私の存在

戒月冷音

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第8話

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私はその日から、家族全体に構われるようになった。

朝起きて、姉の着せ替えとなり、兄が迎えに来て一緒にダイニングへと向かう。
家族全員で朝食を取り、兄と姉は勉強に向かう。
私から離れない姉を、兄が抱え、
「おねぇちゃま、がんばっちぇくらはい」
と私が言うまで、格闘している。
私に頑張れと言われた姉は、スイッチが入ったかのようにしっかりして
「お兄様、行きますわよ」
と、兄を置いて先に行ってしまう。

その後
「おにいちゃま、いちゅもおちゅかれさまでしゅ。がんばっちぇ」
と言うと
「ありがとう。勉強頑張ってくるね」
と言って兄は部屋に戻っていくのだ。


そんな2人を見送った後、私は何故か父の膝の上に座らせられ、2つ目のデザートを母にあーんされながら食べている。
「やーん、可愛い。こんなに可愛い時期を見逃すなんて…信じられないわ」
「本当だね。あんな訳のわからない事をしでかした候爵に、講義しておこうか?」
「そうですわね。
 私達は出来るだけ、子育てに専念したいと伝えていたにも関わらず
 やってくれましたからねぇ」
「こうちゃくってなぁに?」
私は知らない言葉に反応し聞いてみた。

「そんな言葉も、気になるのか?ミシェルは」
「身分は難しいのよ。ミシェルはもう少し大きくなってからにしましょう」
「やっ。ちってる。だんちゃく、しちゃく、はくちゃく」
「まぁ、誰に教わったの?」
「おにいちゃまと、おねえちゃま」
「じゃあ伯爵の上は?」
「こうちゃく?」
「そうだよ。でもね、こうしゃくは二種類ある」
「ふたちゅ?」
「そう、2つある。
 簡単に言うと王族の血縁の公爵と、その縁戚の侯爵だ」
「わたちの、おうちは?」
「家は公爵。ミシェルのお祖母様が、先王陛下の一番下の妹だ」

は!?私公爵令嬢なの?

その後、私は固まった。自分が公爵令嬢ということは、大きくなったら皆の手本になる存在になるということだ。
その席の重さを考えた時、これから始まるであろう教養やマナーの勉強が地獄になるだろうと予想した。
また、さっき送り出した兄と姉の勉強の時間が、自分にも取られるものだと思うと少し憂鬱になった。

「ミシェル、どうしたの?何でそんなに悲しい顔してるの?」
「私が、難しい事を言ったからか?
 今はそんな事忘れていいから、笑顔を見せてくれないか?」
「そうよ、ミシェル。お父様はこれからお仕事なのよ。
 そんな顔見せたら、気になって仕事が手につかないわ」

母にそう言われ、そのとおりだと思って顔を上げると、私の頭の上に今にも泣きそうな父の顔があった。
「おとうちゃま、らいじょうぶよ。おとうちゃま、わるくない」
「ミシェル~」
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