私の存在

戒月冷音

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第159話

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食べることは、生きるものの本能であるが、食べたこともないものを平気で、口に出来るほど愚かではない。
「なのにマルクスは、ミシェルの出したものを、疑うこと無く口にした。
 それだけで、ミシェルが作る物事態を、知っていると言うことになる」
「そうですね」
「だったらもう、前世が同郷と思うしかないだろ」
そう言ったお兄様は、にっこりと微笑むと、私の後ろに目をやった。

私はそれに気付き、後ろを振り向くと、そこマルクス様がいた。
「マルクス様、どうしてここに?」
「君の様子を、見に来たんだけど・・・」
マルクス様はそう言うと、視線をお兄様に移す。
「まさかアクイラスに、こんな事を気付かれるとは、思わなかったんでね」
「すまないな。俺達は、ミシェルが転生者だと知っている。
 だから、そのミシェルと、普通に話せるマルクスが、不思議だったんだ」
「そうか・・・」

思いがけず、お兄様達にばれてしまったことに、マルクス様は身構えた。
しかし
「まぁ、アクイラスには、いつかばれると思っていたからいいよ」
とあっけらかんとしたマルクス様に、お兄様とお姉様はビックリしていた。
「気にならないのか?」
「ばれたら、気にしたってしょうがない」
「それは、そうだが・・・マルクスは、それで良いのか?」
「俺は、ミシェルのように前世に悔いがある訳じゃねぇ。
 ただ、前世の食いもんが旨かっただけに、また食いたいと思っただけだ。
 その料理を、ミシェルが材料を探して作ってくれる。
 それに、乗っかっただけだ。
 でも、俺がミシェルを好きになったのはそれだけじゃない。
 オーギュスト家の皆が、ミシェルを大切に。
 だけどしっかりと、育ててくれたお陰で、見た目じゃなく中身が、
 俺の望んでいた女性だったから、惚れたのであって、
 断じて食い物に、そそられた訳じゃないぞ」
顔を真っ赤にして、お庭で断言されたマルクス様。
その言葉を聞いただけで、私の顔も真っ赤になった。

「お兄様。ミシェルも真っ赤ですわよ」
「お姉様っ」
「本当に、俺の妹達はかわいいな」
「アクイラスの言葉は怖いが、ミシェルが可愛いのは同意だ」
「マルクス様っ」
私達は、最後に4人でデザートを食べ、時間になったので、お兄様とお姉様は帰っていった。


「どうだった?」
「来られたのですから、分かっておられますよね」
「それでも、ミシェルの言葉で聞きたい」
「もぅ・・・大変、有意義な時間を頂き、ありがとうございました」
「かたっ苦しい言い方はやめて」
「マルクス様の言っていたことが、分かりました。
 お姉様は嫁いでも私のお姉様で、私がマルクス様に嫁いでも、
 お兄様はお兄様です」
「俺が言った意味、解ったみたいだね」
「はい」
そう答えた後私は、マルクス様にエスコートされて部屋に戻る。
その後マルクス様は、夕食まで傍にいて、私の話を聞いてくださった。
私はそのお陰でスッキリして、それからの王子妃教育に全力を投じた。
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