44 / 105
44
しおりを挟む
お茶を運んできた従業員が扉を閉めるのを確認してから、この事業の取りまとめを任されている男性が口を開きました。
それはどこか落ち着きがなく、心配そうな口調で……
建物の奥で個室、部屋の外や周りには味方である従業員や家の使用人しかいませんが……念のため、とかなり声量を落としています。
「しかし、よろしいのですか奥様。ここの開業資金も運営のための金銭も……すべてあの女の持参金や、その実家から送られてきた支援から出しているのでしょう」
今この部屋には男性、夫人、そして家の使用人が一人の、全員でも三人しかいませんが……扉の辺りへ視線を走らせながら心配そうに伝える男性は、更に言葉を続けます。
「持参金を基礎にして得た金銭は、それらも含めて本人に戻されると聞きましたが……」
この男は商会でやり手だというものを引っ張ってきた人材です。
商売のノウハウは知っていても、身分高きものの慣習などには馴染みがないと見えて……
ひそやかに小声でそれを告げられ、夫人の笑みがまた悪どく歪みました。
「そうさ、持参金を元手にして得た利益っていうのはねぇ。利益ごと加算されて持ち主に返されるっていうんだよ」
しかしその歪んだ表情は、明らかに企みの色を持っていて……
「で、では……」
慌てたように言いつのる男性に、夫人は落ち着き払って茶器へと手を伸ばしました。
考えるところがあると見えて、勝ち誇ったように鼻を鳴らします。
「ふん、金の出どころなんて分かるわけがないよ。金貨に名前がついてるわけじゃないだろう」
それはどこか落ち着きがなく、心配そうな口調で……
建物の奥で個室、部屋の外や周りには味方である従業員や家の使用人しかいませんが……念のため、とかなり声量を落としています。
「しかし、よろしいのですか奥様。ここの開業資金も運営のための金銭も……すべてあの女の持参金や、その実家から送られてきた支援から出しているのでしょう」
今この部屋には男性、夫人、そして家の使用人が一人の、全員でも三人しかいませんが……扉の辺りへ視線を走らせながら心配そうに伝える男性は、更に言葉を続けます。
「持参金を基礎にして得た金銭は、それらも含めて本人に戻されると聞きましたが……」
この男は商会でやり手だというものを引っ張ってきた人材です。
商売のノウハウは知っていても、身分高きものの慣習などには馴染みがないと見えて……
ひそやかに小声でそれを告げられ、夫人の笑みがまた悪どく歪みました。
「そうさ、持参金を元手にして得た利益っていうのはねぇ。利益ごと加算されて持ち主に返されるっていうんだよ」
しかしその歪んだ表情は、明らかに企みの色を持っていて……
「で、では……」
慌てたように言いつのる男性に、夫人は落ち着き払って茶器へと手を伸ばしました。
考えるところがあると見えて、勝ち誇ったように鼻を鳴らします。
「ふん、金の出どころなんて分かるわけがないよ。金貨に名前がついてるわけじゃないだろう」
78
あなたにおすすめの小説
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。
ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。
婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~
ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された
「理由はどういったことなのでしょうか?」
「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」
悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる
それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。
腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。
正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。
水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。
王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。
しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。
ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。
今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。
ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。
焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。
それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。
※小説になろうでも投稿しています。
白い結婚をめぐる二年の攻防
藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」
「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」
「え、いやその」
父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。
だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。
妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。
※ なろうにも投稿しています。
わたしがお屋敷を去った結果
柚木ゆず
恋愛
両親、妹、婚約者、使用人。ロドレル子爵令嬢カプシーヌは周囲の人々から理不尽に疎まれ酷い扱いを受け続けており、これ以上はこの場所で生きていけないと感じ人知れずお屋敷を去りました。
――カプシーヌさえいなくなれば、何もかもうまく行く――。
――カプシーヌがいなくなったおかげで、嬉しいことが起きるようになった――。
関係者たちは大喜びしていましたが、誰もまだ知りません。今まで幸せな日常を過ごせていたのはカプシーヌのおかげで、そんな彼女が居なくなったことで自分達の人生は間もなく180度変わってしまうことを。
17日本編完結。4月1日より、それぞれのその後を描く番外編の投稿をさせていただきます。
平民とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の王と結婚しました
ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・ベルフォード、これまでの婚約は白紙に戻す」
その言葉を聞いた瞬間、私はようやく――心のどこかで予感していた結末に、静かに息を吐いた。
王太子アルベルト殿下。金糸の髪に、これ見よがしな笑み。彼の隣には、私が知っている顔がある。
――侯爵令嬢、ミレーユ・カスタニア。
学園で何かと殿下に寄り添い、私を「高慢な婚約者」と陰で嘲っていた令嬢だ。
「殿下、どういうことでしょう?」
私の声は驚くほど落ち着いていた。
「わたくしは、あなたの婚約者としてこれまで――」
平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました
Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。
伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。
理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。
これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる