【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。

大森 樹

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8 本当のこと

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「チッ、お前……なんでここが」
「婚約者のピンチに駆けつけるのは当たり前でしょう」
「やっぱりお前は邪魔だな」

 テオドールが剣を抜いて襲いかかってきたが、フィン様はそれを難なく受け流した。

「全てあんたが仕組んだことだったんだな」
「そうだ。気が付くのが遅いんだよ」
「……許せません。彼女を傷付けるなんて」

 二人は互角に打ち合っていたが、剣のスピードはフィン様の方が早かった。

「……痛っ!」

 恐ろしい顔のフィン様は、倒れたテオドールの喉元に剣を突きつけた。

「私の方が強い。二度と彼女に近付くな」

 そう言って、そのまま勢いよく剣を振り下ろした。私は恐ろしくて目を閉じたが……しばらくしても何も起こっていない様だった。

「気を失ったようです。しょうもない男だ」

 フィン様は部屋にあったロープでテオドールをぐるぐる巻きに拘束して、部屋の端に投げ飛ばした。

 ――フィン様、お強い。

 決してテオドールが弱いわけではない。それ以上に、テオドールの剣技は見事なものだった。

「……アメリア様、ご無事ですか」
「はい。ありがとうございます」
「心配しました」

 私を抱き締めたフィン様は、やはり額にたくさんの汗をかいていた。それだけで私を必死で探してくれたことがわかって、心が満たされた。

「フィン様、私……あなたが好きです。ずっとお慕いしております」
「私もです。あなたが……アメリア様が好きです。帰ってきたらそれを一番に伝えたかったんです」
「あなたに子どもがいても、いいです。私はそれでもあなたが好きなのです」

 泣きながらそう伝えると、フィン様はポカンと口を開いたままフリーズした。

「子ども……とは?」
「あなたの子どものことです。前の彼女とできた子ども」
「はぁあっ!? 私に子ども? そんなものいるはずがないではありませんか。それは何の勘違いですか」

 フィン様は大声で叫んだ。

「え……でも、あなたにそっくりな子どもに会ったのです。ある女性から、あなたとの間に子どもがいると聞いたのですが」
「知りませんよ! それは絶対にあり得ません」

 そう言い切る彼に、今度は私が首を捻る番だった。ではあれは誰なのだろうか。

「こんなこと言いたくありませんが……その……私は……」

 フィン様は深刻な顔をして、下を向いた。

「け、経験がありません」
「……は?」
「だから、誰ともそういう経験がないのです。だから子どもができるはずありません!」

 ブルブルと震えながら、真っ赤になってとんでもない告白をしてくれた。

 嘘をついている可能性もゼロではないが、この表情からして本当なのだろう。

「そ……ですか」
「……そうです」

 二人の間にそわそわと変な空気が流れたまま、時間が過ぎていく。

「私が愛しているのは、あなただけです。信じてください」
「……わかりました」
「だから、婚約破棄なんて言わないでください」
「はい」
「ずっと一緒にいましょう」
「……はい」

 そのままお互いの唇はゆっくりと重なった。二人にとってそれがファーストキスだった。



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