私の存在

戒月冷音

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第74話

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その後、私とマルクス様は、前世の話をしていくことになった。
この話は国王陛下だけにと止め、けして外部に漏らさないと、約束を取り付けてからの話だった。

「俺達が前世に居たのは、地球という星の日本という国でした」
「日本…」
最初に、マルクス様が説明していく。
「俺は53まで、生きてました」
「わ、私は、15…です」
「53…俺より、年上だったのか?」
「はい。
 ですが、今の環境とは全く違うので、学んでいくしかありません。
 出来るだけ、兄上についていけるように、頑張っては居ますが、
 難しいですね」

「だが、計算や文章を読み解く力はすごいと、
 ヘンドリックが言っていたが…」
「あー、計算は…ねぇ」
「はい。私も計算は得意で。
 一度、家庭教師の先生にやり方を説明したときは、驚かれました」
「家庭教師…
 あぁ、確か各部署で認められ、その上他の分野でも力を発揮した、あの…」
「はい。あの方です。ですがそれから私は、誰にも教えなくなりました」
「それは、何故?」
「私の持っている知識は、この国にとって、
 進みすぎているものだと思ったからです。
 人の人生を変えてしまうものは、出してはいけないと思い、
 その後から私は、家にこもりました」

「籠もった?」
「父上。
 彼女は、俺との話で出るまで、ほとんど社交にも出ていませんでした。
 それを見かねたオーギュスト家の方々が、何とか外の連れ出そうと必死でしたよ」
「あぁ確かに。オーギュスト公が悩んでいたな」
「えっ!?お父様が?」
「末の娘が、何か悩んでいるようなのだが…とブツブツ言っていた」
お父様…

「それで、マルクスはどうして、俺に話そうと思ったんだ?」
「ミシェル嬢から、幼い頃のやらかしを聞いたから…
 なのもありますが、彼女が作ってきてくれるお菓子を食べていると、
 思い出すんです。
 パウンドケーキは、よく作ってもらったとか、きんつばは
 俺の好物だったとか…」
「そうか…」
「だから、父上が知っているのなら、話した法が良いと思ったのです。
 そしたら、彼女も言ってしまったと言うので、
 2人で、聞いて…もら、おうと…」
マルクス様は、少し苦しそうだ。
「俺は、今の生が嫌という事は、絶対にないのですが、流石に53年も
 生きていたので、何かあるとあの時は…
 とか思い出してしまうのです。それでっ…」
すると、国王様は
「分かっている。分かっているから、落ち着きなさい」
そう言って、マルクス様をなだめた。
「お前が、今を嫌っているなど、考えたこともない。
 ただ、俺が知らない前世というのが、どのような場所だったか、
 知りたいだけの、ただの好奇心だと思ってくれ。
 それで、なにかしようとかは、考えていないぞ」
国王様はそう言って豪快な笑った。
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