私の存在

戒月冷音

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第160話

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それから数ヵ月後、お姉様はコーエン侯爵家に嫁いだ。
私は、お祝いにケーキを作った。
3段のケーキ。
材料を調べてスポンジを焼き、1段毎に挟むフルーツを変えてクリームを塗る。
1段目にはグレ、2段目にはライ、3段目にはブルベリー。
ブルベリーはブラックベリー。ブルーベリーより甘く大粒。
そして一番上にベリーを飾る。
ベリーは、前世のイチゴ。でもサイズが、3倍くらいある。
それを薄くスライスして外側から並べて・・・大輪の花を作った。

そのケーキを、コーエン侯爵家に送った。
すると、お姉様からの手紙でコーエン侯爵家で大好評だったと、後から知った。
特に侯爵夫人が大絶賛したらしく、どこのお店のものか一生懸命聞いてこられたらしい。
なので
「お義母様。申し訳ございません。
 こちらのケーキはお店のものではなく、妹のミシェルが作ったものでございます」
と言ったそうだ。
すると、ちょっと残念そうな表情をされたが
「姉のためにこんな美味しい物を作ってくれるなんて・・・良い妹さんなのね」
と言ってくださったそうだ。

そのときの嬉しさを伝えたくて、手紙を送ってくださった。
「本当に、ハリエットは嬉しかったのね」
「母上、ハリーはミシェルの株が上がったのを、喜んでいるのです」
「アクイラス。ハリエットの歓喜を、そのように言うのはダメだよ」
「ですが父上、どう考えてもこの文章はそうだと思いますよ」
「お兄様。お姉様の喜びが半減します。止めてください」
「・・・・・・はい。すみません」
お兄様は素直に謝り、家族皆で笑った。


その数週間後、私は16になる。
16歳は成人とされ、男女ともに社交界にデビューを果たす。
その最初の社交界への出席が、その人のデビュタントとなる。
「ミシェル、ハリエットも嫁ぎ、後はお前のデビュタントと婚姻。
 それとアクイラスの婚姻となる。
 ・・・が、アクイラス、お前の方はどうなのだ?」
「俺・・・ですか?」
「そうだ。ある程度の報告は受けているが、そこからの進展がないのは何故だ?」
「えっと・・・」

お兄様は、幼い頃から大好きな方がいて、その方に気付いてもらおうと色々やってきた。
しかし、その方は色事に鈍い部類の方で、ストレートに告白しても
「なんだ?誰かへの、告白の練習か?」
等と言って、絶対に自分の事だと思わない方なのだ。
「まさかここまでとは思っておらず、もうどうして良いのか
 分からないのですが・・・父上。どうすれば伝わるのですか?」
と半分涙目で、お父様にすがった。

けれど・・・

それって、余りに何度も言い続けてきたから、そう思うのではないのかしら?
案外、今までとは逆にしてみれば・・・
そう思った私は、そのままお兄様に伝える。
お兄様もそうかもしれないと言って、冷たく・・・まではいかないまでも、自分の方から会いに行くのを。少なくしていくようにしてみるようだった。
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