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小学生編
秋色日和 30
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「遅くなっちゃったけど、お昼に間に合うかしら? あーちゃん、急ごうね」
芽生くんの小学校に、遅ればせながら彩芽を連れて到着した。
「ええっと、憲吾さんはどこかしら?」
その時グラウンドから大歓声が聞こえたので、人集りの後ろから背伸びして見ると、ちょうど保護者の競技の最中だった。
グラウンドにいるのは大人で応援するのが子供という、普段と逆の光景も微笑ましいわね。
「あーちゃんが小学生になったら、私たちもあんなことするのかしら?」
あら? 一際歓声が大きくなったわ。
ええっ、うさぎとカエルの一騎打ち?
うさぎ跳びも蛙飛びもかなりの本気モードなので、これは観ている方も盛り上がるわね。
あら? 待って待って、あのうさぎさんチームには見覚えが。
「まぁ、あのうさぎ跳びしているのって、宗吾さんと瑞樹くんだわ!」
二人で真剣にぴょんぴょんして可愛い!
もう、宗吾さんは瑞樹くんを本気モードにさせる天才だわ。
瑞樹くんが積極的に目立つことをしている様子に嬉しくなってしまった。
私が知り合った頃は、とても控えめで打たれ弱いイメージだったのに、本当に彼は変わったわ。
明るい方へ自ら歩み寄って、キラキラ眩しい男性になったわ。
「あぁ、抜かされちゃう。んー あの蛙、すごい早いわ。逞しいのね」
「パパぁー パパぁー」
抱っこしていた彩芽が騒ぎだしたのでキョロキョロ辺りを見渡したけれども、憲吾さんどこにもいないわ。
「あーちゃん、パパはここにはいないわよ?」
「ううん、あちょこぉ」
「え? まさか」
彩芽が指差す方向は全身緑色のジャージの男性?
まさか憲吾さんなの?
だって出かけはスーツを着ていて……
「運動会にその格好なの?」と突っ込むと「……コホン、これが私の正装だ」なんて言っていたのに、もう素直じゃないんだから。一体どこで着替えたのかしら。ふふっ、でも憲吾さんらしいわ。
まさかあなたがジャージを着るなんて、結婚して初めてかも。
しかも緑色?
あ! 緑は彩芽の好きな色だわ。
もしかして、そのジャージはいずれやってくる彩芽の運動会の予行練習なの?
用意周到の憲吾さんだから、そんな気がするわ。
瑞樹くんも変わったけれども、あなたも変わったわね。
ツンツン尖っていたのに、丸みを帯びているわ。
丸みがある人って素敵。
心、ころころ。
なりたかった人になるのに、遅すぎることはないのね。
私も一緒に心、ころころ……軽やかに生きていきたい。
レースを終わったあなたは、弟さんと瑞樹くんと輪になって笑っていた。
いつも書斎に籠もりっきりで、書類の山に埋もれていたあなたはもういない。
今はお日様の下で笑っている。
人との繋がりよりも、法の世界を優先していたあなただけど、今は……今この瞬間を謳歌する人になったのね。
知っていたのよ。私……
あなたが本当は懐の深い人で、努力の人だって。
だから好きになったの。
だから結婚したの。
だからあなたの子供を授かりたかった。
退場門で待っていると、3人が和気藹々とした笑顔で戻ってきたわ。
「パパー!」
彩芽の元気な声で、憲吾さんと目が合った。
憲吾さん一瞬怯んだけど、私がにっこり笑うと恥ずかしそうに微笑んでくれた。
血の通った人間らしい顔だわ。
そうか……日光の当たる場所で明るく笑うことが出来たら悩みなんて吹っ飛んでしまうのね。私たち、ずっと閉じこもってばかりで気づけなかったわね。
でも今、気づけたのだから、これからは明るい場所で集いましょう。
「パパぁ~ パパ」
「彩芽! パパの活躍、見ていてくれたのか」
「うん!」
「よしよし。美智、来てくれたのか」
「もちろんよ!可愛い甥っ子の運動会だもの」
大好きな緑色に彩芽もニコニコ。
「憲吾さん、身体、大丈夫?」
「美智、明日は筋肉痛になりそうだよ」
「ふふっ、湿布を貼ってあげるわ」
「頼むよ」
「その調子で彩芽の時もよろしくね」
「あぁ、カエルはマスターした。次はうさぎをやってみたい」
「うさぎ?」
「宗吾はともかく、瑞樹のうさぎ飛びが可愛かったから」
ふふふ、人を愛するようになったあなたは最強ね。
****
「わー すごいあのカエルとびの人、とくにミドリのジャージの人早いよ」
「うしろのうさぎとびの人たちも、すごいね」
「う、うん!」
わわ、ボクどっちをおうえんしよう!
けんごおじさんとパパとおにいちゃん。
みんなボクの家族だよ。
みんないっしょうけんめいなんだもん。
みんなカッコいいよ!
だれが一番でもいいよ。
いっしょうけんめいやって勝つのも、いっしょうけんめいやって負けるのも同じくらい、すてきだから。
1位は、けんごおじさんのカエルチームだったよ。
あのね、ボク……小さい時は、ずっとこわいおじさんだと思っていたんだ。
だけど、さいきんのおじさんは、とってもかっこいいよ。
おにいちゃんのことも、ボクのことも、かわいい、かわいいって言ってくれてうれしいんだ。
「わーい! すごいすごい!」
「芽生、あの人たち、知り合い?」
「うん、カエルはおじさんで、うさぎはパパとお兄ちゃん」
「へぇ、みーんなかっこいいな」
「うん! ありがとう」
えへへ、ボクの運動会。
みんな来てくれて、みんな楽しそうでうれしいな。
空を見上げると、ぐんと青空がひろがっていた。
「いっくんも楽しんでいるかな? みんな来てくれて、みんな楽しそうにしているよね。みんないっくんのことが大好きなんだよ。ボクもね」
「芽生、おいで! お昼ご飯だぞ」
「わぁい!」
「よしよし、みーんなあっちで芽生を待ってるぞ」
パパがお席まで呼びに来てくれた。
さぁ、ボクもみんなの所に行こう。
みんなの一員だから、笑って笑って、おいしくお弁当を食べたいな。
芽生くんの小学校に、遅ればせながら彩芽を連れて到着した。
「ええっと、憲吾さんはどこかしら?」
その時グラウンドから大歓声が聞こえたので、人集りの後ろから背伸びして見ると、ちょうど保護者の競技の最中だった。
グラウンドにいるのは大人で応援するのが子供という、普段と逆の光景も微笑ましいわね。
「あーちゃんが小学生になったら、私たちもあんなことするのかしら?」
あら? 一際歓声が大きくなったわ。
ええっ、うさぎとカエルの一騎打ち?
うさぎ跳びも蛙飛びもかなりの本気モードなので、これは観ている方も盛り上がるわね。
あら? 待って待って、あのうさぎさんチームには見覚えが。
「まぁ、あのうさぎ跳びしているのって、宗吾さんと瑞樹くんだわ!」
二人で真剣にぴょんぴょんして可愛い!
もう、宗吾さんは瑞樹くんを本気モードにさせる天才だわ。
瑞樹くんが積極的に目立つことをしている様子に嬉しくなってしまった。
私が知り合った頃は、とても控えめで打たれ弱いイメージだったのに、本当に彼は変わったわ。
明るい方へ自ら歩み寄って、キラキラ眩しい男性になったわ。
「あぁ、抜かされちゃう。んー あの蛙、すごい早いわ。逞しいのね」
「パパぁー パパぁー」
抱っこしていた彩芽が騒ぎだしたのでキョロキョロ辺りを見渡したけれども、憲吾さんどこにもいないわ。
「あーちゃん、パパはここにはいないわよ?」
「ううん、あちょこぉ」
「え? まさか」
彩芽が指差す方向は全身緑色のジャージの男性?
まさか憲吾さんなの?
だって出かけはスーツを着ていて……
「運動会にその格好なの?」と突っ込むと「……コホン、これが私の正装だ」なんて言っていたのに、もう素直じゃないんだから。一体どこで着替えたのかしら。ふふっ、でも憲吾さんらしいわ。
まさかあなたがジャージを着るなんて、結婚して初めてかも。
しかも緑色?
あ! 緑は彩芽の好きな色だわ。
もしかして、そのジャージはいずれやってくる彩芽の運動会の予行練習なの?
用意周到の憲吾さんだから、そんな気がするわ。
瑞樹くんも変わったけれども、あなたも変わったわね。
ツンツン尖っていたのに、丸みを帯びているわ。
丸みがある人って素敵。
心、ころころ。
なりたかった人になるのに、遅すぎることはないのね。
私も一緒に心、ころころ……軽やかに生きていきたい。
レースを終わったあなたは、弟さんと瑞樹くんと輪になって笑っていた。
いつも書斎に籠もりっきりで、書類の山に埋もれていたあなたはもういない。
今はお日様の下で笑っている。
人との繋がりよりも、法の世界を優先していたあなただけど、今は……今この瞬間を謳歌する人になったのね。
知っていたのよ。私……
あなたが本当は懐の深い人で、努力の人だって。
だから好きになったの。
だから結婚したの。
だからあなたの子供を授かりたかった。
退場門で待っていると、3人が和気藹々とした笑顔で戻ってきたわ。
「パパー!」
彩芽の元気な声で、憲吾さんと目が合った。
憲吾さん一瞬怯んだけど、私がにっこり笑うと恥ずかしそうに微笑んでくれた。
血の通った人間らしい顔だわ。
そうか……日光の当たる場所で明るく笑うことが出来たら悩みなんて吹っ飛んでしまうのね。私たち、ずっと閉じこもってばかりで気づけなかったわね。
でも今、気づけたのだから、これからは明るい場所で集いましょう。
「パパぁ~ パパ」
「彩芽! パパの活躍、見ていてくれたのか」
「うん!」
「よしよし。美智、来てくれたのか」
「もちろんよ!可愛い甥っ子の運動会だもの」
大好きな緑色に彩芽もニコニコ。
「憲吾さん、身体、大丈夫?」
「美智、明日は筋肉痛になりそうだよ」
「ふふっ、湿布を貼ってあげるわ」
「頼むよ」
「その調子で彩芽の時もよろしくね」
「あぁ、カエルはマスターした。次はうさぎをやってみたい」
「うさぎ?」
「宗吾はともかく、瑞樹のうさぎ飛びが可愛かったから」
ふふふ、人を愛するようになったあなたは最強ね。
****
「わー すごいあのカエルとびの人、とくにミドリのジャージの人早いよ」
「うしろのうさぎとびの人たちも、すごいね」
「う、うん!」
わわ、ボクどっちをおうえんしよう!
けんごおじさんとパパとおにいちゃん。
みんなボクの家族だよ。
みんないっしょうけんめいなんだもん。
みんなカッコいいよ!
だれが一番でもいいよ。
いっしょうけんめいやって勝つのも、いっしょうけんめいやって負けるのも同じくらい、すてきだから。
1位は、けんごおじさんのカエルチームだったよ。
あのね、ボク……小さい時は、ずっとこわいおじさんだと思っていたんだ。
だけど、さいきんのおじさんは、とってもかっこいいよ。
おにいちゃんのことも、ボクのことも、かわいい、かわいいって言ってくれてうれしいんだ。
「わーい! すごいすごい!」
「芽生、あの人たち、知り合い?」
「うん、カエルはおじさんで、うさぎはパパとお兄ちゃん」
「へぇ、みーんなかっこいいな」
「うん! ありがとう」
えへへ、ボクの運動会。
みんな来てくれて、みんな楽しそうでうれしいな。
空を見上げると、ぐんと青空がひろがっていた。
「いっくんも楽しんでいるかな? みんな来てくれて、みんな楽しそうにしているよね。みんないっくんのことが大好きなんだよ。ボクもね」
「芽生、おいで! お昼ご飯だぞ」
「わぁい!」
「よしよし、みーんなあっちで芽生を待ってるぞ」
パパがお席まで呼びに来てくれた。
さぁ、ボクもみんなの所に行こう。
みんなの一員だから、笑って笑って、おいしくお弁当を食べたいな。
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