私の存在

戒月冷音

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第75話

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「ただ、ミシェル嬢のお菓子は、王妃の目にとまってしまったな」
「はい。やはり、前世のものを出しては、いけなかったようです」
「?まさか、あのお菓子は…」
「先程、マルクス様が言われた通り、前世にあるものを、こちらの材料で
 再現したものです」
「再現?」
「材料の名前が、同じだとは限りません」
「それは、どういう…」
「こちらで、ジャライモと呼ばれているものは、前世では
 じゃがいもと言いました。
 コールはアルコール。エールはビールで、これには種類がたくさんありました」

「原材料の名が、違うということか?」
「はい。ですのでそれを調べ、同じ物、違うものを分け、そこからまた
 材料を作るといった、作業を繰り返してできたのが、お菓子です」
「昼に食べたお菓子は、その様に手間を掛けて作っていたのか?」
「はい。材料が違うということは、そのものに含まれる栄養なども
 変わってきます。実際糖は、前世の砂糖とは違いました」
「そうだったのか?」
これにはマルクス様も不思議がる。

「マルクス様。プリンのキャラメルを思い出してください」
「あぁ、あの茶色い部分か」
「はい。国王様、砂糖という材料は熱すると焦げて茶色くなるのですが、
 こちらの糖は、熱しても色はつきません」
「え、じゃあ透明なまま?」
「はい、そうだったんです。
 プリンというお菓子に、色を付ける為に入れるキャラメルが
 作れないということになります」
「プリン本体は、作れるのか?」
「プリンは作れました。全部一色でしたけど」
「お、おい。俺にも分かるように説明してくれ」
「あっ、すみません。すぐ、準備致します」
「「準備?」」
国王陛下と、マルクス様の声が重なる。

私は一度、外に出る許可をもらい、一緒に来ていた侍女から預かった物を、持ってきてほしいと王城の次女さんに頼む。
侍女さんは、すぐに確認して持ってくると言い、走っていった。

私は部屋に戻り、少し待ってほしいことを告げると、しばらくして侍女さんが、ノックをして入ってきた。
「ミシェル様、こちらで間違いないでしょうか?」
ワゴンを持ち、その上に置かれているバスケットを確認すると、中身はひんやりとして、ついさっきまで冷やしてあった事がわかった。
「こちら、冷蔵室に入ってまして、こちらのバスケットに入れていくように
 聞いていると…渡された者が言っておりました」
「はい。たしかに合っております。ありがとうございます」

私はそう言ってバスケットを受け取ると、中にはいっているケースを取り出す。
「それは?」
「まさか…」
中に入っているのは、こちらの材料で作ったプリン。
こちらの卵は黄身は、赤みを帯びているので、完成したプリンはオレンジ一色になった。
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