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8 『幸せ』をありがとう
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◇◇
「こ、ここがルーカスの部屋……?」
ランタンの光と月明かりだけが唯一の光……そんな暗い場所に、ルーカスの部屋、もとい小屋があった。
元々、馬の世話に使う道具が入っていたはずの小さな倉庫。
だいぶ古かったので、破棄したと思っていたのに、それがルーカスの部屋になっていた。
半分以上腐っている木の板の小屋は、風が吹くたびにギシギシと軋んで今にも崩れそう……。
苔がびっしり生えているのが、更に廃れ感を漂わせる。
「ル、ルーカス~……。いる~?ごめんくださ~い!」
ノックを────……しようとしたけど止めた。
それだけで壊れそうだったから!
とりあえず、錆びているから分かりにくいが、ドアの取っ手らしきモノを掴むとゆっくりとドアを開ける。
ギィィィ~……。
思わず震える程不気味なドアが開く音。
怖くて、ヒェッ!と悲鳴が上がりそうになったのだが、そんな恐怖は床に倒れているルーカスを見て吹き飛んだ。
「ル、ルーカス!!」
全身の血の気が引いて慌てて走り出すと、麦粥を横に置き、すぐにルーカスを抱き起こす。
「ルーカス!どうしたの?!具合、悪いの?!」
半泣きになりながら優しく揺すると、一応息はしているが、顔は真っ赤だし汗も大量に掻いているしで、普通ではない様子だ。
すぐに額に手を当てて見ると、熱を測らなくても分かる程の高熱だった。
「とりあえずベッドに……!」
直ぐ隣にベッドがある事から、もしかしてそこから落ちたのかもしれない。
頑張ってルーカスを抱えてそこに寝かし、直ぐに様子をうかがったが、意識は朦朧としているのか、その口からはまるで世界を呪う様な言葉が絶えず飛び出していた。
ルーカスの怒りと憎しみ。
それを知っても、僕にはルーカスの心を軽くしてあげる事はできないから胸が痛い。
ルーカスの目は常に外へ外へ。
自分を虐げ受け入れてくれない世界に対し怒りと憎しみを向けて、それを追い風にどんどんと先に行ってしまう。
その強さは僕が持っていないモノ。
僕はその強さも羨ましいと思った。
いいな。いいな。
そんなルーカスはきっと、この世界を『生きている人』だ。
だから沢山のモノとつながる事もできるし、繋がったモノを幸せにする実力だってある。
それが僕は羨ましい。
『嫉妬は人を憎み復讐を決意させる恐ろしいモノですから。』
不意に先ほど言われた言葉を思い出したが……不思議なことに、僕にはルーカスを憎む気持ちも復讐する気持ちもなくて、『あぁ、僕は人を憎む才能にも恵まれなかったのか……。』と漠然と思った。
無才もここまでいけば、才能でいいんじゃない?!
あんまりな神様に、頭の中で文句を言ったのは一瞬。
うめき声を上げたルーカスに意識を戻し、水をゆっくりと飲ませた。
「……ぅ……あ……っ……。」
「ルーカス、しっかりして。ルーカス……ルーカス……。」
汗を拭き、直ぐに解熱作用のある薬草を擦って飲ませてやったが、熱は下がらない。
もしかして……このまま『死』…………?
最悪な結末を考えると、今まで感じたことがない恐怖が湧き上がってきて、『嫌だ!』と心の底から思った。
「うぅぅ~……ルーカス……ルーカス……ルーカス……しっかりして~……。」
ペタペタとその顔や体に触れて、名前を呼ぶ。
気がつけば目からはポロポロと涙が溢れていて、ルーカスがいなくなる事を考えると、それは止まることなく勢いは増していった。
どうしてルーカスがいなくなる事が、そんなに怖いのか?
そこでやっと自分の中で、ルーカスは恩人であるだけではなく、いつの間にか大切な人になっていた事に気づいた。
どんなに憎まれたって嫌いだと言われたって、僕にとってはルーカスといた日々こそ『生きている』日々で、これこそが僕の『幸せ』。
両親からの愛情を受けた事も、誰からも繋がる事がなかった人生は、自分の心を理解する能力すら育ててくれなかった。
だから今まで、その事に気づかなかったのだ。
それを育ててくれたのは、初めて自分に向けられたルークの怒りと憎しみで……今、僕は初めて自分以外を大事だと想う気持ちを理解して失くす恐怖を感じている。
「ルーカス……死なないで……僕をまた一人にしないで……ルーカス……。」
自分を育てて『幸せ』を教えてくれた大事な人。
その人を助けるため、僕は震える手で必死に看病を続けた。
「こ、ここがルーカスの部屋……?」
ランタンの光と月明かりだけが唯一の光……そんな暗い場所に、ルーカスの部屋、もとい小屋があった。
元々、馬の世話に使う道具が入っていたはずの小さな倉庫。
だいぶ古かったので、破棄したと思っていたのに、それがルーカスの部屋になっていた。
半分以上腐っている木の板の小屋は、風が吹くたびにギシギシと軋んで今にも崩れそう……。
苔がびっしり生えているのが、更に廃れ感を漂わせる。
「ル、ルーカス~……。いる~?ごめんくださ~い!」
ノックを────……しようとしたけど止めた。
それだけで壊れそうだったから!
とりあえず、錆びているから分かりにくいが、ドアの取っ手らしきモノを掴むとゆっくりとドアを開ける。
ギィィィ~……。
思わず震える程不気味なドアが開く音。
怖くて、ヒェッ!と悲鳴が上がりそうになったのだが、そんな恐怖は床に倒れているルーカスを見て吹き飛んだ。
「ル、ルーカス!!」
全身の血の気が引いて慌てて走り出すと、麦粥を横に置き、すぐにルーカスを抱き起こす。
「ルーカス!どうしたの?!具合、悪いの?!」
半泣きになりながら優しく揺すると、一応息はしているが、顔は真っ赤だし汗も大量に掻いているしで、普通ではない様子だ。
すぐに額に手を当てて見ると、熱を測らなくても分かる程の高熱だった。
「とりあえずベッドに……!」
直ぐ隣にベッドがある事から、もしかしてそこから落ちたのかもしれない。
頑張ってルーカスを抱えてそこに寝かし、直ぐに様子をうかがったが、意識は朦朧としているのか、その口からはまるで世界を呪う様な言葉が絶えず飛び出していた。
ルーカスの怒りと憎しみ。
それを知っても、僕にはルーカスの心を軽くしてあげる事はできないから胸が痛い。
ルーカスの目は常に外へ外へ。
自分を虐げ受け入れてくれない世界に対し怒りと憎しみを向けて、それを追い風にどんどんと先に行ってしまう。
その強さは僕が持っていないモノ。
僕はその強さも羨ましいと思った。
いいな。いいな。
そんなルーカスはきっと、この世界を『生きている人』だ。
だから沢山のモノとつながる事もできるし、繋がったモノを幸せにする実力だってある。
それが僕は羨ましい。
『嫉妬は人を憎み復讐を決意させる恐ろしいモノですから。』
不意に先ほど言われた言葉を思い出したが……不思議なことに、僕にはルーカスを憎む気持ちも復讐する気持ちもなくて、『あぁ、僕は人を憎む才能にも恵まれなかったのか……。』と漠然と思った。
無才もここまでいけば、才能でいいんじゃない?!
あんまりな神様に、頭の中で文句を言ったのは一瞬。
うめき声を上げたルーカスに意識を戻し、水をゆっくりと飲ませた。
「……ぅ……あ……っ……。」
「ルーカス、しっかりして。ルーカス……ルーカス……。」
汗を拭き、直ぐに解熱作用のある薬草を擦って飲ませてやったが、熱は下がらない。
もしかして……このまま『死』…………?
最悪な結末を考えると、今まで感じたことがない恐怖が湧き上がってきて、『嫌だ!』と心の底から思った。
「うぅぅ~……ルーカス……ルーカス……ルーカス……しっかりして~……。」
ペタペタとその顔や体に触れて、名前を呼ぶ。
気がつけば目からはポロポロと涙が溢れていて、ルーカスがいなくなる事を考えると、それは止まることなく勢いは増していった。
どうしてルーカスがいなくなる事が、そんなに怖いのか?
そこでやっと自分の中で、ルーカスは恩人であるだけではなく、いつの間にか大切な人になっていた事に気づいた。
どんなに憎まれたって嫌いだと言われたって、僕にとってはルーカスといた日々こそ『生きている』日々で、これこそが僕の『幸せ』。
両親からの愛情を受けた事も、誰からも繋がる事がなかった人生は、自分の心を理解する能力すら育ててくれなかった。
だから今まで、その事に気づかなかったのだ。
それを育ててくれたのは、初めて自分に向けられたルークの怒りと憎しみで……今、僕は初めて自分以外を大事だと想う気持ちを理解して失くす恐怖を感じている。
「ルーカス……死なないで……僕をまた一人にしないで……ルーカス……。」
自分を育てて『幸せ』を教えてくれた大事な人。
その人を助けるため、僕は震える手で必死に看病を続けた。
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