私の存在

戒月冷音

文字の大きさ
52 / 168

第56話

しおりを挟む
「お姉様。間に合ったのですね」
私がそう声をかけると、ハッとした後、何度も瞬きをしてから
「ミシェルが、私より年上に見えるのだけれど…」
とポソッと言った。

「お姉様。お姉様はお綺麗です」
「そお?ありがとう。なんか複雑ですけど…」
「あのねお姉様。私がAラインを着ると、バランスがおかしくなるの」
「何のバランス?」
「お姉様は出るところは出て、締めるところは締めてらっしゃるでしょ」
「まぁ、そうね」
「でも私は…締めるとこは締めてても、出るところがないから…」
そう言って自分の胸を見ると、ツルペタだった。
「だからこの形になったの。私も、お姉様のような体型になりたいです」
私の言葉に機嫌をよくしたお姉様は、ニッコリと笑って私を抱きしめる。

「ありがとうミシェル。
 貴女も素敵よ。私より年上って言ったのは、悪かったわ。
 気を使わせてしまったわね」
「いいえ。お姉様にそんな気はないと、知っておりますから」
「ん~~~、可愛い」
お姉様と互いに、綺麗、可愛いと言っていると
「まあまあ私の天使たちが、美しくなっているわぁ」
2階から、そんな声が聞こえた。
「「お母様」」
「母上」
「メリテッサ。変わらず美しいな」
お父様はそう言いながら、2階への階段を駆け上がると、母上をエスコートして階段を降りた。


「これで全員、準備が整ったね。では出発しようか」
お父様の一言で、全員が動き出し、私達は馬車に乗り込む。
前の馬車には両親が、後ろの馬車には私達子供が乗り、出発する。

この馬車は、馬車の中でもう一台に乗る人と、会話することが可能だ
「お父様、今日の顔合わせにはやっぱり、王妃様もご出席ですか?」
「あぁ、そのようだ。ご自分から出席すると、言われたそうだ」
「そうですか…お菓子は準備しておりませんが、大丈夫ですか?」
「はははっ。
 流石に、今日の席でそんな事言ったら、国王陛下の説教
 どころじゃないからな」
「国王陛下は、何時もはお優しいですが、怒られると怖いので…」
「お母様って、国王陛下のことも、ご存知なのですよね」
「えぇ、そうよ。前王妃陛下は私を、婚約者にしようとされましたからね」
「えっ!?ても、お父様と…」
「私はアンソニーを愛していましたから、丁重にお断りいたしましたの」
「メリテッサ」
お父様の切なそうな声の後、お兄様は静かに拡張器の蓋を閉じた。

王妃様の出席が確定なのなら、出来るだけ目を合わせないようにして、話は両親に任せることにした。
しかし
「あの王妃がいるのか…」
「お兄様。どうしますか?
 ヘンドリック様とカサンドラ様に、お願いしますか?」
「どうしようか?」
などと、不穏な会話を続ける兄姉を、私は笑ってみているしか無かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愚かな恋

はるきりょう
恋愛
そして、呪文のように繰り返すのだ。「里美。好きなんだ」と。 私の顔を見て、私のではない名前を呼ぶ。

この別れは、きっと。

はるきりょう
恋愛
瑛士の背中を見ていられることが、どれほど幸せだったのか、きっと瑛士は知らないままだ。 ※小説家になろうサイト様にも掲載しています。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。内容も少し変更しておりますので、あわせてお楽しみください。

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

【完結】あいしていると伝えたくて

ここ
恋愛
シファラは、生まれてからずっと、真っ暗な壁の中にいた。ジメジメした空間には明かり取りの窓すらない。こんなことは起きなかった。公爵の娘であるシファラが、身分の低い娼婦から生まれたのではなければ。 シファラの人生はその部屋で終わるはずだった。だが、想定外のことが起きて。 *恋愛要素は薄めです。これからって感じで終わります。

マジメにやってよ!王子様

猫枕
恋愛
伯爵令嬢ローズ・ターナー(12)はエリック第一王子(12)主宰のお茶会に参加する。 エリックのイタズラで危うく命を落としそうになったローズ。 生死をさまよったローズが意識を取り戻すと、エリックが責任を取る形で両家の間に婚約が成立していた。 その後のエリックとの日々は馬鹿らしくも楽しい毎日ではあったが、お年頃になったローズは周りのご令嬢達のようにステキな恋がしたい。 ふざけてばかりのエリックに不満をもつローズだったが。 「私は王子のサンドバッグ」 のエリックとローズの別世界バージョン。 登場人物の立ち位置は少しずつ違っています。

秋色のおくりもの

藤谷 郁
恋愛
私が恋した透さんは、ご近所のお兄さん。ある日、彼に見合い話が持ち上がって―― ※エブリスタさまにも投稿します

王弟が愛した娘 —音に響く運命—

Aster22
恋愛
村で薬師として過ごしていたセラは、 ハープの音に宿る才を王弟レオに見初められる。 その出会いは、静かな日々を終わらせ、 彼女を王宮の闇と陰謀に引き寄せていく。

処理中です...