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第1章 夜会
(3)謝罪はできません
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わたしへ向けた言葉の後半は他の貴族たちにも知らしめるためなのか周囲を見渡しながら声を張り上げての宣言だった。
「それは殿下の好きにすればよろしいかと思いますが、一点だけ申し上げますと殿下とわたしの婚約は十日ほど前すでに解消されております」
「どういうことだ」
「国王陛下や貴族議会議長コンラート様からはお聞きではありませんでしたか……?」
まさかそんなことはないだろうと思いつつたずねる。聞いていてこの騒ぎを起こしたにしても、聞いてないにしても問題だけれど。
「やはり、別室に移りまして話をさせていただきたく思うのですが」
発表されないままだった婚約の話を今ここでされるのも問題がある上に、そのことをあまり公にできない事情もある。
この夜会が隣国の皇太子一行を歓迎し、国交回復を祝う式典の一環ともあって多くの貴族が集まっていた。
そもそもなら、こんな話は隣国の皇太子を招く前にするべきだったし、それができなかったのなら夜会のあとにするべきなのだ。
けれどヘルムート殿下は引かないだろう。それなら別室でコンラート様も招いて話をするのが妥当と思われた。
本来ならコンラート様でなく宰相である父がその立場なのだろうが、ヘルムート殿下はわたしが有利に事を運ぼうとしていると受け取りそうなので、ここはコンラート様が適当だろう。
「別室に移るにしても、まずはお前がマヌエラへの謝罪をするのが先だ」
「身に覚えのないことを謝罪することはできません」
「なっ……!!」
謝罪をきっぱりと断る。
ヘルムート殿下は言葉も出ないほど怒り心頭のようだが、わたしはマヌエラ様とは初対面でその存在すらも知らなかったので虐めようもない。
謝罪など断じてできないことだった。
「そもそもですが、わたしはマヌエラ様とは面識がありません。失礼ながらお名前も存じませんでした」
「そんなはずないだろう。父親が男爵ながらも薬草に関する論文を認められ、試験にも合格し学院に編入したのだぞ」
この国の王立学院は学力試験も難関ながら、入学前に何かしらを研究してその論文も提出しなければならない。
編入となればその難易度は更に上がる。学院内でも話題にもなるだろう。下位貴族ながら成し遂げたのなら宮廷内でも噂くらいにはなるかもしれない。
「それは素晴らしい方でいらっしゃるのですね。それで、その編入とはいつ頃のことでしょう」
「昨年の秋だ。そんなことも知らないとは、やはりおまえは王妃に相応しくない」
なんとかため息を堪えた。
ヘルムート殿下と結婚したとて王太子妃、そして王妃になれるかは五分五分どころか、それ未満だ。
さらに周囲から期待されてはいたものの、別にわたしがそうなりたかったわけでもない。
「それは殿下の好きにすればよろしいかと思いますが、一点だけ申し上げますと殿下とわたしの婚約は十日ほど前すでに解消されております」
「どういうことだ」
「国王陛下や貴族議会議長コンラート様からはお聞きではありませんでしたか……?」
まさかそんなことはないだろうと思いつつたずねる。聞いていてこの騒ぎを起こしたにしても、聞いてないにしても問題だけれど。
「やはり、別室に移りまして話をさせていただきたく思うのですが」
発表されないままだった婚約の話を今ここでされるのも問題がある上に、そのことをあまり公にできない事情もある。
この夜会が隣国の皇太子一行を歓迎し、国交回復を祝う式典の一環ともあって多くの貴族が集まっていた。
そもそもなら、こんな話は隣国の皇太子を招く前にするべきだったし、それができなかったのなら夜会のあとにするべきなのだ。
けれどヘルムート殿下は引かないだろう。それなら別室でコンラート様も招いて話をするのが妥当と思われた。
本来ならコンラート様でなく宰相である父がその立場なのだろうが、ヘルムート殿下はわたしが有利に事を運ぼうとしていると受け取りそうなので、ここはコンラート様が適当だろう。
「別室に移るにしても、まずはお前がマヌエラへの謝罪をするのが先だ」
「身に覚えのないことを謝罪することはできません」
「なっ……!!」
謝罪をきっぱりと断る。
ヘルムート殿下は言葉も出ないほど怒り心頭のようだが、わたしはマヌエラ様とは初対面でその存在すらも知らなかったので虐めようもない。
謝罪など断じてできないことだった。
「そもそもですが、わたしはマヌエラ様とは面識がありません。失礼ながらお名前も存じませんでした」
「そんなはずないだろう。父親が男爵ながらも薬草に関する論文を認められ、試験にも合格し学院に編入したのだぞ」
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「それは素晴らしい方でいらっしゃるのですね。それで、その編入とはいつ頃のことでしょう」
「昨年の秋だ。そんなことも知らないとは、やはりおまえは王妃に相応しくない」
なんとかため息を堪えた。
ヘルムート殿下と結婚したとて王太子妃、そして王妃になれるかは五分五分どころか、それ未満だ。
さらに周囲から期待されてはいたものの、別にわたしがそうなりたかったわけでもない。
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