋愛
そして、呪文のように繰り返すのだ。「里美。好きなんだ」と。 私の顔を見て、私のではない名前を呼ぶ。

この別れは、きっと。

はるきりょう
恋愛
瑛士の背中を見ていられることが、どれほど幸せだったのか、きっと瑛士は知らないままだ。 ※小説家になろうサイト様にも掲載しています。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。内容も少し変更しておりますので、あわせてお楽しみください。

勘違い

ざっく
恋愛
貴族の学校で働くノエル。時々授業も受けつつ楽しく過ごしていた。 ある日、男性が話しかけてきて……。

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

【完結】あいしていると伝えたくて

ここ
恋愛
シファラは、生まれてからずっと、真っ暗な壁の中にいた。ジメジメした空間には明かり取りの窓すらない。こんなことは起きなかった。公爵の娘であるシファラが、身分の低い娼婦から生まれたのではなければ。 シファラの人生はその部屋で終わるはずだった。だが、想定外のことが起きて。 *恋愛要素は薄めです。これからって感じで終わります。

王子様の花嫁選抜

ひづき
恋愛
王妃の意向で花嫁の選抜会を開くことになった。 花嫁候補の一人に選ばれた他国の王女フェリシアは、王太子を見て一年前の邂逅を思い出す。 花嫁に選ばれたくないな、と、フェリシアは思った。

婚約破棄イベントが壊れた!

秋月一花
恋愛
 学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。  ――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!  ……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない! 「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」  おかしい、おかしい。絶対におかしい!  国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん! 2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。

処理中です...