男爵令息と王子なら、どちらを選ぶ?

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サーシャ

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スレッジ侯爵家は、クララの母の兄が当主である貴族家としては善良な方に入る家である。クララとは従姉妹になるが、兄は先妻の子である為に、血の繋がりが濃いということもない。

サーシャのお披露目は何もなければ半年後を予定している。兄の予定では、その際に自身の立太子と、サーシャとの婚約を発表したいらしい、が。

「お兄様、半年以内に口説き落とさねばなりませんわよ。」

社交界に出て仕舞えばあの美しいサーシャに釣り書きはこれでもかと送られてくるだろう。

サーシャ本人は少し休ませてあげたいのは山々だが、兄の恋を応援したいのもあって、クララは迷っていた。

「ついでに、ではないけれど、半年で貴方の身分もしっかりさせないといけないわ。」

前の国では仮の身分ではあったが本来は公国の第二王子に当たるのだから、それを馬鹿正直に話してしまうと、クララが兄に叛意があるとされてしまうかもしれない。クララにとっては、王位継承権なんて、さっさと放棄してしまいたいものだけれど、貴族連中はそうではない。

彼には悪いけれど、男爵令息というのが一番しっくりはくるわね、とクララは、口には出さなかったが、エリアスを見てそう思っていた。

エリアスは一度、素顔を見せてしまうと、もう男爵令息と言われても疑問符を浮かべてしまうほど、素の自分に戻ってしまっている。

クララは成り行きをみつめると同時に一抹の不安を感じずにはいられなかったが、漸く会えた婚約者に心が浮き足だっていたのだろうか。それかこれ以上難しいことを考えたくなかったのか。

日々の生活を取り戻して行く過程で、うっかり考えるのを忘れてしまっていた。

思い出したのは、まさにそれが問題になったその時だったが、それはまた後の話。


表面上、エリアスと、クララは仲睦まじい友人のような関係に見えていた。

サーシャの教育はほぼ必要なく終わった。他国の公爵令嬢だった人なので、学ぶことと言えば、我が国独自の文化だけで、後は完璧だと、あの厳しい教師を唸らせたのだ。

「サーシャ、流石ね。」
「まあ、一応ね?早く慣れて落ち着きたいでしょ?今はまだ彼方も男爵令嬢につきっきりになっていても、いつアレクサンドラを追ってくるかもわからないんだし。」

サーシャの不安はごもっとも。不気味なのは、いまだにかの国が何の動きも見せていないこと。そんなことないだろうとは思うけれど、いまだにアレクサンドラがいない事実にさえ気が付いていないとかじゃないよね?

いくら何でも、と思ったのが間違いだった。彼らはこちらが思うより数千倍も愚かだった。
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