男爵令息と王子なら、どちらを選ぶ?

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スレッジ侯爵家の面々

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サーシャ・スレッジ侯爵令嬢になってからの人生は、まるで夢の中にいるようなそんな感じを彼女に齎した。

普通の貴族令嬢と同じような毎日に、そういえば元友人達はこのようなゆったりとした日々を送っていたことを思い出す。

いつか、仕事のしすぎで死ぬんじゃないの、と蔑んだ目で笑われてからは、会うこともなくなった元友人達。

アレクサンドラの時代は、本当に過酷な日々だった。留学生の案内として初めてクララに会った時に倒れなければ、そのままあの場所にいたのかと思うと、あの場で限界が来た自分の身体を褒めてあげたい。

クララはアレクサンドラの異常な毎日に気がついて、彼女の仕事を物理的に減らす提案をしてくれた。

最初からおかしな話だったのだ。王家に便利だからと使われていたとしても、公爵令嬢である自分が、末端の文官が担う作業まで関わる必要があるわけがない。

人の良いアレクサンドラの性格を利用して仕事をせずに高給を貰っていた人達は、全て解雇もしくは降格となった。

威張ることと贅沢することが仕事だと思っている王族には粛清することで威厳も保てるし、経費も削減できると言えば、いまだ宝石を買い足りない王妃は目の色を変えた。

「まあ!仕事もせずにお金だけ取ろうなんて見下げた根性ね。厚かましい。」

その最たる者がご自分だと思わないとは……知らないって恐ろしい。




侯爵家では、アレクサンドラが知らなかったこの国での文化の違いをさらりと説明された。たった、それだけ。クララの伯父夫婦は、優しそうな人達で、子供が男の子ばかりだから、女の子が嬉しいと言って、サーシャを甘やかせてくれた。

兄達も、初めて会った他人のサーシャをすぐに可愛がろうとする。

「サーシャが望むなら、別に嫁に行かずにずっとこの家にいていいんだからな。」

「そうだよ。わざわざ苦労しなくても私達と楽しく暮らそう。」

嫡男のデイビスお兄様はご結婚されており、次期侯爵として働いているのだが、奥様とその子供達も皆サーシャを迎え入れる気があるらしい。

奥様には、「まあ、なんて綺麗なお嬢さんなの!」と何故か妙に気に入られて、ドレスやら宝石やらを選ばれる、というよくわからない事態になっている。

「本当に、王子なんて、面倒なところに嫁がなくていいわ。ずっとここにいてほしいわ。」

と、皆に言われるのだが。

クララの兄が私を気に入っている、というあの話のこと?

サーシャはその話については、自身の能力に見合った地位のスカウトの話で色恋は関係ないのに、と不思議に思っていた。


「あの、皆様勘違いされてますよ。あの王子殿下が、私に恋愛感情なんて、持たれるわけがないじゃないですか。」


あははは、と笑うと、辺りが一瞬静かになったあと、三番目のお兄様が笑い出し、「そうだな、サーシャにはまだ早い話だったな。」と、肩をバンバン叩かれた。

女性陣は少し気まずそうに、「ああ、そこからなのね。」と呟いている。

クララがこの場にいれば、サーシャがわからない部分を教えてもらえるのだが。

サーシャは諦めて目の前に出された大量の菓子を食べ始めた。
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