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9 ルーカスの人生
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(ルーカス)
俺が生まれたのは、欲望を抑えられずに堕ちた女がたどり着く場所。
欲望のツケを払うために、今度は他人の欲望を発散する道具になる場所だ。
そんな中で俺は生まれた。
「────チッ!今日の客は器もアレも小せぇ男だったわ!あぁ~早く借金返して自由になりた~い♡」
「アハハ~!そう言ってアンタ二回目じゃな~い。いい加減賭け事止めなよ~。まっ、どうせ無理だろうけど!」
あっけらかんと口から飛び出す会話は、いつも同じ様な内容で……。
ここにいる女達の大半は、欲望を抑えられずに借金して追われて、借金して追われて……結局ここに放り込まれる女達だ。
自業自得だから、誰も同情しないが……その結果、生まれてきてしまった子供は別。
望まれずに生まれてきた子供は、そんな親の都合のいい道具になり続け、いい未来は待っていない。
俺もそんな子供の一人。
そしてそんな俺と同じ様な境遇の子供たちが沢山いて、母親が仕事に行く間、俺達は用意されている狭くて汚い部屋で大人しく帰りを待つ。
働いている店が管理しているその場所では、一応一日一回は食事がでるが、とてもじゃないが足りないし、それすらも子供たちで奪い合い。
強ければ沢山食べれるし、弱いと全然食べれない。
それが嫌で、この場所を飛び出して帰って来ないヤツもいたが……大抵のヤツはここに残る。
皆、『あるモノ』がほしかったからだ。
『母親からの無償の愛情』
お腹はいつも空いていて、目の前に沢山のご馳走とソレが並んでいたら、間違いなく俺達はソレを取る。
俺もそこから逃げなかったのは……多分ソレが欲しかったからだと思う。
でも、結局俺はソレを貰う事はできなかった。
母親の目は俺に向くことは一切なく、最後は『秘密』と共に、俺はクレパス家に売られてしまったのだ。
ある日の事、新しい男ができてどうにか借金を一気に返したいと考えた母は、あることを思い出した。
『そういえば、お前ができた時、客の一人にお偉いさんがいたな。』────と。
大きな祝い事の際、母の様な女たちが沢山呼ばれる事があるらしいが、たまたま声がかかったその祝の席に、とんでもない上玉がいたのだとか。
それが伯爵家クレパス家の当主だった。
その男は、容姿だけは一級品であった母を気に入り、とんでもない値段で母の一夜を買い取ってくれたらしいが、勿論それ以降、一度としてお目にかかる事はなく……。
更に他にも沢山の客がいた母は、妊娠が分かった後も、その人物がまさか父親だとは思っていなかったが、ダメ元とばかりにその伯爵家に向かった。
信じられない愚行。
しかし、貴族にとってこれは慎重にならなければならない問題だったらしく、精査した結果────なんと本当にその伯爵様と血がつながった親子である事が判明したのだ!
これには母は歓喜し、直ぐにその事を内密にする代わりにと、クレパス家の当主であるライゼルから莫大な金を受け取り、俺を一度として見もせず今の男の元へと去っていった。
母の上機嫌な背中を見つめながら、その向かう先は地獄だろうということは────「消せ。」という、俺の父らしい男が護衛の男に言った言葉で分かったが、もうどうでもいい。
実の母がこの世界から消える事に対して、心は何も感じない。
きっと母が俺を捨てた時、俺の心が今までとは全く違うモノへとなってしまったからだと思う。
そしてその瞬間……俺はずっと自分が欲しかったモノは永遠に与えられる事はなくなった事と、それを受け取れる心の器を失くしてしまった事を理解した。
その後、正式にクレパス家の子供になった俺は、その屋敷へと連れて行かれたわけだが、そこで待っていたのは、自分が如何に惨めで不幸な存在であるかという事実であった。
見たことがないくらい大きくて余りある財をふんだんに使った屋敷。
沢山の人間達が揃って頭を下げて、主を迎える姿。
世の中は……なんて不平等なんだろう。
ハッキリと分かれている上と下の生活に対し、壊れている心がどす黒い何かを次から次へと生み出していった。
更に────……。
「今日からこの家に住む、お前の義理の弟の<ルーカス>だ。────と言っても、同じ歳だから、学年としては同学年になるな。」
ライゼルから紹介されたのは、この家の正当な跡継ぎであり、俺の異母兄にあたるグレイ。
その姿を目にした瞬間、どす黒いモノは一気に外へと飛び出す。
ズルい……ズルい……ズルい……ズルい……!
なんで同じ男から生まれた子供なのに、コイツはこんなにも幸せな人生で、俺は不幸な人生を送らないといけない?
不幸など一度たりとも感じた事がない様な、間抜けな面で俺を見つめる兄。
その顔が吐き気が出る程憎いと思ったが、必死に堪える。
「よ……よろしく……。」
「…………。」
挨拶されても返事は返さず、ただ大人しく下を向いた。
この時少しでも口を開けば、恨み妬みを吐き出してしまいそうだったから。
しかし、父とその妻であるプレーンは、チャンスとばかりに愛する子供であるグレイを褒め称え、愛情をこれでもかと見せつけてきた。
自分が欲しくて欲しくてずっと求めていた『モノ』。
それをコイツは、当然の様にアッサリと与えられてきたのか。
そう想うと、怒りと憎しみは増えて増えて……きっとそのうち、この世界全体を真っ黒に染めるだろうと漠然と思った。
真っ黒だ。
この世界は全部。
俺に一度も『愛』を与えてくれなかった母親も、気まぐれで手を出して俺を作った父親も、邪魔者扱いして冷遇してくる他の奴らも、そして────……幸せな世界でのうのうと生きている兄も。
全部、全部が憎い。
憎くて悪くて堪らない。
しかし、今ここでソレを表に出せば、母と同じく消されるかもしれない。
それは分かっていたから、必死にソレを心の奥底に隠した。
俺が生まれたのは、欲望を抑えられずに堕ちた女がたどり着く場所。
欲望のツケを払うために、今度は他人の欲望を発散する道具になる場所だ。
そんな中で俺は生まれた。
「────チッ!今日の客は器もアレも小せぇ男だったわ!あぁ~早く借金返して自由になりた~い♡」
「アハハ~!そう言ってアンタ二回目じゃな~い。いい加減賭け事止めなよ~。まっ、どうせ無理だろうけど!」
あっけらかんと口から飛び出す会話は、いつも同じ様な内容で……。
ここにいる女達の大半は、欲望を抑えられずに借金して追われて、借金して追われて……結局ここに放り込まれる女達だ。
自業自得だから、誰も同情しないが……その結果、生まれてきてしまった子供は別。
望まれずに生まれてきた子供は、そんな親の都合のいい道具になり続け、いい未来は待っていない。
俺もそんな子供の一人。
そしてそんな俺と同じ様な境遇の子供たちが沢山いて、母親が仕事に行く間、俺達は用意されている狭くて汚い部屋で大人しく帰りを待つ。
働いている店が管理しているその場所では、一応一日一回は食事がでるが、とてもじゃないが足りないし、それすらも子供たちで奪い合い。
強ければ沢山食べれるし、弱いと全然食べれない。
それが嫌で、この場所を飛び出して帰って来ないヤツもいたが……大抵のヤツはここに残る。
皆、『あるモノ』がほしかったからだ。
『母親からの無償の愛情』
お腹はいつも空いていて、目の前に沢山のご馳走とソレが並んでいたら、間違いなく俺達はソレを取る。
俺もそこから逃げなかったのは……多分ソレが欲しかったからだと思う。
でも、結局俺はソレを貰う事はできなかった。
母親の目は俺に向くことは一切なく、最後は『秘密』と共に、俺はクレパス家に売られてしまったのだ。
ある日の事、新しい男ができてどうにか借金を一気に返したいと考えた母は、あることを思い出した。
『そういえば、お前ができた時、客の一人にお偉いさんがいたな。』────と。
大きな祝い事の際、母の様な女たちが沢山呼ばれる事があるらしいが、たまたま声がかかったその祝の席に、とんでもない上玉がいたのだとか。
それが伯爵家クレパス家の当主だった。
その男は、容姿だけは一級品であった母を気に入り、とんでもない値段で母の一夜を買い取ってくれたらしいが、勿論それ以降、一度としてお目にかかる事はなく……。
更に他にも沢山の客がいた母は、妊娠が分かった後も、その人物がまさか父親だとは思っていなかったが、ダメ元とばかりにその伯爵家に向かった。
信じられない愚行。
しかし、貴族にとってこれは慎重にならなければならない問題だったらしく、精査した結果────なんと本当にその伯爵様と血がつながった親子である事が判明したのだ!
これには母は歓喜し、直ぐにその事を内密にする代わりにと、クレパス家の当主であるライゼルから莫大な金を受け取り、俺を一度として見もせず今の男の元へと去っていった。
母の上機嫌な背中を見つめながら、その向かう先は地獄だろうということは────「消せ。」という、俺の父らしい男が護衛の男に言った言葉で分かったが、もうどうでもいい。
実の母がこの世界から消える事に対して、心は何も感じない。
きっと母が俺を捨てた時、俺の心が今までとは全く違うモノへとなってしまったからだと思う。
そしてその瞬間……俺はずっと自分が欲しかったモノは永遠に与えられる事はなくなった事と、それを受け取れる心の器を失くしてしまった事を理解した。
その後、正式にクレパス家の子供になった俺は、その屋敷へと連れて行かれたわけだが、そこで待っていたのは、自分が如何に惨めで不幸な存在であるかという事実であった。
見たことがないくらい大きくて余りある財をふんだんに使った屋敷。
沢山の人間達が揃って頭を下げて、主を迎える姿。
世の中は……なんて不平等なんだろう。
ハッキリと分かれている上と下の生活に対し、壊れている心がどす黒い何かを次から次へと生み出していった。
更に────……。
「今日からこの家に住む、お前の義理の弟の<ルーカス>だ。────と言っても、同じ歳だから、学年としては同学年になるな。」
ライゼルから紹介されたのは、この家の正当な跡継ぎであり、俺の異母兄にあたるグレイ。
その姿を目にした瞬間、どす黒いモノは一気に外へと飛び出す。
ズルい……ズルい……ズルい……ズルい……!
なんで同じ男から生まれた子供なのに、コイツはこんなにも幸せな人生で、俺は不幸な人生を送らないといけない?
不幸など一度たりとも感じた事がない様な、間抜けな面で俺を見つめる兄。
その顔が吐き気が出る程憎いと思ったが、必死に堪える。
「よ……よろしく……。」
「…………。」
挨拶されても返事は返さず、ただ大人しく下を向いた。
この時少しでも口を開けば、恨み妬みを吐き出してしまいそうだったから。
しかし、父とその妻であるプレーンは、チャンスとばかりに愛する子供であるグレイを褒め称え、愛情をこれでもかと見せつけてきた。
自分が欲しくて欲しくてずっと求めていた『モノ』。
それをコイツは、当然の様にアッサリと与えられてきたのか。
そう想うと、怒りと憎しみは増えて増えて……きっとそのうち、この世界全体を真っ黒に染めるだろうと漠然と思った。
真っ黒だ。
この世界は全部。
俺に一度も『愛』を与えてくれなかった母親も、気まぐれで手を出して俺を作った父親も、邪魔者扱いして冷遇してくる他の奴らも、そして────……幸せな世界でのうのうと生きている兄も。
全部、全部が憎い。
憎くて悪くて堪らない。
しかし、今ここでソレを表に出せば、母と同じく消されるかもしれない。
それは分かっていたから、必死にソレを心の奥底に隠した。
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