56 / 83
第56話
しおりを挟む
「ただいま」
「お帰りなさいませ。ファビアお嬢様。お庭でリサ大侯爵夫人がお待ちです」
「わかったわ」
私が侯爵家の養女になった後も専属侍女はローレットのままだった。彼女とは、良好な関係。意地悪する理由がないからね。
ゆったりとした部屋着に着替え、待っている庭園へと向かう。
ブレスチャ子爵家から持参したドレスの様な感じだけど、質は全然違うお高い部屋着。楽でいいわぁ。
「やぁ」
「へ? レオンス様!?」
私を見つけ笑顔で軽く手を振るレオンス様が、リサおばあ様の隣に座っていた。
エメリック様は、同席しているだろうとは思ったけど、謹慎はどうしたのよ。
でも、顔を見て安心したわ。元気そう。
「そこまで驚く? 学園は大丈夫だった?」
「ただいま帰りました。リサおばあ様。エメリック様。昨日ぶりです。レオンス様」
「「おかえり」」
私が、席に着くと紅茶が目の前に置かれる。
そして、レオンス様がコーヒーケーキを取っておいてくれた。
でもそれ、暫く見たくないかも……。
「どうした? あ、ごめん……。こっちな」
新しくイチゴケーキを私の前に置きなおす。
レオンス様は、コーヒーがどこの国の特産物か知っていて、察したのね。
「ありがとう」
「ケーキは、ファビアが来るまで食べないで待っていたんだ」
「さあ、食べましょう」
リサおばあ様の掛け声で、皆パクリとケーキを口に運ぶ。
しばし、無言の時間。いつもなら楽しい会話が飛び交うのだけど。
「明日も学園に行けそうかい」
リサおばあ様が、心配そうに聞いてきた。
昨日屋敷に戻った時、青ざめた顔でリサおばあ様が出迎えてくれて、抱きしめられた。
本当は、今日は休むように言われたけど、休んだらずっと学園に行けなくなりそうだったので、行ったのよね。
「大丈夫ですわ」
「食べ終わったら部屋で休みなさい」
「はい」
「お供します」
お供しますって。部屋についてくるのですか。レオンス様。
それに対して、リサおばあ様が何も言わないから、最初からそう話し合っていたようね。
レオンス様って、リサおばあ様から信頼されているのよね。
庭園での静かなお茶会が終了して、私室へとレオンス様と戻った。
ローレットが脇に控えている中、並んでソファーに私達が座ると、彼女からの視線が突き刺さる。
「本当に大丈夫か?」
「はい」
「学園では何も言われなかったか? フロール嬢は来ていただろう」
「えぇ。おはようと挨拶しかしていないわ。ベビット殿下が突然帰国して、ルイス様もお休みだったので妙に静かだったわよ」
「そうか」
ローレットが淹れた紅茶を飲みつつ、会話を交わす。
たぶん、魔法を展開していて彼女には会話は聞かれていない。
「一つ聞きたいのだが、ノーモノミヤ公爵と何か取引したか」
「っげっほ」
突然聞くものだから咽ちゃったじゃないの。
「その様子だとしたんだな?」
「えーと。ノーモノミヤ公爵とはしていないかな」
「は? じゃガムン公爵としたのか?」
「えーと……」
やっぱり話した方がいいのよね。
「ちゃんと答えろ。今、俺達に必要なのは情報だ。俺も何があったか話すから」
「あ、うん。交渉を持ち掛けて来たのはルイス様よ」
「何だって!?」
レオンス様が凄く驚いた様子を見せた。
「それって、ノーモノミヤ公爵の代理とかではなくて、本人自体がって事か?」
私はそうだと頷く。
「では本当に、彼が何らかの意図を持って盗聴器をしかけたというのか。どこでそんなものを手に入れたんだ」
声が大きくなっているけど、これもかき消されているのかしらね。
「落ち着いて聞いてね。彼の自作みたいよ」
「は? 自作? 自分で魔法アイテムを作ったのかよ」
「魔法アイテムって言うか、魔法陣をね。しかも闇魔法」
「闇魔法だって……。そんなのどうやって調べたんだ」
「……えーと。闇魔法の素質があれば、書物は貰えるの。誰にも見せないって約束で」
「何だって!? 知らないぞ。それ」
へえ。レオンス様は知らなかったんだ。
「もしかして、君も持っているのか」
「まあ、卒業する時と言うか魔法博士になる時にね」
「ではルイスはどうやってそれを手に入れたんだ」
「彼は、闇属性持ちだった。でも闇属性だけだと、魔法学園には入れないらしい。けど書物だけはもらえたみたいね。独学であそこまで出来るのだから凄いわ」
レオンス様が、急に真顔を私に向けた。
「盗聴した内容をネタに揺すられたのか?」
「……そうとも言うかな」
「どの辺の内容だ? ベビット殿下との会話中のものか?」
鋭いわね。
そうだと私は頷く。
「何を話した」
「聞かされたのは、ベビット殿下に全種類扱えますって言ったところ……」
「何、話しちゃってるんだ! それガムン公爵に知られたかもしれないぞ」
「う……ごめんなさい」
俯くと、なぜか頭を撫でられた。
「怒鳴って悪かった。でも、それはもう誰にも言うな。元から素質がある者が使えるのと、必死に使える様になったのでは質が違うだろう」
「必死にって……そんな風には見えませんが」
「他の者はそう捉えるって事だ。実際、俺が使ったとガムン公爵に行った時に、そういう感じだっただろう。そもそも属性持ちの者達だって、それ以外使えないと思い込んでいるのだからな」
まあそうだけどさ。
「それで、ルイスは何をしろって言ってきた」
「それが、魔物退治をして皆に認められたいみたいなの」
「え?」
レオンス様がキョトンとした顔になった。滅多に見れないレアな顔よ!
「お帰りなさいませ。ファビアお嬢様。お庭でリサ大侯爵夫人がお待ちです」
「わかったわ」
私が侯爵家の養女になった後も専属侍女はローレットのままだった。彼女とは、良好な関係。意地悪する理由がないからね。
ゆったりとした部屋着に着替え、待っている庭園へと向かう。
ブレスチャ子爵家から持参したドレスの様な感じだけど、質は全然違うお高い部屋着。楽でいいわぁ。
「やぁ」
「へ? レオンス様!?」
私を見つけ笑顔で軽く手を振るレオンス様が、リサおばあ様の隣に座っていた。
エメリック様は、同席しているだろうとは思ったけど、謹慎はどうしたのよ。
でも、顔を見て安心したわ。元気そう。
「そこまで驚く? 学園は大丈夫だった?」
「ただいま帰りました。リサおばあ様。エメリック様。昨日ぶりです。レオンス様」
「「おかえり」」
私が、席に着くと紅茶が目の前に置かれる。
そして、レオンス様がコーヒーケーキを取っておいてくれた。
でもそれ、暫く見たくないかも……。
「どうした? あ、ごめん……。こっちな」
新しくイチゴケーキを私の前に置きなおす。
レオンス様は、コーヒーがどこの国の特産物か知っていて、察したのね。
「ありがとう」
「ケーキは、ファビアが来るまで食べないで待っていたんだ」
「さあ、食べましょう」
リサおばあ様の掛け声で、皆パクリとケーキを口に運ぶ。
しばし、無言の時間。いつもなら楽しい会話が飛び交うのだけど。
「明日も学園に行けそうかい」
リサおばあ様が、心配そうに聞いてきた。
昨日屋敷に戻った時、青ざめた顔でリサおばあ様が出迎えてくれて、抱きしめられた。
本当は、今日は休むように言われたけど、休んだらずっと学園に行けなくなりそうだったので、行ったのよね。
「大丈夫ですわ」
「食べ終わったら部屋で休みなさい」
「はい」
「お供します」
お供しますって。部屋についてくるのですか。レオンス様。
それに対して、リサおばあ様が何も言わないから、最初からそう話し合っていたようね。
レオンス様って、リサおばあ様から信頼されているのよね。
庭園での静かなお茶会が終了して、私室へとレオンス様と戻った。
ローレットが脇に控えている中、並んでソファーに私達が座ると、彼女からの視線が突き刺さる。
「本当に大丈夫か?」
「はい」
「学園では何も言われなかったか? フロール嬢は来ていただろう」
「えぇ。おはようと挨拶しかしていないわ。ベビット殿下が突然帰国して、ルイス様もお休みだったので妙に静かだったわよ」
「そうか」
ローレットが淹れた紅茶を飲みつつ、会話を交わす。
たぶん、魔法を展開していて彼女には会話は聞かれていない。
「一つ聞きたいのだが、ノーモノミヤ公爵と何か取引したか」
「っげっほ」
突然聞くものだから咽ちゃったじゃないの。
「その様子だとしたんだな?」
「えーと。ノーモノミヤ公爵とはしていないかな」
「は? じゃガムン公爵としたのか?」
「えーと……」
やっぱり話した方がいいのよね。
「ちゃんと答えろ。今、俺達に必要なのは情報だ。俺も何があったか話すから」
「あ、うん。交渉を持ち掛けて来たのはルイス様よ」
「何だって!?」
レオンス様が凄く驚いた様子を見せた。
「それって、ノーモノミヤ公爵の代理とかではなくて、本人自体がって事か?」
私はそうだと頷く。
「では本当に、彼が何らかの意図を持って盗聴器をしかけたというのか。どこでそんなものを手に入れたんだ」
声が大きくなっているけど、これもかき消されているのかしらね。
「落ち着いて聞いてね。彼の自作みたいよ」
「は? 自作? 自分で魔法アイテムを作ったのかよ」
「魔法アイテムって言うか、魔法陣をね。しかも闇魔法」
「闇魔法だって……。そんなのどうやって調べたんだ」
「……えーと。闇魔法の素質があれば、書物は貰えるの。誰にも見せないって約束で」
「何だって!? 知らないぞ。それ」
へえ。レオンス様は知らなかったんだ。
「もしかして、君も持っているのか」
「まあ、卒業する時と言うか魔法博士になる時にね」
「ではルイスはどうやってそれを手に入れたんだ」
「彼は、闇属性持ちだった。でも闇属性だけだと、魔法学園には入れないらしい。けど書物だけはもらえたみたいね。独学であそこまで出来るのだから凄いわ」
レオンス様が、急に真顔を私に向けた。
「盗聴した内容をネタに揺すられたのか?」
「……そうとも言うかな」
「どの辺の内容だ? ベビット殿下との会話中のものか?」
鋭いわね。
そうだと私は頷く。
「何を話した」
「聞かされたのは、ベビット殿下に全種類扱えますって言ったところ……」
「何、話しちゃってるんだ! それガムン公爵に知られたかもしれないぞ」
「う……ごめんなさい」
俯くと、なぜか頭を撫でられた。
「怒鳴って悪かった。でも、それはもう誰にも言うな。元から素質がある者が使えるのと、必死に使える様になったのでは質が違うだろう」
「必死にって……そんな風には見えませんが」
「他の者はそう捉えるって事だ。実際、俺が使ったとガムン公爵に行った時に、そういう感じだっただろう。そもそも属性持ちの者達だって、それ以外使えないと思い込んでいるのだからな」
まあそうだけどさ。
「それで、ルイスは何をしろって言ってきた」
「それが、魔物退治をして皆に認められたいみたいなの」
「え?」
レオンス様がキョトンとした顔になった。滅多に見れないレアな顔よ!
156
あなたにおすすめの小説
婚約者が最凶すぎて困っています
白雲八鈴
恋愛
今日は婚約者のところに連行されていました。そう、二か月は不在だと言っていましたのに、一ヶ月しか無かった私の平穏。
そして現在進行系で私は誘拐されています。嫌な予感しかしませんわ。
最凶すぎる第一皇子の婚約者と、その婚約者に振り回される子爵令嬢の私の話。
*幼少期の主人公の言葉はキツイところがあります。
*不快におもわれましたら、そのまま閉じてください。
*作者の目は節穴ですので、誤字脱字があります。
*カクヨム。小説家になろうにも投稿。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
世界一美しい妹にせがまれるので婚約破棄される前に諦めます~辺境暮らしも悪くない~
tartan321
恋愛
美しさにかけては恐らく世界一……私の妹は自慢の妹なのです。そして、誰もがそれを認め、私は正直言って邪魔者なのです。でも、私は長女なので、王子様と婚約することになる運命……なのですが、やはり、ここは辞退すべきなのでしょうね。
そもそも、私にとって、王子様との婚約はそれほど意味がありません。私はもう少し静かに、そして、慎ましく生活できればいいのです。
完結いたしました。今後は後日談を書きます。
ですから、一度は婚約が決まっているのですけど……ごたごたが生じて婚約破棄になる前に、私の方から、婚約を取り下げます!!!!!!
悪役令息(冤罪)が婿に来た
花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー
結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!?
王女が婚約破棄した相手は公爵令息?
王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした?
あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。
その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。
彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。
そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。
彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。
その数日後王家から正式な手紙がくる。
ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」
イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。
「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」
心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ!
※ざまぁ要素はあると思います。
※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
ヤンキー、悪役令嬢になる
山口三
恋愛
岸田和華(きしだわか)は異世界に飛ばされた。自分が読んでいた小説の悪役令嬢ジュリエットに憑依してしまったのだ。だが和華は短気でガサツで、中学高校と番を張ってたヤンキーだ。高貴な身分の貴族令嬢なんてガラじゃない。「舞踏会でダンス? 踊りなんて盆踊りしか知らないからっ」
一方、リアル世界に残された和華の中にはジュリエットが入っていて・・。
“足りない”令嬢だと思われていた私は、彼らの愛が偽物だと知っている。
ぽんぽこ狸
恋愛
レーナは、婚約者であるアーベルと妹のマイリスから書類にサインを求められていた。
その書類は見る限り婚約解消と罪の自白が目的に見える。
ただの婚約解消ならばまだしも、後者は意味がわからない。覚えもないし、やってもいない。
しかし彼らは「名前すら書けないわけじゃないだろう?」とおちょくってくる。
それを今までは当然のこととして受け入れていたが、レーナはこうして歳を重ねて変わった。
彼らに馬鹿にされていることもちゃんとわかる。しかし、変わったということを示す方法がわからないので、一般貴族に解放されている図書館に向かうことにしたのだった。
元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち
せいめ
恋愛
侯爵令嬢のアンネマリーは流行り病で生死を彷徨った際に、前世の記憶を思い出す。前世では地球の日本という国で、婚活に勤しむアラサー女子の杏奈であった自分を。
病から回復し、今まで家や家族の為に我慢し、貴族令嬢らしく過ごしてきたことがバカらしくなる。
また、自分を蔑ろにする婚約者の存在を疑問に感じる。
「あんな奴と結婚なんて無理だわー。」
無事に婚約を解消し、自分らしく生きていこうとしたところであったが、不慮の事故で亡くなってしまう。
そして、死んだはずのアンネマリーは、また違う人物にまた生まれ変わる。アンネマリーの記憶は殆ど無く、杏奈の記憶が強く残った状態で。
生まれ変わったのは、アンネマリーが亡くなってすぐ、アンネマリーの従姉妹のマリーベルとしてだった。
マリーベルはアンネマリーの記憶がほぼ無いので気付かないが、見た目だけでなく言動や所作がアンネマリーにとても似ていることで、かつての家族や親族、友人が興味を持つようになる。
「従姉妹だし、多少は似ていたっておかしくないじゃない。」
三度目の人生はどうなる⁈
まずはアンネマリー編から。
誤字脱字、お許しください。
素人のご都合主義の小説です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる