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呑気な人達②
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アレクサンドラの元婚約者グラント王子殿下は、婚約者を蹴落としてまで望んだ男爵令嬢マリナに、振られそうでハラハラしていた。マリナは元々自分の婚約者が苦手だった筈なのに、今になって「彼にも迷惑をかけて申し訳ないわ。」とか言い始めている。捌ききれない書類も、アレクサンドラは何もしないで王宮にすら来ない日が続いている。レニエ公爵を呼んでアレクサンドラに手伝いをさせるように口添えしてもらうつもりが、公爵すら、王宮に来なくなってしまった。
書類の中には、陛下や王妃に割り振られるものも入っていて、それらはアレクサンドラが一手に引き受けていたものだと言っていた。
働かないで、給与だけ貰っていた役立たずがいなくなり、新たに仕事ができる人間が入ったそうだが、そいつらは相手がグラントだろうが、陛下だろうが、王妃だろうが、あまり阿ることはしないで、細かいことばかりを指摘してくる。
アレクサンドラも、何かをするたびに、いちいちこちらに伺いを立てるから時間がかかって仕方なかった。
グラントはマリナを縛ろうとしている男爵令息に直接話をしに行こうかと考えたが、それでマリナに嫌われることは避けたいと、我慢することになった。
こんなに気になることが多くては、仕事にならない。今まで面倒な事は全て他に回していたのだ。適当な文官を呼びつけると、書類をアレクサンドラに回すように告げる。
「は?アレクサンドラ様ですか?何故?」
グラントは呆れた。何故も何もこの書類の担当者はアレクサンドラだ。名前が書いてあるだろう。
「ですが、こちらの欄は、殿下の婚約者の署名欄です。アレクサンドラ様がそのお立場にいらっしゃらない限り、何の効力も発揮されませんが。」
言われてよくよく見てみると、元は王子の仕事だったのを、彼女の裁量でできるようにわざわざ変えたのだった。
それも彼女が婚約者である間だけ、という文言がついている。ならば今王子の婚約者がいないから、必然的に己がこの仕事をするしかない。
「ならまた変えれば良いだろう。アレクサンドラを呼べ。」
「できかねます。」
「何故だ?さっきから文句ばかりいって辞めさせられたいのか。」
見たところ、田舎貴族の三男とかだろうと、脅してみると、「わかりました。なら辞めます。」と去っていってしまった。
生意気な態度にキレていると、書類の中からレニエ公爵家の離縁通知書が出てきた。アレクサンドラと婚約破棄をしたその日に、レニエ公爵家とアレクサンドラは離縁していたようで、彼女は既に公爵令嬢ではなかった。
「何だこれは。」
届けではなくて、通知書と言うからには、手続きは既に済んでいる。レニエ公爵にアレクサンドラの居場所を問うと、「王都にはいないから領地に帰っているようです。」と返ってきた。
「アレクサンドラは逃げたかもしれない。」
レニエ公爵はそういわれてもまだ現状を把握できていなかったようだが、離縁通知の話をしたら飛んできた。
問題はグラントも公爵も、彼女がどこに行き誰と一緒だったか、さっぱり見当もつかないところだ。
昔から大変なことは何もかも、アレクサンドラのせいにしてきた二人は、今回も彼女のせいにした。
書類の中には、陛下や王妃に割り振られるものも入っていて、それらはアレクサンドラが一手に引き受けていたものだと言っていた。
働かないで、給与だけ貰っていた役立たずがいなくなり、新たに仕事ができる人間が入ったそうだが、そいつらは相手がグラントだろうが、陛下だろうが、王妃だろうが、あまり阿ることはしないで、細かいことばかりを指摘してくる。
アレクサンドラも、何かをするたびに、いちいちこちらに伺いを立てるから時間がかかって仕方なかった。
グラントはマリナを縛ろうとしている男爵令息に直接話をしに行こうかと考えたが、それでマリナに嫌われることは避けたいと、我慢することになった。
こんなに気になることが多くては、仕事にならない。今まで面倒な事は全て他に回していたのだ。適当な文官を呼びつけると、書類をアレクサンドラに回すように告げる。
「は?アレクサンドラ様ですか?何故?」
グラントは呆れた。何故も何もこの書類の担当者はアレクサンドラだ。名前が書いてあるだろう。
「ですが、こちらの欄は、殿下の婚約者の署名欄です。アレクサンドラ様がそのお立場にいらっしゃらない限り、何の効力も発揮されませんが。」
言われてよくよく見てみると、元は王子の仕事だったのを、彼女の裁量でできるようにわざわざ変えたのだった。
それも彼女が婚約者である間だけ、という文言がついている。ならば今王子の婚約者がいないから、必然的に己がこの仕事をするしかない。
「ならまた変えれば良いだろう。アレクサンドラを呼べ。」
「できかねます。」
「何故だ?さっきから文句ばかりいって辞めさせられたいのか。」
見たところ、田舎貴族の三男とかだろうと、脅してみると、「わかりました。なら辞めます。」と去っていってしまった。
生意気な態度にキレていると、書類の中からレニエ公爵家の離縁通知書が出てきた。アレクサンドラと婚約破棄をしたその日に、レニエ公爵家とアレクサンドラは離縁していたようで、彼女は既に公爵令嬢ではなかった。
「何だこれは。」
届けではなくて、通知書と言うからには、手続きは既に済んでいる。レニエ公爵にアレクサンドラの居場所を問うと、「王都にはいないから領地に帰っているようです。」と返ってきた。
「アレクサンドラは逃げたかもしれない。」
レニエ公爵はそういわれてもまだ現状を把握できていなかったようだが、離縁通知の話をしたら飛んできた。
問題はグラントも公爵も、彼女がどこに行き誰と一緒だったか、さっぱり見当もつかないところだ。
昔から大変なことは何もかも、アレクサンドラのせいにしてきた二人は、今回も彼女のせいにした。
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