7 / 11
7 助けて
しおりを挟む
そして暗い部屋で目が覚めた。どれくらい時間が経ったのかわからない。
――そういえば前回フィン様に助けてもらった時も、こんな状況だったわね。
とても怖いはずなのに、そんなことを思い出すことが不思議だった。今回は彼が来てくれるはずがないのに。
この部屋には私以外誰もいないが、ハンナや他の皆は無事だろうか。
食事の約束をしていたので、時間通りに行かなければきっと誰かが我が家に連絡してくれるはずだ。もしくは……身代金の要求をすでに犯人がしているかもしれない。
そんな時、乱暴にドアが開けられてゴロつきが入ってきた。
「おお、起きたのか」
「……ここはどこなの」
「そんなこと言うわけねぇだろ。死なれちゃ困るから食え」
パンと水を目の前に置かれたその時、外でドサドサと大きな音がした。
――まさか、フィン様?
「なんだ、この物音は」
ゴロつきが異変に気がついて部屋の外に出ようとした瞬間、一人の男が中に入ってきた。
「アメリア、無事か!」
それは……フィン様でなく、テオドールだった。彼はゴロつきたちを殴り飛ばして一瞬で倒してしまった。
「テオ……ドール……」
「大丈夫か? 怖かったな。もう平気だ」
テオドールに抱き寄せられ、ポンポンと頭を撫でられた。
「……助けてくれてありがとう。よくここがわかったわね」
「ああ。店に来ないから、アメリアの家に迎えに行ったら誘拐されたって聞いて必死に探したんだ」
「心配かけてごめんなさい」
「いいんだ。君が無事なら」
テオドールは私の頬を大きな手で包み込んだ。
「ハンナとアンは無事かしら? 二人侍女が乗っていたでしょう」
「ああ、二人とも無事だ。安心してくれ」
笑顔でそう言ったテオドールの胸を、全力で押し除けた。
「っ……! アメリア、急にどうしたんだ」
「あの馬車に侍女はハンナしか居なかったわ。あなた、これはどういうことなの」
全力で探したと言う割に、テオドールは汗ひとつかいていなかった。友達を疑いたくなかったが、それがなんとなく引っかかったのでかまをかけたのだ。
「答えて」
「……ハンナだけだったか。じゃあ俺の勘違いかな」
テオドールからスッと表情が消えていく。口元だけで笑っているのが不気味に思えた。
「テオドールは、学生時代にハンナともよく顔を合わせていたはずよ。我が家に行ったというのであれば、彼女があなたに状況を話すはず。人数を間違うはずがないわ」
「ふっ……ははは、アメリアは本当に頭がいい女だな。わざわざここまで芝居したのに無駄になったな」
テオドールは低い声を出し、意地の悪い顔で笑い出した。
「アメリア、世の中には知らない方が幸せなこともあるんだぜ?」
「なんですって」
「知らなければ私と幸せに結婚できたのに。頭はいいが、馬鹿な女だな」
テオドールと結婚なんてするはずがないではないか。
「既成事実を作るしか無くなったな」
私はテオドールに床に押し倒された。その歪んだ笑顔に、恐怖で身体が震える。
「冗談はやめて」
「これが冗談にみえるか? 公爵家のお嬢様ともあろう人が、初めてがこんな場所とは可哀想にな。でも私が触れればすぐに良くなるさ」
テオドールの顔が私に近付いてきた。気持ち悪くて、怖くて身体が震える。
「嫌っ!」
「俺たちは夫婦になるんだ。大人しくしろ」
「フィン様、助けてっ!」
私は来るはずのない人の名を必死にそう叫んでいた。
「あいつが来るはずないだろ」
「やめて、触らないで。助けて、助けてフィン様っ!」
「抵抗しても無駄だ」
もうだめだと思ったその時、私に覆い被さっていたテオドールが宙を舞いそのまま床に叩きつけられた。
「アメリアに触れるな」
そこにいたのはフィン様だった。まさか、まさか彼が助けに来てくれるなんて。
――そういえば前回フィン様に助けてもらった時も、こんな状況だったわね。
とても怖いはずなのに、そんなことを思い出すことが不思議だった。今回は彼が来てくれるはずがないのに。
この部屋には私以外誰もいないが、ハンナや他の皆は無事だろうか。
食事の約束をしていたので、時間通りに行かなければきっと誰かが我が家に連絡してくれるはずだ。もしくは……身代金の要求をすでに犯人がしているかもしれない。
そんな時、乱暴にドアが開けられてゴロつきが入ってきた。
「おお、起きたのか」
「……ここはどこなの」
「そんなこと言うわけねぇだろ。死なれちゃ困るから食え」
パンと水を目の前に置かれたその時、外でドサドサと大きな音がした。
――まさか、フィン様?
「なんだ、この物音は」
ゴロつきが異変に気がついて部屋の外に出ようとした瞬間、一人の男が中に入ってきた。
「アメリア、無事か!」
それは……フィン様でなく、テオドールだった。彼はゴロつきたちを殴り飛ばして一瞬で倒してしまった。
「テオ……ドール……」
「大丈夫か? 怖かったな。もう平気だ」
テオドールに抱き寄せられ、ポンポンと頭を撫でられた。
「……助けてくれてありがとう。よくここがわかったわね」
「ああ。店に来ないから、アメリアの家に迎えに行ったら誘拐されたって聞いて必死に探したんだ」
「心配かけてごめんなさい」
「いいんだ。君が無事なら」
テオドールは私の頬を大きな手で包み込んだ。
「ハンナとアンは無事かしら? 二人侍女が乗っていたでしょう」
「ああ、二人とも無事だ。安心してくれ」
笑顔でそう言ったテオドールの胸を、全力で押し除けた。
「っ……! アメリア、急にどうしたんだ」
「あの馬車に侍女はハンナしか居なかったわ。あなた、これはどういうことなの」
全力で探したと言う割に、テオドールは汗ひとつかいていなかった。友達を疑いたくなかったが、それがなんとなく引っかかったのでかまをかけたのだ。
「答えて」
「……ハンナだけだったか。じゃあ俺の勘違いかな」
テオドールからスッと表情が消えていく。口元だけで笑っているのが不気味に思えた。
「テオドールは、学生時代にハンナともよく顔を合わせていたはずよ。我が家に行ったというのであれば、彼女があなたに状況を話すはず。人数を間違うはずがないわ」
「ふっ……ははは、アメリアは本当に頭がいい女だな。わざわざここまで芝居したのに無駄になったな」
テオドールは低い声を出し、意地の悪い顔で笑い出した。
「アメリア、世の中には知らない方が幸せなこともあるんだぜ?」
「なんですって」
「知らなければ私と幸せに結婚できたのに。頭はいいが、馬鹿な女だな」
テオドールと結婚なんてするはずがないではないか。
「既成事実を作るしか無くなったな」
私はテオドールに床に押し倒された。その歪んだ笑顔に、恐怖で身体が震える。
「冗談はやめて」
「これが冗談にみえるか? 公爵家のお嬢様ともあろう人が、初めてがこんな場所とは可哀想にな。でも私が触れればすぐに良くなるさ」
テオドールの顔が私に近付いてきた。気持ち悪くて、怖くて身体が震える。
「嫌っ!」
「俺たちは夫婦になるんだ。大人しくしろ」
「フィン様、助けてっ!」
私は来るはずのない人の名を必死にそう叫んでいた。
「あいつが来るはずないだろ」
「やめて、触らないで。助けて、助けてフィン様っ!」
「抵抗しても無駄だ」
もうだめだと思ったその時、私に覆い被さっていたテオドールが宙を舞いそのまま床に叩きつけられた。
「アメリアに触れるな」
そこにいたのはフィン様だった。まさか、まさか彼が助けに来てくれるなんて。
327
あなたにおすすめの小説
あなたと別れて、この子を生みました
キムラましゅろう
恋愛
約二年前、ジュリアは恋人だったクリスと別れた後、たった一人で息子のリューイを生んで育てていた。
クリスとは二度と会わないように生まれ育った王都を捨て地方でドリア屋を営んでいたジュリアだが、偶然にも最愛の息子リューイの父親であるクリスと再会してしまう。
自分にそっくりのリューイを見て、自分の息子ではないかというクリスにジュリアは言い放つ。
この子は私一人で生んだ私一人の子だと。
ジュリアとクリスの過去に何があったのか。
子は鎹となり得るのか。
完全ご都合主義、ノーリアリティなお話です。
⚠️ご注意⚠️
作者は元サヤハピエン主義です。
え?コイツと元サヤ……?と思われた方は回れ右をよろしくお願い申し上げます。
誤字脱字、最初に謝っておきます。
申し訳ございませぬ< (_"_) >ペコリ
小説家になろうさんにも時差投稿します。
【完結】旦那に愛人がいると知ってから
よどら文鳥
恋愛
私(ジュリアーナ)は旦那のことをヒーローだと思っている。だからこそどんなに性格が変わってしまっても、いつの日か優しかった旦那に戻ることを願って今もなお愛している。
だが、私の気持ちなどお構いなく、旦那からの容赦ない暴言は絶えない。当然だが、私のことを愛してはくれていないのだろう。
それでも好きでいられる思い出があったから耐えてきた。
だが、偶然にも旦那が他の女と腕を組んでいる姿を目撃してしまった。
「……あの女、誰……!?」
この事件がきっかけで、私の大事にしていた思い出までもが崩れていく。
だが、今までの苦しい日々から解放される試練でもあった。
※前半が暗すぎるので、明るくなってくるところまで一気に更新しました。
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
【完結】不倫をしていると勘違いして離婚を要求されたので従いました〜慰謝料をアテにして生活しようとしているようですが、慰謝料請求しますよ〜
よどら文鳥
恋愛
※当作品は全話執筆済み&予約投稿完了しています。
夫婦円満でもない生活が続いていた中、旦那のレントがいきなり離婚しろと告げてきた。
不倫行為が原因だと言ってくるが、私(シャーリー)には覚えもない。
どうやら騎士団長との会話で勘違いをしているようだ。
だが、不倫を理由に多額の金が目当てなようだし、私のことは全く愛してくれていないようなので、離婚はしてもいいと思っていた。
離婚だけして慰謝料はなしという方向に持って行こうかと思ったが、レントは金にうるさく慰謝料を請求しようとしてきている。
当然、慰謝料を払うつもりはない。
あまりにもうるさいので、むしろ、今までの暴言に関して慰謝料請求してしまいますよ?
(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!
青空一夏
恋愛
私は学園でも女生徒に憧れられているアール・シュトン候爵嫡男様に告白されました。
図書館でいきなり『愛している』と言われた私ですが、妹と勘違いされたようです?
全5話。ゆるふわ。
【完結】私より優先している相手が仮病だと、いい加減に気がついたらどうですか?〜病弱を訴えている婚約者の義妹は超が付くほど健康ですよ〜
よどら文鳥
恋愛
ジュリエル=ディラウは、生まれながらに婚約者が決まっていた。
ハーベスト=ドルチャと正式に結婚する前に、一度彼の実家で同居をすることも決まっている。
同居生活が始まり、最初は順調かとジュリエルは思っていたが、ハーベストの義理の妹、シャロン=ドルチャは病弱だった。
ドルチャ家の人間はシャロンのことを溺愛しているため、折角のデートも病気を理由に断られてしまう。それが例え僅かな微熱でもだ。
あることがキッカケでシャロンの病気は実は仮病だとわかり、ジュリエルは真実を訴えようとする。
だが、シャロンを溺愛しているドルチャ家の人間は聞く耳持たず、更にジュリエルを苦しめるようになってしまった。
ハーベストは、ジュリエルが意図的に苦しめられていることを知らなかった。
元カノが復縁したそうにこちらを見ているので、彼の幸せのために身を引こうとしたら意外と溺愛されていました
おりの まるる
恋愛
カーネリアは、大好きな魔法師団の副師団長であるリオンへ告白すること2回、元カノが忘れられないと振られること2回、玉砕覚悟で3回目の告白をした。
3回目の告白の返事は「友達としてなら付き合ってもいい」と言われ3年の月日を過ごした。
もう付き合うとかできないかもと諦めかけた時、ついに付き合うことがてきるように。
喜んだのもつかの間、初めてのデートで、彼を以前捨てた恋人アイオラが再びリオンの前に訪れて……。
大好きな彼の幸せを願って、身を引こうとするのだが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる