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もつれた糸をほどく
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お互い自然に振る舞っているようでいて、先週より確実にぎこちない空気のまま週末を迎えた。
土曜日は朝からずっと雨だった。私は溜まっていたアイロンがけを一気にこなし、近くのスーパーに買い出しに出掛けた。藤堂さんは書類とノートパソコンを持ち帰っていて、ほとんど丸一日和室にこもって仕事をしていた。
なんとなく避けられているような気もしたけれど、食事やお茶で顔を合わすとき、藤堂さんは何か言いたそうな眼でチラリと私を見つめてきた。たぶん私も同じような眼で藤堂さんを見ていたので、お互いますます何を話していいか分からなくなって、曖昧な笑顔で取り繕い会話も途切れがちだった。
先週末に戻りたかった。夜、部屋のベッドで一人になって、なんだか無性に淋しくて泣けてきた。
翌日は、昨日の雨が嘘のように真っ青な空が広がった。
私は学生時代の友達とランチの約束をしていた。9月も下旬になり、ワンピースに薄手のカーディガンでちょうどいいくらいの季節だ。メイクをして久しぶりにイヤリングもつけると、ジョギングから戻って庭でストレッチをしている藤堂さんに声をかけた。グレーのウェアを着ていて、肌が汗で少し濡れている。
「藤堂さん、ちょっと出掛けてきます。夕方には帰ります」
振り返った藤堂さんは、私の少しめかしこんだ姿を見てハッとしたような表情になった。
「あっ・・・そうか、分かった。俺も今日は夕方前に出掛けるんだ」
「そうなんですか?じゃあ夜まで・・・?」
「うん。前の会社の同期が家を建てたって言うんで、新築祝いの集まりに呼ばれてて。たぶんそのまま飲みに行くから、夕飯はいらないよ。遅くなると思う」
藤堂さんは縁側から居間に上がってくると、タオルで首筋を拭きながら私をまじまじと見つめた。ここ数日でこんなに真っすぐ見つめられるのは初めてだったので、思わず頬が染まりかけた。
「似合うな、そのカッコ。・・・可愛いよ」
・・・ああ、ダメだ。ほっぺたが燃えそうに熱くなる。私が赤面するのを見て、藤堂さんはフッと視線をそらした。
「あいつとデートか。楽しんで来いよ」
「・・・?!あいつって、誰ですか?それに、デートじゃないです」
私はついムキになって無意識に一歩近寄った。やっぱり藤堂さんは何か誤解している。
「え?違うの?・・・室井と逢うんじゃないのか?」
「ええっ?なんで室井くんが出てくるんですか?全然違います・・・!今日は女友達とランチするだけですよ」
「あ・・・そうなんだ。ごめん、勘違いしてた」
藤堂さんの瞳に何かホッとしたような色が見えた気がして、私の胸が一気に騒ぎだした。
ダメダメ、自惚れちゃダメ。だって藤堂さんには札幌に彼女がいるのかもしれないのに。
「あの、室井くんってよくふざけていろいろ言いますけど、全然違うんです。あの子はただの後輩です。なんかもう、いつも変なこと言うからウンザリしてるんです」
「・・・そうか。うん、分かった」
藤堂さんの頬の筋肉が、心なしか緩んだように見えた。
「それじゃ、お先に行ってきます。戸締りよろしくお願いしますね」
私はなんだかすごく恥ずかしくなって、足早に玄関に向かった。藤堂さんが、見送るように玄関までついてくる。
買ってもらった例のパンプスを履く様子をじっと見られていた。なかなか頬の赤みが引かないまま、私は顔を上げて「行ってきます」ともう一度言った。
「いってらっしゃい。気をつけろよ。・・・本当によく似合ってるよ。服も靴も。俺がデートに誘いたいくらい」
冗談ぽい口調だったけれど、想定外の言葉にびっくりした。私が更に耳まで真っ赤になったので、藤堂さんも慌てたように「ほら、遅れるぞ」と私の背中を玄関から押し出した。
門を開けて通りを歩きだしても、ドキドキがまったく収まらない。からかっただけに決まっているのに、藤堂さんの言葉が私の耳から離れなくて困ってしまった。
「えっ!一緒に住んでるの?マジで?うそ、それチャンスじゃん!」
友人の香苗とカジュアルフレンチの店でランチし、カフェに場所を移してから藤堂さんのことを打ち明けた。香苗にだけは、5年前の藤堂さんとの出来事を話してある。学生の頃から私のあまり器用ではない性格をよく理解してくれていて、悩みがあるときも香苗にだけは信頼して話すことができた。
「でもただの同居人って感じだよ。全然、手も出されないし。札幌に彼女がいるかもだし」
「彼女?本人がそう言ったの?」
「いや、そうじゃないけど。噂で・・・」
私はチョコレートとバナナが盛られたパンケーキをちまちま食べながら、まだクリアになっていない疑惑を改めて思い起こしてまた落ち込みかけた。
「でもさぁ、その、藤堂さん?もう34でしょ?何年も札幌にいて、転職のためにこっちに戻ってきたんだっけ。普通その年齢で向こうに彼女がいたら、東京に戻る時点で一緒に連れてこない?すぐには無理だとしても、こっちに骨埋める気なら彼女呼び寄せて結婚しない?でも話聞いてる限り、そういう気配なさげじゃん。しかも一人暮らしの鞠子の家に一緒に住んじゃうってさぁ、他に女がいるとは到底思えないけどなぁ」
「香苗は藤堂さんを見たことないから。めちゃくちゃカッコいいんだよ。すっごい仕事もできるし、あれで彼女がいないなんて、ちょっと信じられないよ」
自分で言いながら、だんだん滅入ってくる。そうだ、さっきまでちょっと「可愛い」とか褒められて調子に乗っていたけれど、現実は厳しいのだ。
「うーん、どうだろね。案外高スペックのイケメンって、どーせ無理とか敬遠されて売れ残ってるパターンもありそうだけどねぇ」
「・・・そうなの?普通、みんな狙わない?」
「でもさ、女って現実見るじゃん。リスクを見極めるでしょ?イケメンとつきあってもモテるからしょっちゅう心配しなきゃいけいし、引け目も感じるし、それよりは気負わずに済むフツーのオトコ捕まえてさっさと結婚したほうがいいわー、みたいな子って多くない?」
香苗は「一口ちょうだい」と言って私のパンケーキにフォークを持った手を伸ばしてきた。
私は会社での藤堂さんの様子を思い起こした。たしかにうちの女子社員たちは皆、藤堂さんに憧れている。いるけれど、現実的に恋愛対象としては見ていないような気がした。遠巻きに鑑賞して騒いで、でも実際の彼氏は他で見つける、みたいな感じなのだ。
「イケメンはモテ人生を歩んできてるから、自分から必死で女を口説くのに慣れてなかったりするのよね。で、のんびりしてるうちに気付いたら周りはみんな結婚してて俺ひとりぼっち?みたいなパターン、少なくないと思うんだよね。それで急に焦りだして、結局若いだけが取り柄のしたたかで薄っぺらい女に捕まったりね」
相変らず香苗の言葉は辛辣だ。何故か私の脳裏に後輩の松下さんの顔が浮かんだ。彼女がしたたかだとは言わないが、たしかに藤堂さんみたいな男の人に堂々とアタックできるのは、よほどの自信家か松下さんのように若くて怖いもの知らずの子くらいかもしれない。
「あんたと藤堂さんは昔、一度だけ関係を持ったわけでしょ。しかも今は同じ職場で上司と部下なわけじゃない?そういう面倒くさい間柄なのに鞠子の家に一緒に住むことを同意した時点で、向こうだって絶対悪い感情は持ってないと思うよ。ややこしいことになるのが嫌な相手なら、家に転がり込んだりしないって。30過ぎた男はリスクは避けるもんだよ。・・・たぶん」
たぶん、と付け足すところが香苗らしくて笑ってしまう。香苗は自称恋愛ハンターで何度も恋をしては玉砕しているので、何気に恋愛心理とか男の習性みたいなものに詳しいと自負している。
「たしかに私から見てても藤堂さん、うちで暮らすのすごく楽しんでるみたいだけど・・・。それは家自体を気に入ってくれてるからだと思うよ」
「そうだとしてもさ。好きじゃない他人と一緒に暮らすのって、普通はすごいストレスだよ?あんただって、藤堂さんだから毎日楽しいわけでしょ」
「うん・・・。それはもちろん、そう」
「一緒にいて楽しいなら、それだけ相性がいいってことでしょ。あのさ、別に今すぐ恋人になろうとか白黒つけようと思わなくても、相性が良くて縁がある二人なら、きっと然るべきタイミングでなるようになるって。それに昔、普通とは違う成り行きでエッチしたことがあるからこそ、今回は軽はずみなことしちゃいけないって向こうも思ってるのかもよ?簡単に同じことを繰り返すことは避けたいっていうか、どうでもいい相手じゃないからこそ慎重になるのかもしれないし」
たしかに藤堂さんはそういう考え方をしそうな人だ。
あのひとは、根が優しくて真面目なのだと思う。もしかしたらご両親が早くに離婚しているからこそ、人と人との関係性がいかに繊細で難しいかを思い知っているのかもしれない。
なんだか香苗と話しているうちに、スッキリしてきた。たとえ藤堂さんに遠距離の彼女がいたとしても、今は私の家で一緒に暮らすことを選んでくれて、妹のように可愛がってくれている。この関係に感謝して、大事にしていきたい。その先にどういう展開が待っているかを、先回りして心配しても仕方ないのだから。
「ありがと、香苗。なんか元気でてきた」
「そうそう、その顔。あんたは明るくて真っすぐなとこが可愛いんだからさ。ガンバレ!・・・ついでにあたしも頑張るわ。今度のオトコは年下で、そりゃもう面倒なのよ。プライドだけは高くてさ」
そう言って香苗はカフェラテを飲み干すと、さて帰るか!とバッグから財布を取りだした。この後、年下の彼とデートだと言うので、私たちは駅の改札で手を振って別れた。
土曜日は朝からずっと雨だった。私は溜まっていたアイロンがけを一気にこなし、近くのスーパーに買い出しに出掛けた。藤堂さんは書類とノートパソコンを持ち帰っていて、ほとんど丸一日和室にこもって仕事をしていた。
なんとなく避けられているような気もしたけれど、食事やお茶で顔を合わすとき、藤堂さんは何か言いたそうな眼でチラリと私を見つめてきた。たぶん私も同じような眼で藤堂さんを見ていたので、お互いますます何を話していいか分からなくなって、曖昧な笑顔で取り繕い会話も途切れがちだった。
先週末に戻りたかった。夜、部屋のベッドで一人になって、なんだか無性に淋しくて泣けてきた。
翌日は、昨日の雨が嘘のように真っ青な空が広がった。
私は学生時代の友達とランチの約束をしていた。9月も下旬になり、ワンピースに薄手のカーディガンでちょうどいいくらいの季節だ。メイクをして久しぶりにイヤリングもつけると、ジョギングから戻って庭でストレッチをしている藤堂さんに声をかけた。グレーのウェアを着ていて、肌が汗で少し濡れている。
「藤堂さん、ちょっと出掛けてきます。夕方には帰ります」
振り返った藤堂さんは、私の少しめかしこんだ姿を見てハッとしたような表情になった。
「あっ・・・そうか、分かった。俺も今日は夕方前に出掛けるんだ」
「そうなんですか?じゃあ夜まで・・・?」
「うん。前の会社の同期が家を建てたって言うんで、新築祝いの集まりに呼ばれてて。たぶんそのまま飲みに行くから、夕飯はいらないよ。遅くなると思う」
藤堂さんは縁側から居間に上がってくると、タオルで首筋を拭きながら私をまじまじと見つめた。ここ数日でこんなに真っすぐ見つめられるのは初めてだったので、思わず頬が染まりかけた。
「似合うな、そのカッコ。・・・可愛いよ」
・・・ああ、ダメだ。ほっぺたが燃えそうに熱くなる。私が赤面するのを見て、藤堂さんはフッと視線をそらした。
「あいつとデートか。楽しんで来いよ」
「・・・?!あいつって、誰ですか?それに、デートじゃないです」
私はついムキになって無意識に一歩近寄った。やっぱり藤堂さんは何か誤解している。
「え?違うの?・・・室井と逢うんじゃないのか?」
「ええっ?なんで室井くんが出てくるんですか?全然違います・・・!今日は女友達とランチするだけですよ」
「あ・・・そうなんだ。ごめん、勘違いしてた」
藤堂さんの瞳に何かホッとしたような色が見えた気がして、私の胸が一気に騒ぎだした。
ダメダメ、自惚れちゃダメ。だって藤堂さんには札幌に彼女がいるのかもしれないのに。
「あの、室井くんってよくふざけていろいろ言いますけど、全然違うんです。あの子はただの後輩です。なんかもう、いつも変なこと言うからウンザリしてるんです」
「・・・そうか。うん、分かった」
藤堂さんの頬の筋肉が、心なしか緩んだように見えた。
「それじゃ、お先に行ってきます。戸締りよろしくお願いしますね」
私はなんだかすごく恥ずかしくなって、足早に玄関に向かった。藤堂さんが、見送るように玄関までついてくる。
買ってもらった例のパンプスを履く様子をじっと見られていた。なかなか頬の赤みが引かないまま、私は顔を上げて「行ってきます」ともう一度言った。
「いってらっしゃい。気をつけろよ。・・・本当によく似合ってるよ。服も靴も。俺がデートに誘いたいくらい」
冗談ぽい口調だったけれど、想定外の言葉にびっくりした。私が更に耳まで真っ赤になったので、藤堂さんも慌てたように「ほら、遅れるぞ」と私の背中を玄関から押し出した。
門を開けて通りを歩きだしても、ドキドキがまったく収まらない。からかっただけに決まっているのに、藤堂さんの言葉が私の耳から離れなくて困ってしまった。
「えっ!一緒に住んでるの?マジで?うそ、それチャンスじゃん!」
友人の香苗とカジュアルフレンチの店でランチし、カフェに場所を移してから藤堂さんのことを打ち明けた。香苗にだけは、5年前の藤堂さんとの出来事を話してある。学生の頃から私のあまり器用ではない性格をよく理解してくれていて、悩みがあるときも香苗にだけは信頼して話すことができた。
「でもただの同居人って感じだよ。全然、手も出されないし。札幌に彼女がいるかもだし」
「彼女?本人がそう言ったの?」
「いや、そうじゃないけど。噂で・・・」
私はチョコレートとバナナが盛られたパンケーキをちまちま食べながら、まだクリアになっていない疑惑を改めて思い起こしてまた落ち込みかけた。
「でもさぁ、その、藤堂さん?もう34でしょ?何年も札幌にいて、転職のためにこっちに戻ってきたんだっけ。普通その年齢で向こうに彼女がいたら、東京に戻る時点で一緒に連れてこない?すぐには無理だとしても、こっちに骨埋める気なら彼女呼び寄せて結婚しない?でも話聞いてる限り、そういう気配なさげじゃん。しかも一人暮らしの鞠子の家に一緒に住んじゃうってさぁ、他に女がいるとは到底思えないけどなぁ」
「香苗は藤堂さんを見たことないから。めちゃくちゃカッコいいんだよ。すっごい仕事もできるし、あれで彼女がいないなんて、ちょっと信じられないよ」
自分で言いながら、だんだん滅入ってくる。そうだ、さっきまでちょっと「可愛い」とか褒められて調子に乗っていたけれど、現実は厳しいのだ。
「うーん、どうだろね。案外高スペックのイケメンって、どーせ無理とか敬遠されて売れ残ってるパターンもありそうだけどねぇ」
「・・・そうなの?普通、みんな狙わない?」
「でもさ、女って現実見るじゃん。リスクを見極めるでしょ?イケメンとつきあってもモテるからしょっちゅう心配しなきゃいけいし、引け目も感じるし、それよりは気負わずに済むフツーのオトコ捕まえてさっさと結婚したほうがいいわー、みたいな子って多くない?」
香苗は「一口ちょうだい」と言って私のパンケーキにフォークを持った手を伸ばしてきた。
私は会社での藤堂さんの様子を思い起こした。たしかにうちの女子社員たちは皆、藤堂さんに憧れている。いるけれど、現実的に恋愛対象としては見ていないような気がした。遠巻きに鑑賞して騒いで、でも実際の彼氏は他で見つける、みたいな感じなのだ。
「イケメンはモテ人生を歩んできてるから、自分から必死で女を口説くのに慣れてなかったりするのよね。で、のんびりしてるうちに気付いたら周りはみんな結婚してて俺ひとりぼっち?みたいなパターン、少なくないと思うんだよね。それで急に焦りだして、結局若いだけが取り柄のしたたかで薄っぺらい女に捕まったりね」
相変らず香苗の言葉は辛辣だ。何故か私の脳裏に後輩の松下さんの顔が浮かんだ。彼女がしたたかだとは言わないが、たしかに藤堂さんみたいな男の人に堂々とアタックできるのは、よほどの自信家か松下さんのように若くて怖いもの知らずの子くらいかもしれない。
「あんたと藤堂さんは昔、一度だけ関係を持ったわけでしょ。しかも今は同じ職場で上司と部下なわけじゃない?そういう面倒くさい間柄なのに鞠子の家に一緒に住むことを同意した時点で、向こうだって絶対悪い感情は持ってないと思うよ。ややこしいことになるのが嫌な相手なら、家に転がり込んだりしないって。30過ぎた男はリスクは避けるもんだよ。・・・たぶん」
たぶん、と付け足すところが香苗らしくて笑ってしまう。香苗は自称恋愛ハンターで何度も恋をしては玉砕しているので、何気に恋愛心理とか男の習性みたいなものに詳しいと自負している。
「たしかに私から見てても藤堂さん、うちで暮らすのすごく楽しんでるみたいだけど・・・。それは家自体を気に入ってくれてるからだと思うよ」
「そうだとしてもさ。好きじゃない他人と一緒に暮らすのって、普通はすごいストレスだよ?あんただって、藤堂さんだから毎日楽しいわけでしょ」
「うん・・・。それはもちろん、そう」
「一緒にいて楽しいなら、それだけ相性がいいってことでしょ。あのさ、別に今すぐ恋人になろうとか白黒つけようと思わなくても、相性が良くて縁がある二人なら、きっと然るべきタイミングでなるようになるって。それに昔、普通とは違う成り行きでエッチしたことがあるからこそ、今回は軽はずみなことしちゃいけないって向こうも思ってるのかもよ?簡単に同じことを繰り返すことは避けたいっていうか、どうでもいい相手じゃないからこそ慎重になるのかもしれないし」
たしかに藤堂さんはそういう考え方をしそうな人だ。
あのひとは、根が優しくて真面目なのだと思う。もしかしたらご両親が早くに離婚しているからこそ、人と人との関係性がいかに繊細で難しいかを思い知っているのかもしれない。
なんだか香苗と話しているうちに、スッキリしてきた。たとえ藤堂さんに遠距離の彼女がいたとしても、今は私の家で一緒に暮らすことを選んでくれて、妹のように可愛がってくれている。この関係に感謝して、大事にしていきたい。その先にどういう展開が待っているかを、先回りして心配しても仕方ないのだから。
「ありがと、香苗。なんか元気でてきた」
「そうそう、その顔。あんたは明るくて真っすぐなとこが可愛いんだからさ。ガンバレ!・・・ついでにあたしも頑張るわ。今度のオトコは年下で、そりゃもう面倒なのよ。プライドだけは高くてさ」
そう言って香苗はカフェラテを飲み干すと、さて帰るか!とバッグから財布を取りだした。この後、年下の彼とデートだと言うので、私たちは駅の改札で手を振って別れた。
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