婚約破棄ですか、すでに解消されたはずですが

ふじよし

文字の大きさ
2 / 21
第1章 夜会

(2)とても自信がお有りですのね

しおりを挟む
「本当に……怖かったんですっ。パトリツィア様は……その、何人も他の女生徒を引き連れて、教室にまできて……わたしっ……」


 涙をぽろぽろと溢しながら必死に言葉にするマヌエラさんには悪いけれど、本当に何がなんだか分からない。
 身に覚えも全くない。あるはずもない。なんせ初対面だ。


「お前は婚約者の立場を失うのを恐れたのだろう。王太子妃、ひいては王妃の座を奪われ、何よりも俺自身を奪われることになるのだからな」


 殿下もどうしてそんなにも自信がお有りでいらっしゃるのか。

 第一王子ヘルムート殿下の下にはあと二人の弟がいらっしゃる。第一王子ヘルムート殿下は王妃のお子だが、正直なところ色々と難ありだ。


 第二王子、第三王子は側妃のお子で、優秀な王子たちである。

 第二王子のヨーゼフ殿下はヘルムート殿下の五歳年下で十七歳。
 剣を振るうことがお好きで騎士団に入っており、王位に興味はないようで王位継承権を放棄されたい旨を表明されている。

 そして十六歳の第三王子フェリクス殿下は武の心得もあり、何よりも勉学に秀でていて人心掌握もヘルムート殿下に優る。


 さらに側妃様のご実家は侯爵であり、王妃陛下のご実家はもとは子爵。もとは側妃様の方が現国王の婚約者だった。

 けれど現王妃陛下は現国王陛下の寵愛を受け、その子爵の本家にあたる伯爵に養子になったという事情がある。
 本来なら今の側妃様が王妃となり現王妃陛下が側妃となるはずだったが、当時王太子だった国王陛下は側妃はとらないとおっしゃったのだ。

 結局、ヘルムート殿下の誕生後の五年間、王妃陛下のご懐妊がなく側妃様が嫁がれた。

 それゆえに、貴族や平民問わず王妃陛下よりも側妃様の方が人気がある。
 王位継承についても宮廷内どころか国内全体で第三王子を王太子に推す声も大きい。


 ラインマイヤー家は先代国王の次男、つまりは王弟である父が賜った公爵位を持つ家だ。そのラインマイヤー公爵は宰相である。

 その娘――現状、貴族の令嬢で最も身分が高く、ヘルムート殿下と同い年で従妹のわたし――が第一王子に嫁ぐことになるだろうと目されていた。

 そんなわけで、宮廷内ではかろうじて第一王子派と第三王子派で均衡を保っている状況なのだ。

 とは言っても、わたしの婚約は王家に王女が生まれなかったが故に、政略で他国へ嫁ぐ可能性もあるので、結婚適齢期ぎりぎりまで保留にされていた。
 だからヘルムート殿下の婚約者候補の筆頭とされていただけのこと。

 そして一ヶ月ほど前にようやく正式に婚約を交わした。それも正式には発表されないままだった。


「そうですね、ここまでお話されてしまっては……」


 殿下は勝ち誇った顔をしているが、殿下の思った通りには話は進まないだろう。


「確認なのですが、殿下はわたしとの婚約を破棄したいということで、よろしいでしょうか」

「当然だ。お前のような女とは結婚できないからな。私はこのマヌエラ・レーヴェンと結婚する!」
しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。 すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥ よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?

鶯埜 餡
恋愛
 バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。  今ですか?  めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?

【本編完結】真実の愛を見つけた? では、婚約を破棄させていただきます

ハリネズミ
恋愛
「王妃は国の母です。私情に流されず、民を導かねばなりません」 「決して感情を表に出してはいけません。常に冷静で、威厳を保つのです」  シャーロット公爵家の令嬢カトリーヌは、 王太子アイクの婚約者として、幼少期から厳しい王妃教育を受けてきた。 全ては幸せな未来と、民の為―――そう自分に言い聞かせて、縛られた生活にも耐えてきた。  しかし、ある夜、アイクの突然の要求で全てが崩壊する。彼は、平民出身のメイドマーサであるを正妃にしたいと言い放った。王太子の身勝手な要求にカトリーヌは絶句する。  アイクも、マーサも、カトリーヌですらまだ知らない。この婚約の破談が、後に国を揺るがすことも、王太子がこれからどんな悲惨な運命なを辿るのかも―――

婚約破棄されたから、とりあえず逃げた!

志位斗 茂家波
恋愛
「マテラ・ディア公爵令嬢!!この第1王子ヒース・カックの名において婚約破棄をここに宣言する!!」 私、マテラ・ディアはどうやら婚約破棄を言い渡されたようです。 見れば、王子の隣にいる方にいじめたとかで、冤罪なのに捕まえる気のようですが‥‥‥よし、とりあえず逃げますか。私、転生者でもありますのでこの際この知識も活かしますかね。 マイペースなマテラは国を見捨てて逃げた!! 思い付きであり、1日にまとめて5話だして終了です。テンプレのざまぁのような気もしますが、あっさりとした気持ちでどうぞ読んでみてください。 ちょっと書いてみたくなった婚約破棄物語である。 内容を進めることを重視。誤字指摘があれば報告してくださり次第修正いたします。どうぞ温かい目で見てください。(テンプレもあるけど、斜め上の事も入れてみたい)

【短編完結】婚約破棄ですか?了承致いたしますが確認です婚約者様

鏑木 うりこ
恋愛
 マリア・ライナス!お前との婚約を破棄して、私はこのリーリエ・カント男爵令嬢と婚約する事にする!  わたくしの婚約者であるサルトル様が声高に叫びました。  なるほど分かりましたが、状況を良く確認させていただきましょうか?   あとからやはりなかった、間違いだったなどと言われてはたまったものではございませんからね?  シーン書き2作目です(*'ω'*)楽しい。

【完】今流行りの婚約破棄に婚約者が乗っかり破棄してきました!

さこの
恋愛
 お前とは婚約を破棄する! と高々と宣言する婚約者様。そうですね。今流行っていますものね。愛のない結婚はしたくない! というやつでわすわね。  笑顔で受けようかしら  ……それとも泣いて縋る?   それではでは後者で! 彼は単純で自分に酔っているだけで流行りに乗っただけですもの。  婚約破棄も恐らく破棄する俺カッコいい! くらいの気持ちのはず! なのでか弱いフリしてこちらから振ってあげましょう! 全11話です。執筆済み ホットランキング入りありがとうございます 2021/09/07(* ᴗ ᴗ)

【完結】婚約破棄されたユニコーンの乙女は、神殿に向かいます。

秋月一花
恋愛
「イザベラ。君との婚約破棄を、ここに宣言する!」 「かしこまりました。わたくしは神殿へ向かいます」 「……え?」  あっさりと婚約破棄を認めたわたくしに、ディラン殿下は目を瞬かせた。 「ほ、本当に良いのか? 王妃になりたくないのか?」 「……何か誤解なさっているようですが……。ディラン殿下が王太子なのは、わたくしがユニコーンの乙女だからですわ」  そう言い残して、その場から去った。呆然とした表情を浮かべていたディラン殿下を見て、本当に気付いてなかったのかと呆れたけれど――……。おめでとうございます、ディラン殿下。あなたは明日から王太子ではありません。

処理中です...