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第72話
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私は、この人達と家族になるかも、しれないんだ…
マルクス様の顔を見ながらそう思った時、私はとても嬉しくなった。
ずっと見ていたマルクス様の顔が、私の方を向き互いの視線が重なった時、ポッと顔が熱くなって、慌てて目をそらす。
すると、マルクス様も数度、咳払いをしてから
「と、とりあえず部屋に行こう」
と言って歩き出した。
部屋につくと、入口に一人の侍女が立っていた。
「マルクス様、ミシェル様。
この部屋の担当となりました、ルーザと申します。
宜しくお願い致します」
「よろしく。中には入れるんだよな?」
「はい。どうぞ」
そう言って、入口の扉をルーザさんが開けると、そこには広々とした空間が広がっていた。
「こ、こんなに広いお部屋をお借りして、よろしいのですか?」
「えっ、広い?俺の部屋と、同じだと思うんだけど…」
私は家で、一番狭い部屋を自分の部屋にしていた。
お父様とお母様が、もっと広い部屋があるのにというのだけれど、あまり広い部屋は落ち着かなかった。
だから、つい出てしまった言葉ではあるのだが…
「あっ、そうか。もしかして3Dkとかの感覚?」
と、すぐに気づいて下さるマルクス様に、ホッとする。
「…はい」
私は、そう返すが
「なんですか?そのサンディーケイって」
とルーザさんに言われ、これが普通なんだなと学んだ。
「俺達だけが、分かる言葉だ。
そういう話をこれからもするんだけど、あまり気にしないでくれ」
「畏まりました」
ルーザさんはそう言うと中に入り、飲み物の準備を始める。
「とりあえず、座ろうか」
マルクス様にそう言われ、ソファに座ると、ルーザさんがそこにカップを置く。
「マルクス様。普通、向かいに座ると思うのですが…」
「ルーザ。それを置いたら、すぐに退出。呼ぶまで入ってくるな」
「マルクス様。婚姻前の男女は、「婚約したから良いの」
「えっ!?そうなのですか?」
「そうなの」
そのやり取りの後、ルーザさんは私を見る。
「本当…です」
私がそう言うと
「申し訳ございません。速やかに退出致します」
と言って、紅茶を並べると、スタタタタッと出ていってしまった。
「ごめん。
ルーザは侍女長の娘で、子供の頃から居るから、あんな感じになるんだ」
「幼馴染…ですか?」
「みたいな、感じかな。でも、何も無いからね」
慌てて否定するマルクス様は、何処か可愛い。
ん?可愛い?誰が?…あっ、マルクス様か。
私がそんな事を考えていると、マルクス様は私の手を取って、祈るように額に当てる。
「良かった。君が、俺を諦めなくて…」
「えっと…その」
「この話が出た時、俺も心配したんだ」
「どうして…」
「君が、他の人を選んでしまったら、俺にはどうしようもないからね」
「でも、私なんかを選ぶより、利益があるかもしれませんよ」
「ミシェル。私なんかって、言うな」
「でも…」
「君は俺の宝で、絶対に離れたくない相手だと言っただろ。
大切なんだ。傍に居たいんだ」
「それは私も…」
そういった瞬間、手を離して抱きしめられる。
「愛しているんだ。
だから、俺の大切な人を、何かなんて言わないでくれ。
俺は同郷以前に、君に惚れてる。
君の性格に、気の強さに、そして、優しさに。
何度かここで会って話して、そう思った。
だから、俺から離れないで。俺に君を守らせて…」
マルクス様の顔を見ながらそう思った時、私はとても嬉しくなった。
ずっと見ていたマルクス様の顔が、私の方を向き互いの視線が重なった時、ポッと顔が熱くなって、慌てて目をそらす。
すると、マルクス様も数度、咳払いをしてから
「と、とりあえず部屋に行こう」
と言って歩き出した。
部屋につくと、入口に一人の侍女が立っていた。
「マルクス様、ミシェル様。
この部屋の担当となりました、ルーザと申します。
宜しくお願い致します」
「よろしく。中には入れるんだよな?」
「はい。どうぞ」
そう言って、入口の扉をルーザさんが開けると、そこには広々とした空間が広がっていた。
「こ、こんなに広いお部屋をお借りして、よろしいのですか?」
「えっ、広い?俺の部屋と、同じだと思うんだけど…」
私は家で、一番狭い部屋を自分の部屋にしていた。
お父様とお母様が、もっと広い部屋があるのにというのだけれど、あまり広い部屋は落ち着かなかった。
だから、つい出てしまった言葉ではあるのだが…
「あっ、そうか。もしかして3Dkとかの感覚?」
と、すぐに気づいて下さるマルクス様に、ホッとする。
「…はい」
私は、そう返すが
「なんですか?そのサンディーケイって」
とルーザさんに言われ、これが普通なんだなと学んだ。
「俺達だけが、分かる言葉だ。
そういう話をこれからもするんだけど、あまり気にしないでくれ」
「畏まりました」
ルーザさんはそう言うと中に入り、飲み物の準備を始める。
「とりあえず、座ろうか」
マルクス様にそう言われ、ソファに座ると、ルーザさんがそこにカップを置く。
「マルクス様。普通、向かいに座ると思うのですが…」
「ルーザ。それを置いたら、すぐに退出。呼ぶまで入ってくるな」
「マルクス様。婚姻前の男女は、「婚約したから良いの」
「えっ!?そうなのですか?」
「そうなの」
そのやり取りの後、ルーザさんは私を見る。
「本当…です」
私がそう言うと
「申し訳ございません。速やかに退出致します」
と言って、紅茶を並べると、スタタタタッと出ていってしまった。
「ごめん。
ルーザは侍女長の娘で、子供の頃から居るから、あんな感じになるんだ」
「幼馴染…ですか?」
「みたいな、感じかな。でも、何も無いからね」
慌てて否定するマルクス様は、何処か可愛い。
ん?可愛い?誰が?…あっ、マルクス様か。
私がそんな事を考えていると、マルクス様は私の手を取って、祈るように額に当てる。
「良かった。君が、俺を諦めなくて…」
「えっと…その」
「この話が出た時、俺も心配したんだ」
「どうして…」
「君が、他の人を選んでしまったら、俺にはどうしようもないからね」
「でも、私なんかを選ぶより、利益があるかもしれませんよ」
「ミシェル。私なんかって、言うな」
「でも…」
「君は俺の宝で、絶対に離れたくない相手だと言っただろ。
大切なんだ。傍に居たいんだ」
「それは私も…」
そういった瞬間、手を離して抱きしめられる。
「愛しているんだ。
だから、俺の大切な人を、何かなんて言わないでくれ。
俺は同郷以前に、君に惚れてる。
君の性格に、気の強さに、そして、優しさに。
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だから、俺から離れないで。俺に君を守らせて…」
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