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18 還る方法
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(ヒカリ)
ボンヤリとしたまま、モンスターが蔓延る森の中を歩く。
『世界に還る』
それを叶えてほしくて歩き回った。
しかし、こちらは何も持っていないし反撃するつもりもないというのに、弱いモンスター達は俺を見るなり逃げていく。
「……やっぱり誰も俺に何かを与えてくれる奴はいないのか。」
俺の体はとても強いから、きっと単純に高い所から落ちても自分で自分を貫いても、直ぐに連続で攻撃しないと死ねないと思われる。
それでも死ねるかは分からないが……。
「極限まで力を抑えて……。もう少し強いモンスターなら『還れる』かな……?」
そう考え、奥へ奥へ。
とりあえず、現在一番強い反応がある場所へと進んでいった。
すると運良くその強い反応の持ち主は逃げるつもりはない様で、俺はアッサリとその正体の元へと辿り着く。
《ブロロロロォォォッ!!》
コチラを睨みつけて威嚇する声をあげたのは、体長20mはある<マンモスベアーズ>……他の個体より強いユニークモンスターだ。
<マンモスベアーズ>
巨木の様な象の鼻と熊の外見が合わさった姿のモンスター。
鼻を使った一撃は凄まじく、山をも砕くと言われている。
そいつはそれなりに自分の実力に自信があるのか、俺を見ても逃げず……しかし攻撃するのも少々躊躇っている様子だった。
そもそも俺がユニークモンスターを討伐するため、何が一番大変かというと、コレで……。
俺の力を察知すると、大抵のモンスターは逃げ回ってしまうし、離れすぎると相手の力が弱すぎてその存在を感知するのに苦労する。
今回はあまり逃避能力に適してないモンスターだから簡単に見つけることができたが、感知や逃避に適したモンスターは見つけ出すのに本当に大変で、正直森ごと全て消してしまいたいと思ったことは一度や二度ではない。
……まぁ、結果的に消さなくて良かったか。
そう思いながらそいつの動きをボンヤリと待っていると、そいつはとりあえず様子見か、近くに転がっている岩を巨大な鼻で持ち上げ、それを俺に向かって投げつけてきた。
俺に向かって真っ直ぐに向かってくる巨大な岩。
そのスローモーションの様な動きを静かに見つめながら、俺は思った。
この程度では、勿論死ぬどころか怪我一つできないだろうが、まぁいい。
全ての攻撃を避けなければ、いつかは願いが叶うかもしれないから。
そう思って目を瞑った、その時────ドンっ!と感知できないほどの弱々しいモノに体を押され、体は岩の攻撃範囲内から外れる。
「────は?」
予想外の衝撃に俺が目を開けば、目の前には必死な形相をしたイシが…………。
そして────……イシはその直後、飛んできた岩に当たり、そのまま跳ねるボールの様に遠くへ飛んでいってしまった。
大きく弧を描くイシの身体。
ぶつかった瞬間に、その場に散った真っ赤な血……。
呆然としながら、俺は地に叩きつけられ転がっていくイシの身体をただ見つめる。
そしてその直線上にあった巨木に身体を叩きつけられやっとその動きは止まり、その後は全く動かなくなった。
「イ……イシ…………?」
囁く様に声を出したが、イシは答えない。
バクッ…………。
バクバクバクッ…………。
自分の心臓の音がうるさくてうるさくて仕方がない。
ヨロ……と足を動かすと、反撃してこない俺にイケると思ったらしいマンモスベアーズが飛びかかってきたが────。
「────邪魔。」
本気の一撃をそいつに食らわせると、その身体は花火の様にパンっ!と簡単に消え去り、更にその攻撃の余波で、後方に巨大な道ができていった。
ドドドドド────────!!!
そのせいで凄まじい破壊音が周囲に鳴り響いたが、それよりも自分の心臓の音がうるさくてうるさくて何も聞こえない。
俺はヨロヨロとイシの所へ歩いていき、そのまま動かないその身体を見下ろした。
ぐにゃりと変な方向に曲がった手足。
その身体は血だらけで、体中出血しているし頭や顔も血だらけだ。
しかも新たな血がどんどん流れている様で、イシの身体からドロッとした血が流れては下の土を汚す。
このまま────。
イシは死ぬ……?
「う……うぁ……??うう~……あ……あ……!!」
それを理解した俺は、生まれてこの方上げた事のないうめき声に近い声を上げながら、イシの顔に自分の顔を近づけ、「イシ。」「イシ。」と名前を呼び続けた。
すると、その騒ぎを聞きつけたらしいパーティーメンバーが駆け寄ってきて、イシの状態を見て息を飲む。
「な……なんてこと!!」
直ぐキュアが駆け寄り回復魔法をイシの身体に掛けると、血はピタリと止まったが、やはりイシはピクリとも動かない。
「ちょっ……ちょっとキュア!そのおじさん大丈夫なの?!」
「血だらけなんだぜ!!手足もぐにゃぐにゃ……っ。」
アイリーンとルーンは、慌ててキュアに向かって叫んだ。
その横で直ぐにメルクも胸元から回復薬を取り出し、びちゃびちゃとイシの身体にそれを掛ける。
「流石にこの状態では応急措置しかできません!イシさんは魔力が0ですので、回復魔法の効きが悪いのですよ。だから直ぐに王宮にある専用施設に運ばなくては……っ!」
「そんな……!ここからじゃかなりの距離よぉ?!とてもじゃないけど間に合わないわ!」
キュアの言葉にメルクが青ざめて言ったが…………俺は直ぐにイシを抱きかかえると、そのまま魔法で空間に大きな穴を開けた。
「「「「…………えっ……??」」」」
穴の先は王宮の中。
ココと王宮内の空間を繋ぎ、トンネルの様な物を作ったのだ。
女達は、その穴の先を見つめ、ポカンと口を大きく開ける。
そして穴の向こうで同じくポカン……と口を大きく開けている王と神官達の顔が見えたが、俺はその穴に飛び込み大声で怒鳴った。
「今直ぐイシを助けろっ!!!!────早くっ!!!」
ボンヤリとしたまま、モンスターが蔓延る森の中を歩く。
『世界に還る』
それを叶えてほしくて歩き回った。
しかし、こちらは何も持っていないし反撃するつもりもないというのに、弱いモンスター達は俺を見るなり逃げていく。
「……やっぱり誰も俺に何かを与えてくれる奴はいないのか。」
俺の体はとても強いから、きっと単純に高い所から落ちても自分で自分を貫いても、直ぐに連続で攻撃しないと死ねないと思われる。
それでも死ねるかは分からないが……。
「極限まで力を抑えて……。もう少し強いモンスターなら『還れる』かな……?」
そう考え、奥へ奥へ。
とりあえず、現在一番強い反応がある場所へと進んでいった。
すると運良くその強い反応の持ち主は逃げるつもりはない様で、俺はアッサリとその正体の元へと辿り着く。
《ブロロロロォォォッ!!》
コチラを睨みつけて威嚇する声をあげたのは、体長20mはある<マンモスベアーズ>……他の個体より強いユニークモンスターだ。
<マンモスベアーズ>
巨木の様な象の鼻と熊の外見が合わさった姿のモンスター。
鼻を使った一撃は凄まじく、山をも砕くと言われている。
そいつはそれなりに自分の実力に自信があるのか、俺を見ても逃げず……しかし攻撃するのも少々躊躇っている様子だった。
そもそも俺がユニークモンスターを討伐するため、何が一番大変かというと、コレで……。
俺の力を察知すると、大抵のモンスターは逃げ回ってしまうし、離れすぎると相手の力が弱すぎてその存在を感知するのに苦労する。
今回はあまり逃避能力に適してないモンスターだから簡単に見つけることができたが、感知や逃避に適したモンスターは見つけ出すのに本当に大変で、正直森ごと全て消してしまいたいと思ったことは一度や二度ではない。
……まぁ、結果的に消さなくて良かったか。
そう思いながらそいつの動きをボンヤリと待っていると、そいつはとりあえず様子見か、近くに転がっている岩を巨大な鼻で持ち上げ、それを俺に向かって投げつけてきた。
俺に向かって真っ直ぐに向かってくる巨大な岩。
そのスローモーションの様な動きを静かに見つめながら、俺は思った。
この程度では、勿論死ぬどころか怪我一つできないだろうが、まぁいい。
全ての攻撃を避けなければ、いつかは願いが叶うかもしれないから。
そう思って目を瞑った、その時────ドンっ!と感知できないほどの弱々しいモノに体を押され、体は岩の攻撃範囲内から外れる。
「────は?」
予想外の衝撃に俺が目を開けば、目の前には必死な形相をしたイシが…………。
そして────……イシはその直後、飛んできた岩に当たり、そのまま跳ねるボールの様に遠くへ飛んでいってしまった。
大きく弧を描くイシの身体。
ぶつかった瞬間に、その場に散った真っ赤な血……。
呆然としながら、俺は地に叩きつけられ転がっていくイシの身体をただ見つめる。
そしてその直線上にあった巨木に身体を叩きつけられやっとその動きは止まり、その後は全く動かなくなった。
「イ……イシ…………?」
囁く様に声を出したが、イシは答えない。
バクッ…………。
バクバクバクッ…………。
自分の心臓の音がうるさくてうるさくて仕方がない。
ヨロ……と足を動かすと、反撃してこない俺にイケると思ったらしいマンモスベアーズが飛びかかってきたが────。
「────邪魔。」
本気の一撃をそいつに食らわせると、その身体は花火の様にパンっ!と簡単に消え去り、更にその攻撃の余波で、後方に巨大な道ができていった。
ドドドドド────────!!!
そのせいで凄まじい破壊音が周囲に鳴り響いたが、それよりも自分の心臓の音がうるさくてうるさくて何も聞こえない。
俺はヨロヨロとイシの所へ歩いていき、そのまま動かないその身体を見下ろした。
ぐにゃりと変な方向に曲がった手足。
その身体は血だらけで、体中出血しているし頭や顔も血だらけだ。
しかも新たな血がどんどん流れている様で、イシの身体からドロッとした血が流れては下の土を汚す。
このまま────。
イシは死ぬ……?
「う……うぁ……??うう~……あ……あ……!!」
それを理解した俺は、生まれてこの方上げた事のないうめき声に近い声を上げながら、イシの顔に自分の顔を近づけ、「イシ。」「イシ。」と名前を呼び続けた。
すると、その騒ぎを聞きつけたらしいパーティーメンバーが駆け寄ってきて、イシの状態を見て息を飲む。
「な……なんてこと!!」
直ぐキュアが駆け寄り回復魔法をイシの身体に掛けると、血はピタリと止まったが、やはりイシはピクリとも動かない。
「ちょっ……ちょっとキュア!そのおじさん大丈夫なの?!」
「血だらけなんだぜ!!手足もぐにゃぐにゃ……っ。」
アイリーンとルーンは、慌ててキュアに向かって叫んだ。
その横で直ぐにメルクも胸元から回復薬を取り出し、びちゃびちゃとイシの身体にそれを掛ける。
「流石にこの状態では応急措置しかできません!イシさんは魔力が0ですので、回復魔法の効きが悪いのですよ。だから直ぐに王宮にある専用施設に運ばなくては……っ!」
「そんな……!ここからじゃかなりの距離よぉ?!とてもじゃないけど間に合わないわ!」
キュアの言葉にメルクが青ざめて言ったが…………俺は直ぐにイシを抱きかかえると、そのまま魔法で空間に大きな穴を開けた。
「「「「…………えっ……??」」」」
穴の先は王宮の中。
ココと王宮内の空間を繋ぎ、トンネルの様な物を作ったのだ。
女達は、その穴の先を見つめ、ポカンと口を大きく開ける。
そして穴の向こうで同じくポカン……と口を大きく開けている王と神官達の顔が見えたが、俺はその穴に飛び込み大声で怒鳴った。
「今直ぐイシを助けろっ!!!!────早くっ!!!」
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