私の存在

戒月冷音

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第42話

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「今日は、前回側妃様が気に入ってくださった、パウンドケーキと…」
と、お菓子の説明を始めたところで、ヘンドリック様が帰ってこられた。

「すまない。私達も、参加させてもらってもいいだろうか?」
「あの…カサンドラ様も、ご一緒ですか?」
すぐに確認したのは、側妃様。
「あぁ…だめだろうか?」
「いいえ。私は大丈夫ですが、マルクスは…」
「俺は大丈夫です。ミシェル嬢、よろしいでしょうか?」
「はい。大丈夫です」
「有り難う」
「ありがとう存じますわ。ミシェル・オーギュスト様。
 わたくしは、カサンドラ・コーラルと申します。ヘンドリック様の婚約者ですわ」
と言って、コーラル公爵令嬢様は、綺麗なカーテシーを披露した。

私は急いで立ち上がり
「初めてお会いいたします。ミシェル・オーギュストと申します。
 よろしくお願いします」
と、カーテシーをした。
「有り難う。私…あまりいい印象がないの。大丈夫かしら?」
「いい印象なのかどうかは、私も初めてなので分かりませんが、
 印象は、その方によって変わりますので、私は他の方の評価は気にしません」
「そ、そうなのね」
「はい。ですが、よろしいのですか?」
「何が?」
「コーラル公爵令嬢様は、ヘンドリック様とお過ごしになるために、
 こちらに来られたのではないのですか?」
私は直球で聞いた。
すると
「いいえ。本日私は、王妃様に呼ばれたのですが、なぜかこちらに行きなさい
 と、言われたのです。」
と、コーラル公爵令嬢様は、素直に教えてくださった。

ヘンドリック様は、はーーっ…と息を吐き
「母上の仕込みだろう」
と言った。
「「仕込み?」」
私とマルクス様の声がダブり、側妃様は首を傾げた。

「母上は先日、何処からか新しいお菓子のことを聞いたらしく、
 出どころを調べたいらしい。
 その為に彼女を、茶会に送り続けたらしいのです」
「数ヶ月前から突然、王妃様に呼ばれたと思えば、あそこに行け
 ここに行けと、言われたのです。
 帰ってきたら、新しいお菓子はあったかどうか聞かれるのです。
 私は、何のことか分からなかったのですが、言われた通り報告しておりました」

王妃様…

やっぱり、前世の姉にそっくり。
ということは、新しいお菓子が見つかるまで、コーラル公爵令嬢様が振り回される。
私はそう解釈して
「ではそれも、今日で終わりますね」
と言った。
「どうしてですか?オーギュスト公爵令嬢様」
「ミシェルで、いいですよ」
「では私も、カサンドラでお願いします」
「分かりました。カサンドラ様。今日で終わりというのは、ここに…」
私はそう言って、持ってきていた荷物を開け
「新しいお菓子があるからですわ」
パウンドケーキを取り出した。
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