私の存在

戒月冷音

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第164話

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「本当に、似た者夫婦になりそうですね{
「うるさいよ。ルーザ。さっさと片付けて行ってくれ」
「分かりました」
カチャカチャ
「ではこれで、失礼いたします」
ルーザさんはそのまま、カートを押して出ていった。

「ごめん。人前で、あんな事をしてしまって・・・」
「いいえ。ですがひとつ、聞いて良いでしょうか?」
「なに?」
「マルクス様は前世で、あんな感じに、異性と関わって
 いらっしゃったのですか?」
「えっ!?」
「私は、前世も今も、あのような交流の経験がありませんでしたので、
 さっきの行動で、あっていたのかと、心配になって・・・」
私は悩むより、聞いた方が良いと思った。

前世の家族は、そんなことしなければ、手も繋いだことはない。
ちょっとでも触れれば、バシッとはたかれるのが普通だった。
今のオーギュスト家ではそんなことはないが、お兄様とお姉様が私を構ってくださるので、先ほどのようなことをしたことはない。
だから、どうして良いか分からなかったのが、正しい。
でも素直には言えないから、そう聞いてみた。

「あーーー・・・ごめん。俺、この癖、こっちに来てからなんだ」
「そうなのですね」
「母上が、体調を崩したのがまだ小さいときで・・・
 ずっと、眠っていた母上にくっつくと、スッゴク安心したから・・・」
「それで・・・でもさっき、あっちじゃないって」
「そう言ったのは、前世の俺は、男女構わず人前での相手との距離が
 近かったんだ。
 結婚して、嫁さんに言われてやめたんだけど、母上で戻ったって言うか・・・」 
 では、マルクス様が寂しそうな時は、さっきのようにすれば良いわけですね。
 分かりました」
「いやいや、人前ではしないからね」
「さっきは、ルーザさんの前でしたよ?」
「ルーザは知ってたから、つい・・・」
「そう、でしたね」
私は心に少しの痛みを感じながら、それを感じさせないように話した・・・はずだった。

「ミシェル?なにか、気になった?」
そう聞かれてピクッとした。
「何が?」
マルクス様は私を、じっとみたまま動こうとしない。
私はこんな時、どうすれば良いか分からない。
今まで、人にか変わってこなかったから・・・
前世では、関わらせてもらえなかったから・・・
でも、そんな理屈を並べて逃げている自分も、嫌いだった。

だから・・・
「わ、私以外の前で、しないでほしい」
「えっ?」
マルクス様はビックリした顔をしていた。
私は恥ずかしくなって下をむく。
マルクス様はそんな私をみて、満足そうな笑みを浮かべた。
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