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10 当たり前だろう
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(ルーカス)
それから俺に与えられたのは、ボロボロの小屋が一つと毎日配給される死なないギリギリの量の食料だ。
食事は自分で調理場に取りにいくのだが、いつも投げて渡されるか、意地悪されて汚されるか、突き飛ばされるか……とにかく何でもなく渡される時の方が珍しい。
「汚い混じりモンが。」
「汚らわしい。どうにかできないのかしらね?プレーン様やグレイ様がお可哀想で……。」
常に排他的で攻撃的な視線がついて回る日々。
俺はココでは1番下の弱者で、不義の子である事実は消えないから永遠に下のまま。
それを皆知っているから、こうして安心して攻撃してくるという事だ。
「────クソが……。」
一人になれば、自分の口からでてくるのは全てを呪う言葉ばかり。
汚い世界に汚い人間達、汚い言葉、全部全部、下を這いつくばる俺にお似合いのモノばかり!
そしてその汚いモノは、心からどす黒いモノを生み出しては、どんどん世界を汚していった。
その繰り返しで……俺が死ぬまで、一体どれだけ世界って汚れるんだろう?と純粋に疑問に思う。
「……あぁ、でもアイツにとっては、この汚い世界がそれはそれはお綺麗で美しい世界に見えているんだろうな。────吐き気がする。」
俺とは真逆の人生を歩んできた、ピカピカと光り輝いている世界で生きているグレイお兄様。
その幸せそうに笑う顔が思い浮かぶとカッ!となって、思わず近くに置いてあった木製の椅子を蹴飛ばした。
自分を攻撃してくる奴らに対し怒りはあったが、それ以上に偽善を使って優越感に浸るヤツはもっとムカつく。
まさに兄はその代表と言える存在の様で、いつも無視され罵倒される俺を見て、何か言いたげな顔を見せてきた。
『可哀想、可哀想。だからそんな可哀想な人間には優しくしてあげよう。
────……ねぇねぇ!僕は優しくてすっごく綺麗な人間でしょ!褒めて褒めて!
あ~ルーカスは、惨めで可哀想。
良かった!自分はこんなに幸せで!』
兄はきっとこんな事を思っているに違いない。
それを考えるだけで腸が煮えくり返る。
「……最低だな。あんなに恵まれているくせに、俺のほしかったモノ全て持っているくせに……それでもまだ足りないってか?…………クソッ…………クソッ、クソッ、クソックソッ!!」
激しい怒りを抑えられずに、倒れている椅子をガンガンッ!!と踏みつけると、椅子は足が折れてしまい使い物にならなくなってしまった。
それによって我に返ったが、心の奥に煮えたぎる怒りはそのままだ。
いつか全てに復讐してやろう。
チャンスを伺い、父親も義理母も、使用人達も助けてくれなかった街の奴らも全部全部!
そして1番腹が立つ偽善者の兄にも……。
そう決意し、復讐心は奥底に封じ込めたまま、毎日を過ごしていたが……ある日突然兄が話しかけてきたのだ。
「もしかしてなんだけど……文字が読めないの?簡単なヤツも全部……。」
その通りだったので、素直に「……はい。そうです。」と答えた。
元々教育は貴族や裕福な平民にしか与えられないモノ。
俺は勿論そんな教育なんて受けた事がないから、突然よく分からない話をペラペラ喋られても正直分からないし、俺を完全に排除しようとしている家庭教師の話をまともに聞く気もなかった。
突然問われた質問に疑問を感じたが、次に続いた兄の言葉によって、その意味を知る。
「あ、あのさ、良かったら僕が文字を教えようか……?」
「────っ!」
一瞬で心の奥底に隠していた怒りと憎しみは膨れ上がり、視界が真っ赤に染まると、目の間にいる兄がまるで恐ろしい顔をした悪魔の様に見えた。
「ふざけるなっ!!全てに恵まれているお坊ちゃまが……これ以上俺を惨めにして楽しいのかっ!?
両親に愛され、金に困った事もない……そんな幸せに溢れた生活をしているのに、それでも足りないのかっ!!」
ここで敵に回すのはまずい。
そう頭では分かっていたが、我慢できなかった。
優しさを装って、自分より下の者達へ手を差し伸べて、俺を優越感の道具として使おうとしている。
それが許せなかった。
全てを持っているくせに、まだ俺から取ろうとしてくる事が。
「気持ちいいよなぁ?!明らかに見下せる惨めなヤツ相手に同情して手を差し伸べるのは!
なぁ、それってどんな気持ち?
楽しいんだろうなぁ~それ、優越感ってヤツ。
俺を使って、感謝されたいんだもんな?そしたら楽しいもんな?毎日毎日人生ハッピーなイージー人生のくせに、もっともっとそれが欲しいってか!────傲慢なクソお坊ちゃまが。」
全ての憎しみ、恨み、怒りを込めて、全てを吐き出しぶつけてやった。
別にいいだろう?
だって自分は今まで幸せに苦しみのくの字も知らずに生きてきたんだから。
苦しんできた俺の怒りのはけ口になるのは、当然じゃないか!
「……ごめん。」
「────チッ!!」
素直に謝る兄に、更にイライラは募る。
コイツは何も理解していないし、これから先、俺の気持ちなど永遠に理解する事はない。
自分の中の怒りと憎しみは全て、そんな何も知らない兄へ向き、復讐を────……。
「気持ちいいかは分からない……。だ、だって、ルーカスが『うん。』って言ってくれないから。」
「────は??」
言われた言葉の意味が分からず混乱する俺を他所に、兄は必死に俺に何かを伝えようとしていた。
「えっと……あのね、僕、今まで誰かに何かを教えた事ないし……。そもそも教える程知識も経験もないんだよ。
だからやってみないと、その楽しいとか気持ちいいとか分からなくて……。」
「お、お前は何を言っているんだ……?」
なんとなく、言っていることが伝わってない様な……ズレているような気がして、思わず口からそんな言葉が出た。
だってそんなの普通わかるだろう?
特にこんな幸せな人生に恵まれた奴には。
「あ、もしかしてルーカスは知ってるの?その楽しいのとか気持ちいいのとか。」
「……知らない。だって俺は最底辺の人間だから。」
また唐突に問われる質問に素っ気なく答えたが、これは半分嘘。
何故なら、俺は同じ底辺の中なら上にいられるから。
それから俺に与えられたのは、ボロボロの小屋が一つと毎日配給される死なないギリギリの量の食料だ。
食事は自分で調理場に取りにいくのだが、いつも投げて渡されるか、意地悪されて汚されるか、突き飛ばされるか……とにかく何でもなく渡される時の方が珍しい。
「汚い混じりモンが。」
「汚らわしい。どうにかできないのかしらね?プレーン様やグレイ様がお可哀想で……。」
常に排他的で攻撃的な視線がついて回る日々。
俺はココでは1番下の弱者で、不義の子である事実は消えないから永遠に下のまま。
それを皆知っているから、こうして安心して攻撃してくるという事だ。
「────クソが……。」
一人になれば、自分の口からでてくるのは全てを呪う言葉ばかり。
汚い世界に汚い人間達、汚い言葉、全部全部、下を這いつくばる俺にお似合いのモノばかり!
そしてその汚いモノは、心からどす黒いモノを生み出しては、どんどん世界を汚していった。
その繰り返しで……俺が死ぬまで、一体どれだけ世界って汚れるんだろう?と純粋に疑問に思う。
「……あぁ、でもアイツにとっては、この汚い世界がそれはそれはお綺麗で美しい世界に見えているんだろうな。────吐き気がする。」
俺とは真逆の人生を歩んできた、ピカピカと光り輝いている世界で生きているグレイお兄様。
その幸せそうに笑う顔が思い浮かぶとカッ!となって、思わず近くに置いてあった木製の椅子を蹴飛ばした。
自分を攻撃してくる奴らに対し怒りはあったが、それ以上に偽善を使って優越感に浸るヤツはもっとムカつく。
まさに兄はその代表と言える存在の様で、いつも無視され罵倒される俺を見て、何か言いたげな顔を見せてきた。
『可哀想、可哀想。だからそんな可哀想な人間には優しくしてあげよう。
────……ねぇねぇ!僕は優しくてすっごく綺麗な人間でしょ!褒めて褒めて!
あ~ルーカスは、惨めで可哀想。
良かった!自分はこんなに幸せで!』
兄はきっとこんな事を思っているに違いない。
それを考えるだけで腸が煮えくり返る。
「……最低だな。あんなに恵まれているくせに、俺のほしかったモノ全て持っているくせに……それでもまだ足りないってか?…………クソッ…………クソッ、クソッ、クソックソッ!!」
激しい怒りを抑えられずに、倒れている椅子をガンガンッ!!と踏みつけると、椅子は足が折れてしまい使い物にならなくなってしまった。
それによって我に返ったが、心の奥に煮えたぎる怒りはそのままだ。
いつか全てに復讐してやろう。
チャンスを伺い、父親も義理母も、使用人達も助けてくれなかった街の奴らも全部全部!
そして1番腹が立つ偽善者の兄にも……。
そう決意し、復讐心は奥底に封じ込めたまま、毎日を過ごしていたが……ある日突然兄が話しかけてきたのだ。
「もしかしてなんだけど……文字が読めないの?簡単なヤツも全部……。」
その通りだったので、素直に「……はい。そうです。」と答えた。
元々教育は貴族や裕福な平民にしか与えられないモノ。
俺は勿論そんな教育なんて受けた事がないから、突然よく分からない話をペラペラ喋られても正直分からないし、俺を完全に排除しようとしている家庭教師の話をまともに聞く気もなかった。
突然問われた質問に疑問を感じたが、次に続いた兄の言葉によって、その意味を知る。
「あ、あのさ、良かったら僕が文字を教えようか……?」
「────っ!」
一瞬で心の奥底に隠していた怒りと憎しみは膨れ上がり、視界が真っ赤に染まると、目の間にいる兄がまるで恐ろしい顔をした悪魔の様に見えた。
「ふざけるなっ!!全てに恵まれているお坊ちゃまが……これ以上俺を惨めにして楽しいのかっ!?
両親に愛され、金に困った事もない……そんな幸せに溢れた生活をしているのに、それでも足りないのかっ!!」
ここで敵に回すのはまずい。
そう頭では分かっていたが、我慢できなかった。
優しさを装って、自分より下の者達へ手を差し伸べて、俺を優越感の道具として使おうとしている。
それが許せなかった。
全てを持っているくせに、まだ俺から取ろうとしてくる事が。
「気持ちいいよなぁ?!明らかに見下せる惨めなヤツ相手に同情して手を差し伸べるのは!
なぁ、それってどんな気持ち?
楽しいんだろうなぁ~それ、優越感ってヤツ。
俺を使って、感謝されたいんだもんな?そしたら楽しいもんな?毎日毎日人生ハッピーなイージー人生のくせに、もっともっとそれが欲しいってか!────傲慢なクソお坊ちゃまが。」
全ての憎しみ、恨み、怒りを込めて、全てを吐き出しぶつけてやった。
別にいいだろう?
だって自分は今まで幸せに苦しみのくの字も知らずに生きてきたんだから。
苦しんできた俺の怒りのはけ口になるのは、当然じゃないか!
「……ごめん。」
「────チッ!!」
素直に謝る兄に、更にイライラは募る。
コイツは何も理解していないし、これから先、俺の気持ちなど永遠に理解する事はない。
自分の中の怒りと憎しみは全て、そんな何も知らない兄へ向き、復讐を────……。
「気持ちいいかは分からない……。だ、だって、ルーカスが『うん。』って言ってくれないから。」
「────は??」
言われた言葉の意味が分からず混乱する俺を他所に、兄は必死に俺に何かを伝えようとしていた。
「えっと……あのね、僕、今まで誰かに何かを教えた事ないし……。そもそも教える程知識も経験もないんだよ。
だからやってみないと、その楽しいとか気持ちいいとか分からなくて……。」
「お、お前は何を言っているんだ……?」
なんとなく、言っていることが伝わってない様な……ズレているような気がして、思わず口からそんな言葉が出た。
だってそんなの普通わかるだろう?
特にこんな幸せな人生に恵まれた奴には。
「あ、もしかしてルーカスは知ってるの?その楽しいのとか気持ちいいのとか。」
「……知らない。だって俺は最底辺の人間だから。」
また唐突に問われる質問に素っ気なく答えたが、これは半分嘘。
何故なら、俺は同じ底辺の中なら上にいられるから。
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