私の存在

戒月冷音

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第73話

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私はマルクス様の言葉に腕を伸ばしぎゅっと抱きしめることで答える。

貴男は、私を分かって下さる…
ただただそれが、嬉しかった。

前世の15年、全く愛を知らなかった私が、今世の15年で家族の愛を知りそして、愛する事ができた。
それだけでも凄い事なのに、今度は彼に愛してもらえた。
もちろん私に経験はないが、人から受ける好意はこんなにも嬉しく、ありがたいものだと感じた。

「私が守ってほしい。守りたい相手は、マルクス様だけです。
 隣国の王子に、関心も興味もはありません。
 私が大切なのは、貴男だけ…そこは変わりませんから…」
私は今の気持ちを、できるだけ言葉にして伝えた。
すると、マルクス様の顔は真っ赤になり、私の肩口に顔を埋めてしまった。
肩が…あつい…

そんな事を思いながら、しばらくそのままで居ると、コンコンと扉がノックされ
「お夕食の準備が、整ったとのことでございます」
と、ルーザの声が響いた。
マルクス様はゆっくりと顔を上げ、私を見ると、頬にチュッとキスを落としてから、立ち上がり
「行きましょうか」
と手を差し出した。
私は何が起こったのか、一瞬わからず、ボーっとしていたが、次第に頭が理解し始めると、一気に全身が真っ赤になった。
しかし、マルクス様をそのまま放置するわけにもいかず、差し出された手を取り立ち上がると
「後で、覚えておいてくださいね」
と言ったが、彼の顔は見れなかった。


その顔のままダイニングに行った私は、マルガ様の興味をそそったようで
「何かあったの?」
攻撃を受け、隣のマルクス様は終始微笑まれ、大変な夕食を頂いた。
緊張のあまり、味がわからない時があったが、何とか粗相せずその場をしのいだ。
国王陛下は、マルガ様とマルクス様のやり取りを、嬉しそうに見つめていて、とても幸せそうだった。

そして今、私とマルクス様は、国王様に呼び出されて応接室に来ていた。
「座ってくれるか?」
「「はい」」
私達は、国王様の向かいに座る。

侍女が飲み物を準備し、机に並べると
「全員、体退出してくれ」
「畏まりました」
というやり取りの後、数人居た侍女は部屋を出ていった。

「こんな時間に、すまんな」
「いいえ。陛下がお忙しい事は、知っております」
国王陛下と、マルクス様の会話から始まったお話…
「このような席で、陛下はやめろ」
「すみません父上。それで、お話というのは?」
「マルクスの転生のことを、話そうと思ったのだが、まさか彼女も
 同じだと思ってなくてな」
「えっ!?」
マルクス様は驚いた後、私を見て
「話したの?」
と聞いた。
「はい。マルクス様のことをご存知でしたし、良いかなぁと」
「良いかなぁ~で、決めちゃ駄目でしょ」
「でも、マルクス様のお父様ですし、マルクス様、
 無意識にやっちゃってましたから、それに便乗したほうが楽かなぁと」
私がそう言うと、マルクス様ははーーっと息を吐いた。
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