王子は真実の愛に目覚めたそうです

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番外編 ジャンヌとルーカス

邪魔

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私とルーカスの間を邪魔するもので、一番厄介な存在は、中々私達を解放してくれない。私は歳のわりに愛について何も知らない。愛されることも、愛することも本当の意味で今が初めてのことだ。

義弟になるはずだった可愛らしい少年は今では私の婚約者で、じきに、夫になる。

ルーカスはいろんな表現で、私を大切にしてくれる。生まれてこの方、肉親以外の男性とは近くに寄ることすら禁じられてきた身としては、近くに顔があるだけで、恥ずかしさでどうしようもなくなる。

「お前の顔を見ていると、辛気臭くなる。」

いつだったか、前婚約者に言われた言葉だ。私は特別美しいわけでも可愛いわけでもない。それに、今は愛想を振り撒く時間でもない。だから、静かにしていたのに、そんな言葉で傷つけられてから、尚更彼の前では、表情を殺すようにしてしまった。

前婚約者が好きになったご令嬢は、コロコロと表情がよく変わり、彼にぶら下がり甘えた声を出していた。なるほど、ああいう方が、男性はお好きなのね、と思ったが、羞恥心が先に立ち、真似をすることはできなかった。

ルーカスは、私と婚約する、となった時、もしかして、押し付けられたのではないかと危惧していたが、彼によると、立候補したらしい。

「ジャンヌが好きなんだ。私と結婚してほしい。」

可愛い顔はそのままに、真剣な顔で言うものだから、少しドキッとしてしまった。彼はただ義理堅いだけで、私を憐れに思ってくれたのだと、わかっている。けれど、ルーカスはその後も私に甘い言葉を囁いたり、スキンシップを取ったりして、義理とは?と考えてしまうほど、私を気分よく癒してくれた。

ルーカスに、婚約者がいなかった理由は、は忘れられない人がいるからだ、と言う噂があった。

その相手と言うのは、私の知っている人かしら?その噂を聞いた時は、微笑ましく思って応援したかったのに、今ではすっかり絆されて、お願いだから彼を奪っていかないで、と思う。

彼がプレゼントしてくれた白い馬は綺麗な瞳をしていて、私をすぐに主人だと認めてくれた。ルーカスに甘やかされて、愛されていると、この人をどんどん手放せなくなることに愕然とする。

「ジャンヌ、キスしてもいい?」
断る理由は私にはない。

ルーカスは、少しの間、唇を重ねて、すぐに離そうとした。はしたない、とわかっていたけれど、彼の頬に手を伸ばして、唇を引き寄せる。

恋愛初心者の辿々しいキスの味は羞恥により全く覚えていないけれど、ルーカスが泣きそうな顔をして笑ったから、良いのだと思う。

「ジャンヌ、もう一回だけ、いい?」
見上げるとさっきまでの泣きそうな顔ではなくて、真剣な顔をしている。

返事をする間もなく、食べられる。夢中で抱きしめると、ルーカスが笑った。

「愛してる、ジャンヌ。私の側にいて。」
彼はやっぱり泣きそうで、可愛かった。
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